170 / 495
チャプター8:ポイズン・グラマー
スァルビア・タウン
しおりを挟む
アンポール、 クリフォール、 ヴィング
騎士ストライプ、 サイトウタダシ男爵はスァルビア男爵の見舞いの為に果物を買いに
領内の街にやって来たのだった。
「シケた街ですね」
アンポールが素直な感想を述べた。
所々手入れが行き届いていない、 街灯も朽ちている物が出始め
空きテナントもちらほらと見える、 そもそも観光地の筈なのに観光客向けの店が減っている。
「【口に出して言えない店】が無くなっとるなぁ
つまらん街になっとるなぁ」
サイトウタダシは日本とベネルクス王国のハーフである。
黒髪の大柄な男で粗暴な印象を受けるが目利きは確かである。
「空きテナントもメインストリートに多いし・・・何か変だぞ?
前に来た時と店構えも違う、 別の店になってから閉店した?
如何なってるんだ?」
ストライプは金髪の平凡な騎士である。
何をやらせても人並みで生家も男爵、 基本的にぐーたらして出世にも興味が無く
実家の仕送りを受けながら騎士をやっていた男で本来代官になれる人材では無いが
彼の同僚と上司の代官全員退職してしまった為、 済し崩し的に彼が代官になった。
「と言うかそもそもアンタ如何した?」
「如何したって何が?」
アンポールに尋ねる。
「さっきから敬語になっていたり変だぞ? 会議の時はタメ口※1 だったじゃないか」
※1:相手を対等として扱った話し方。
語源としてサイコロのゾロ目が変形してタメになった、 と言う学説が有る。
こんな事一々言うのも可笑しいが、 無理が有ると思う。
「そりゃあ会議の時はタメ口だろう、 敬語を使っていたら発言の機会を逃す
普段は上の階級の人には敬語使うさ」
「ちょっと意味が分からないな、 セルデン侯爵領でもそんな感じで会議してたのか?」
「セルデン侯爵領はシンプルだからな、 問題が起こっても代官で対応出来る」
「シンプル? 代官が有能なだけでは?」
「物理的に解決する」
「あぁ、 そう言う事ね・・・」
「ストライプ様、 お喋りも良いですが私は土地勘が無いので道案内に集中して頂いても?」
「それは失礼したクリフォール女史、 だがしかし、 随分と様変わりしている」
「あぁ、 全く持ってその通り、 別の街になっている
お気に入りの【口に出して言えない店】、 【口に出して言えない店】
【口に出して言えない店】、 【口に出して言えない店】、 【口に出して言えない店】
【口に出して言えない店】が無くなっているなぁ」
「サイトウタダシ殿、 貴方は妻帯者ではなかったのか?」
「妻帯者でも【口に出して言えない店】に通う事も有るだろうが
隠れて【口に出して言えない店】に行く事は不誠実だが
堂々と【口に出して言えない店】に行くのは寧ろ男らしいと思う」
「・・・・・」
ヴィングはメインストリートに【口に出して言えない店】が並んでいた事実に
若干引いていたが黙っていた、 先程の事態を思い返せば口数も減る。
「しかしながら【口に出して言えない店】が減ったと言う事は
観光名所としての魅力が激減したと言う事だな、 これでは税収も減る訳だ」
「そもそも閉店している店が多過ぎる、 一体何が有ったのやら・・・」
「・・・・・うん? ちょっと待ってくれ」
ヴィングは気が付いて口を開いた。
「如何した?」
「巡回の騎士が居ない」
「・・・・・本当だな、 少しくらいは出くわすと思ったが・・・」
「まさか騎士も閉店したんじゃなかろうな」
「そんな事態になったらこの領も終わりだな・・・
お、 その酒場には確かフルーツも置いていた、 見舞いの品には丁度良かろう」
「酒場にフルーツ? 合うのか? 酒とフルーツ」
「まぁ好き好きだからな」
そう言って酒場に入るアンポール達。
「いらっしゃい・・・・・何にします?」
覇気のない店主が受け答えをする。
「フルーツ盛り合わせをバスケットでくれ」
ストライプが注文をする。
「すみません、 フルーツ切らしていて・・・」
「無いのか、 ここは水場が近いし観光以外にもフルーツを売っていた筈だが・・・」
「・・・・・」
目を伏せる店主。
「何か有ったのか?」
「・・・お客さん、 貴族の方?」
「まぁ、 そうだが」
「最近スァルビア男爵が病で伏せられて執事の方が代理で政務を行っているのですが
その政務の一環でフルーツは領の外に売る事になったのです」
「領外へ? それってベルモンド伯爵領ではセーフなのか?」
「まぁ問題は無いだろうとは思うが、 態々領外に輸出する意味が分からんな
輸送コストもかかるだろうし」
「それですが輸送にかかる馬車代の滞納もしているみたいで・・・」
「何ィ? それは許せんなぁ」
サイトウタダシが眉を顰める。
「民に給料を支払えなくなるとは貴族の恥
これはその執事とやらを問い詰める必要が有るなぁ」
「執事だから貴族では無いのでは?」
「又聞きの又聞きですが執事は何処かの貴族の子息だったと聞いた事があります」
「ふぅむ、 何という恥知らずよ、 ん?」
外から大声が聞こえる。
「何だ?」
「行って見ますか」
騎士ストライプ、 サイトウタダシ男爵はスァルビア男爵の見舞いの為に果物を買いに
領内の街にやって来たのだった。
「シケた街ですね」
アンポールが素直な感想を述べた。
所々手入れが行き届いていない、 街灯も朽ちている物が出始め
空きテナントもちらほらと見える、 そもそも観光地の筈なのに観光客向けの店が減っている。
「【口に出して言えない店】が無くなっとるなぁ
つまらん街になっとるなぁ」
サイトウタダシは日本とベネルクス王国のハーフである。
黒髪の大柄な男で粗暴な印象を受けるが目利きは確かである。
「空きテナントもメインストリートに多いし・・・何か変だぞ?
前に来た時と店構えも違う、 別の店になってから閉店した?
如何なってるんだ?」
ストライプは金髪の平凡な騎士である。
何をやらせても人並みで生家も男爵、 基本的にぐーたらして出世にも興味が無く
実家の仕送りを受けながら騎士をやっていた男で本来代官になれる人材では無いが
彼の同僚と上司の代官全員退職してしまった為、 済し崩し的に彼が代官になった。
「と言うかそもそもアンタ如何した?」
「如何したって何が?」
アンポールに尋ねる。
「さっきから敬語になっていたり変だぞ? 会議の時はタメ口※1 だったじゃないか」
※1:相手を対等として扱った話し方。
語源としてサイコロのゾロ目が変形してタメになった、 と言う学説が有る。
こんな事一々言うのも可笑しいが、 無理が有ると思う。
「そりゃあ会議の時はタメ口だろう、 敬語を使っていたら発言の機会を逃す
普段は上の階級の人には敬語使うさ」
「ちょっと意味が分からないな、 セルデン侯爵領でもそんな感じで会議してたのか?」
「セルデン侯爵領はシンプルだからな、 問題が起こっても代官で対応出来る」
「シンプル? 代官が有能なだけでは?」
「物理的に解決する」
「あぁ、 そう言う事ね・・・」
「ストライプ様、 お喋りも良いですが私は土地勘が無いので道案内に集中して頂いても?」
「それは失礼したクリフォール女史、 だがしかし、 随分と様変わりしている」
「あぁ、 全く持ってその通り、 別の街になっている
お気に入りの【口に出して言えない店】、 【口に出して言えない店】
【口に出して言えない店】、 【口に出して言えない店】、 【口に出して言えない店】
【口に出して言えない店】が無くなっているなぁ」
「サイトウタダシ殿、 貴方は妻帯者ではなかったのか?」
「妻帯者でも【口に出して言えない店】に通う事も有るだろうが
隠れて【口に出して言えない店】に行く事は不誠実だが
堂々と【口に出して言えない店】に行くのは寧ろ男らしいと思う」
「・・・・・」
ヴィングはメインストリートに【口に出して言えない店】が並んでいた事実に
若干引いていたが黙っていた、 先程の事態を思い返せば口数も減る。
「しかしながら【口に出して言えない店】が減ったと言う事は
観光名所としての魅力が激減したと言う事だな、 これでは税収も減る訳だ」
「そもそも閉店している店が多過ぎる、 一体何が有ったのやら・・・」
「・・・・・うん? ちょっと待ってくれ」
ヴィングは気が付いて口を開いた。
「如何した?」
「巡回の騎士が居ない」
「・・・・・本当だな、 少しくらいは出くわすと思ったが・・・」
「まさか騎士も閉店したんじゃなかろうな」
「そんな事態になったらこの領も終わりだな・・・
お、 その酒場には確かフルーツも置いていた、 見舞いの品には丁度良かろう」
「酒場にフルーツ? 合うのか? 酒とフルーツ」
「まぁ好き好きだからな」
そう言って酒場に入るアンポール達。
「いらっしゃい・・・・・何にします?」
覇気のない店主が受け答えをする。
「フルーツ盛り合わせをバスケットでくれ」
ストライプが注文をする。
「すみません、 フルーツ切らしていて・・・」
「無いのか、 ここは水場が近いし観光以外にもフルーツを売っていた筈だが・・・」
「・・・・・」
目を伏せる店主。
「何か有ったのか?」
「・・・お客さん、 貴族の方?」
「まぁ、 そうだが」
「最近スァルビア男爵が病で伏せられて執事の方が代理で政務を行っているのですが
その政務の一環でフルーツは領の外に売る事になったのです」
「領外へ? それってベルモンド伯爵領ではセーフなのか?」
「まぁ問題は無いだろうとは思うが、 態々領外に輸出する意味が分からんな
輸送コストもかかるだろうし」
「それですが輸送にかかる馬車代の滞納もしているみたいで・・・」
「何ィ? それは許せんなぁ」
サイトウタダシが眉を顰める。
「民に給料を支払えなくなるとは貴族の恥
これはその執事とやらを問い詰める必要が有るなぁ」
「執事だから貴族では無いのでは?」
「又聞きの又聞きですが執事は何処かの貴族の子息だったと聞いた事があります」
「ふぅむ、 何という恥知らずよ、 ん?」
外から大声が聞こえる。
「何だ?」
「行って見ますか」
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる