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チャプター7:ファイブ・ZAMXaww・ストーリー
アルファ・ポリーヌ・ストーリー
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再誕歴7680年オーガスト11日。
ベネルクス王国ゴディバ公爵直轄領の裁判所にて一人の女が被告席に立たされた。
腕を後ろ手に縛られ後ろから二人の女性騎士に追い立てられながら
おぼつかない足取りであった。
女が着ているドレスは貴族から見ても高級な物でこの女の身分の高さを見て取れるだろう。
だがしかしドレスの状態は最悪である、 皺だらけでほつれも見られる
更には少し破れている状態である。
女自身も酷い有様で焦燥が見て取れる。
被告人も酷い有様だが傍聴席も酷い事になっている。
大勢の騎士達が最前列に並び今にも襲い掛かろうとする傍聴人達を制している。
まるでにょー※1 である。
※1:恐ろしく強い門番の事。
日本ではその強さを称え重要拠点の門にはにょーの象を立てる事が一般的である。
因みににょーが門番なのは恐ろしく強い床異という恐ろしく強い男と相まみえ
HACHIMANと言う神に助けられその恩返しに門番になったと言うのが定説である。
「裁判長及び陪審員の皆様が入場します、 一同御起立願います」
傍聴人達が一斉に立ち上がる。
そして入って来る裁判長と陪審員。
何故、 傍聴人達がここまで敬意を払うのか?
裁判長はゴディバ公爵。
三人の陪審員は門閥貴族のビター侯爵、 ホワイト侯爵、 ルビー侯爵。
ゴディバ公爵とその門閥で来ているのだ。
傍聴人は下位の貴族達、 敬意を払って当然である。
ここで少し話しておく必要が有るだろう。
ベネルクス王国には国王の下に五人の公爵が居る。
その公爵達はそれぞれ門閥貴族を選出し
更にその下にも門閥貴族達が選出した貴族が配下になっている。
各公爵が自分の門閥貴族を選出するに当たっての決まりは特に無い。
どの身分の貴族を何家選ぼうが自由である。
基本的には10家位を門閥貴族にするのが一般的であるが
ネーデル公爵の様に20家以上選ぶのも自由ではある。
その分、 部下の管理が大変になるがそこは自己責任である。
さて門閥貴族は大体10家が一般的とは言ったが
どの身分から選出するのかは基本的に拘る者は居ないだろう。
マーナガルム男爵やスクイド男爵の様に下位貴族の男爵家でも集金力が凄まじい者が居たり
ルン子爵やベルモンド伯爵の様に他国へのパイプを持って居る者も居る。
高位貴族だからと言って優秀な訳でもないのだ、 基本的には各公爵は皆拘りなく選出をする。
しかしながらゴディバ公爵は別。
ゴディバ公爵門閥貴族は他の公爵門閥貴族と比較しても少ない4家。
内訳は侯爵家3家, 準侯爵家1家と非常に家柄に拘っている。
以前は5家だったがそれでも少ない。
ゴディバ公爵は貴族の上下関係にとても厳しい事で知られ
ゴディバ公爵門閥貴族達も貴族の上下関係にとても厳しいのだ。
とは言え理不尽な事では怒らない、 それは貴族的では無いからである。
貴族としての誇りを持って驕らずに民を導くのがゴディバ公爵のスタンスである。
「さて、 ポリーヌ男爵家のアルファよ、 何か反論はあるか?」
ゴディバ公爵が裁判長の席から被告席の女を絶対零度の視線で見下ろす。
「ッ!! 私はジャンドゥーヤ準侯爵の妻のアルファです!!」
被告人のアルファが叫んだ。
「お前とジャンドゥーヤ準侯爵の婚姻は無効となった」
「なっ・・・!! 何故!?」
「君がジャンドゥーヤ準侯爵を誑かし、 男爵の分際で妻となったからだ
かわいそうなジャンドゥーヤ準侯爵は君との婚姻無効に対して拒否し続けたから
一時措置入院を取り、 前ジャンドゥーヤ準侯爵、 つまりジャンドゥーヤ準侯爵の父君に
骨を折って貰ったんだ」
「そんな!! 何故ですかお義父様!!」
アルファが傍聴席に叫ぶも騎士達がアルファを足を蹴り跪かせる。
「ジャンドゥーヤ準侯爵との婚姻は無効だ、 君の義父ではない
言葉は慎め」
「~~~~~っ!! 何故ですか!? 身分違いがそんなに悪いのですか!?」
「今回の件に関しては身分違いの結婚が産んだ悲劇
門閥貴族から降りる事を条件にジャンドゥーヤ準侯爵の結婚を許したが
それが不味かった、 男爵家なんて虫けらの如き下賤な貴族未満を
貴族と婚姻させたのは今考えると正気では無かった」
「な・・・何ですって!?」
騎士達がアルファを地面に押し当てる。
「私に対する言葉遣いではない、 続けよう
今回、 君を逮捕したのは君がジャンドゥーヤ準侯爵の娘に対して
過剰な教育を強要しジャンドゥーヤ準侯爵の娘を疲労骨折させたからだ」
「・・・私の娘が疲労骨折?」
騎士達がアルファを起き上がらせて地面に押し当てる。
「だから婚姻無効だからジャンドゥーヤ準侯爵の娘だ
君の、 下賤な男爵の娘では無い」
「~~~~~ッ!! 私が教育した娘です!!」
「何を言うか、 ジャンドゥーヤ準侯爵の資産を使い
ジャンドゥーヤ準侯爵の伝手で雇った家庭教師が教育したのだ
君は過剰な教育をジャンドゥーヤ準侯爵の娘に課した」
「それは私の娘を完璧にする為です!!」
「嘘を吐け、 検察」
「はっ」
検察が書類を拡げて説明を始めた。
「被告アルファ・ポリーヌがジャンドゥーヤ準侯爵との間に作った娘は二人います
今回過剰な教育を課したのは上の娘です、 この娘に複数の家庭教師を付けて
寝る間も惜しんでの勉学、 更には社交ダンスのレッスンも行わせ
他にも武術まで習わせた結果、 疲労骨折と言う教育の形を取った虐待を行っていました」
「違う!! 私は娘を愛している!! 愛しているからこそ完璧な教育を施したのです!!」
「裁判長、 発言を許可願いたい」
陪審員の一人、 ホワイトが挙手をした。
「どうぞ」
「確かに今回の件は行きすぎですが家庭教師を増やすのは
成り上がりたい下位貴族も行うでしょう、 これを虐待とするのは下位貴族の勉学の機会を奪うのでは?」
「いえ、 ホワイト侯爵、 それは違います」
検察が否定した。
「被告アルファ・ポリーヌは被害女性に対して常日頃から
交流をしない育児放棄を行っていた事が明らかになっています」
「何と・・・」
「悍ましい・・・」
陪審員たちが眉を顰める。
「それは!! 甘やかさない為です!! 私との交流で勉強時間が減るでしょう!!」
「いえ、 全てデタラメです
被告アルファ・ポリーヌは被害者に対して深い嫉妬、 憎悪を持っていました」
ざわつく裁判所。
余りにも強い言葉に困惑している。
「何を言っているの!? 私は娘を愛していました!!」
「そうですか、 被告は被害者を愛していたと、 そう仰る?」
「そうよ!!」
「ではお尋ねしますが被害女性には妹が居ましたね?
ジャンドゥーヤ準侯爵の娘のもう一人」
「それが何!!」
「彼女には碌な教育をなさっていないですね? 家庭教師を付ける事すらしていない様子
そしてこの妹とは積極的に交流を持っている、 愛している筈の姉とは違って甘やかしている」
「あの子はあまり頭が良くないのよ!! だから代わりに私は」
「いえ、 貴女の本音を代わりに言って差し上げましょう
恐らく貴方は被害者に対して『あぁこの娘は尊い血の娘だ』『自分とは違って何でも出来る』
『賢く美しい』『妬ましい』『憎い』と思っていたのでしょう
被害者はジャンドゥーヤ準侯爵の血を濃く受け継いだ賢く強い女性だ」
「違う!! 私は二人を愛していた!!」
「そして妹の方は『この娘は間違いなく私の子だ』『愚かで見てくれだけは良い』
『愚かで愛らしい』と劣っている自分と重ね合わせて愛しているのでしょう
妹の方は率直に言って評判がとても悪い
ジャンドゥーヤ準侯爵の息子に媚を売った男爵の娘から産まれた娘だ」
「無礼だ!!」
「無礼? 貴女はジャンドゥーヤ準侯爵に媚を売って気に入られた娼婦と変わらない女だ
誰もがそう思っている」
「そーだそーだ!!」
「悍ましい売女!!」
「ジャンドゥーヤ準侯爵の子に仇なした逆賊!!」
「恥知らず!!」
「黙れお前達!!」
傍聴席からのヤジを黙らせる一人の壮年の男性。
彼はジャンドゥーヤ準侯爵の父ココナッツ。
「裁判長!! ジャンドゥーヤ準侯爵の父として
ジャンドゥーヤ準侯爵の子の祖父としてこのアバズレに対して決闘を申し込みます!!」
「駄目だ、 これは決闘で解決してはならない、 この女は稀代の大犯罪者として裁かれる運命だ」
「わ、 私は娘を愛していますわ!!」
アルファは尚も叫ぶ。
「では被告人に質問します、 被害者の好きな色は?」
「・・・え?」
アルファは検察の言葉に戸惑った。
「被害者の好きな色は?」
「・・・・・黄色、 黄色よ!!」
「答えはオレンジです、 では好きな花は?」
「・・・・・が、 ガーベラよ」
「チューリップです、 好きな食べ物は?」
「・・・・・さっきから何なのよ!!」
「陪審員の皆さん、 これが答えですよ、 この女は愛していると言っておきながら
自分の子供の好きな物すら知らない、 知ろうとしない、 そういう女なのです
これで愛していると言えるのでしょうか? 以上です」
場は沈黙した。
「では被告アルファ・ポリーヌに対する判決を述べる
ジャンドゥーヤ準侯爵を誑かした姦淫罪、 ジャンドゥーヤ準侯爵の子を虐待した児童虐待罪
更に上位貴族の子女を過度の教育で疲労骨折をさせた反逆罪
よって火あぶりに処します、 さぁ直ぐにでも広場に行ってこの女を燃やしましょう」
「・・・べ、 弁護人、 そ、 そうよ!! 弁護人が居ないわ!!」
アルファは叫んだ。
「貴女の弁護なんて誰もしませんよ、 さぁ騎士達、 その女を連れて行って燃やしなさい」
「いや!! いやああああああああああああああああああああああああ!!!」
バァン!! と裁判所の扉が勢い良く開かれた。
「・・・ジャンドゥーヤ準侯爵?」
「あなた!!」
裁判所の扉から現れたのはジャンドゥーヤ準侯爵だった。
「な、 何でここに居るんだ? お前は謹慎の筈だぞ?」
ココナッツも困惑していた。
「妻を返してもらいに来ました」
ジャンドゥーヤ準侯爵は懐に隠していたハンドサイフォンを取り出し炎を噴出した。
「なっ!? 逃げろ諸君!! 騎士達はジャンドゥーヤ準侯爵を捕ば」
「大変です公爵閣下!! 裁判所の裏手から炎が!!」
伝令の報告に心底混乱したゴディバ公爵。
混乱に乗じジャンドゥーヤ準侯爵はアルファと共に裁判所を脱出した。
再誕歴7701年メイ3日。
ベネルクス王国首都国王直轄領ブリュッセルの 外側エリアの路地裏。
そこでボロを纏ったアルファが目を覚ました。
「あの日の夢・・・か・・・」
アルファはジャンドゥーヤ準侯爵と共に裁判所から脱出したが
追手を巻き添えにしてジャンドゥーヤ準侯爵は爆死。
アルファは一人何とかゴディバ公爵の権力圏から逃走し何とかブリュッセルまでやって来た。
ここでアルファは貴族としての美貌を活かして娼婦として娼館に勤めていたが先日解雇された。
もう既に200歳(現実で言う所の50歳)を過ぎたからだ、 既に雇ってくれる所はない。
「ひもじい・・・」
貴族としての生活をしていたアルファにとって娼婦として働いて得た金は
まさに端金であり、 彼女にとってのまともな生活をする為にはまるで足らなかった。
彼女には金が無かった。
「・・・・・」
目覚めたアルファは路地裏を彷徨った。
何か仕事は無いだろうか、 しかしながらそう都合の良い話が転がっている訳も・・・
「!?」
アルファは路地裏の壁に張ってあったポスターを見た。
「日給1万ユーロも夢じゃない・・・ですって!?」
アルファはポスターを見て驚愕した。
【日給1万ユーロも夢じゃない!! 楽に早く儲かる!!
人手募集中!! 応募条件は金に困っている事だけ!!】
「これは・・・応募するしかない!!」
アルファは応募先の事務所に走り出した。
ベネルクス王国ゴディバ公爵直轄領の裁判所にて一人の女が被告席に立たされた。
腕を後ろ手に縛られ後ろから二人の女性騎士に追い立てられながら
おぼつかない足取りであった。
女が着ているドレスは貴族から見ても高級な物でこの女の身分の高さを見て取れるだろう。
だがしかしドレスの状態は最悪である、 皺だらけでほつれも見られる
更には少し破れている状態である。
女自身も酷い有様で焦燥が見て取れる。
被告人も酷い有様だが傍聴席も酷い事になっている。
大勢の騎士達が最前列に並び今にも襲い掛かろうとする傍聴人達を制している。
まるでにょー※1 である。
※1:恐ろしく強い門番の事。
日本ではその強さを称え重要拠点の門にはにょーの象を立てる事が一般的である。
因みににょーが門番なのは恐ろしく強い床異という恐ろしく強い男と相まみえ
HACHIMANと言う神に助けられその恩返しに門番になったと言うのが定説である。
「裁判長及び陪審員の皆様が入場します、 一同御起立願います」
傍聴人達が一斉に立ち上がる。
そして入って来る裁判長と陪審員。
何故、 傍聴人達がここまで敬意を払うのか?
裁判長はゴディバ公爵。
三人の陪審員は門閥貴族のビター侯爵、 ホワイト侯爵、 ルビー侯爵。
ゴディバ公爵とその門閥で来ているのだ。
傍聴人は下位の貴族達、 敬意を払って当然である。
ここで少し話しておく必要が有るだろう。
ベネルクス王国には国王の下に五人の公爵が居る。
その公爵達はそれぞれ門閥貴族を選出し
更にその下にも門閥貴族達が選出した貴族が配下になっている。
各公爵が自分の門閥貴族を選出するに当たっての決まりは特に無い。
どの身分の貴族を何家選ぼうが自由である。
基本的には10家位を門閥貴族にするのが一般的であるが
ネーデル公爵の様に20家以上選ぶのも自由ではある。
その分、 部下の管理が大変になるがそこは自己責任である。
さて門閥貴族は大体10家が一般的とは言ったが
どの身分から選出するのかは基本的に拘る者は居ないだろう。
マーナガルム男爵やスクイド男爵の様に下位貴族の男爵家でも集金力が凄まじい者が居たり
ルン子爵やベルモンド伯爵の様に他国へのパイプを持って居る者も居る。
高位貴族だからと言って優秀な訳でもないのだ、 基本的には各公爵は皆拘りなく選出をする。
しかしながらゴディバ公爵は別。
ゴディバ公爵門閥貴族は他の公爵門閥貴族と比較しても少ない4家。
内訳は侯爵家3家, 準侯爵家1家と非常に家柄に拘っている。
以前は5家だったがそれでも少ない。
ゴディバ公爵は貴族の上下関係にとても厳しい事で知られ
ゴディバ公爵門閥貴族達も貴族の上下関係にとても厳しいのだ。
とは言え理不尽な事では怒らない、 それは貴族的では無いからである。
貴族としての誇りを持って驕らずに民を導くのがゴディバ公爵のスタンスである。
「さて、 ポリーヌ男爵家のアルファよ、 何か反論はあるか?」
ゴディバ公爵が裁判長の席から被告席の女を絶対零度の視線で見下ろす。
「ッ!! 私はジャンドゥーヤ準侯爵の妻のアルファです!!」
被告人のアルファが叫んだ。
「お前とジャンドゥーヤ準侯爵の婚姻は無効となった」
「なっ・・・!! 何故!?」
「君がジャンドゥーヤ準侯爵を誑かし、 男爵の分際で妻となったからだ
かわいそうなジャンドゥーヤ準侯爵は君との婚姻無効に対して拒否し続けたから
一時措置入院を取り、 前ジャンドゥーヤ準侯爵、 つまりジャンドゥーヤ準侯爵の父君に
骨を折って貰ったんだ」
「そんな!! 何故ですかお義父様!!」
アルファが傍聴席に叫ぶも騎士達がアルファを足を蹴り跪かせる。
「ジャンドゥーヤ準侯爵との婚姻は無効だ、 君の義父ではない
言葉は慎め」
「~~~~~っ!! 何故ですか!? 身分違いがそんなに悪いのですか!?」
「今回の件に関しては身分違いの結婚が産んだ悲劇
門閥貴族から降りる事を条件にジャンドゥーヤ準侯爵の結婚を許したが
それが不味かった、 男爵家なんて虫けらの如き下賤な貴族未満を
貴族と婚姻させたのは今考えると正気では無かった」
「な・・・何ですって!?」
騎士達がアルファを地面に押し当てる。
「私に対する言葉遣いではない、 続けよう
今回、 君を逮捕したのは君がジャンドゥーヤ準侯爵の娘に対して
過剰な教育を強要しジャンドゥーヤ準侯爵の娘を疲労骨折させたからだ」
「・・・私の娘が疲労骨折?」
騎士達がアルファを起き上がらせて地面に押し当てる。
「だから婚姻無効だからジャンドゥーヤ準侯爵の娘だ
君の、 下賤な男爵の娘では無い」
「~~~~~ッ!! 私が教育した娘です!!」
「何を言うか、 ジャンドゥーヤ準侯爵の資産を使い
ジャンドゥーヤ準侯爵の伝手で雇った家庭教師が教育したのだ
君は過剰な教育をジャンドゥーヤ準侯爵の娘に課した」
「それは私の娘を完璧にする為です!!」
「嘘を吐け、 検察」
「はっ」
検察が書類を拡げて説明を始めた。
「被告アルファ・ポリーヌがジャンドゥーヤ準侯爵との間に作った娘は二人います
今回過剰な教育を課したのは上の娘です、 この娘に複数の家庭教師を付けて
寝る間も惜しんでの勉学、 更には社交ダンスのレッスンも行わせ
他にも武術まで習わせた結果、 疲労骨折と言う教育の形を取った虐待を行っていました」
「違う!! 私は娘を愛している!! 愛しているからこそ完璧な教育を施したのです!!」
「裁判長、 発言を許可願いたい」
陪審員の一人、 ホワイトが挙手をした。
「どうぞ」
「確かに今回の件は行きすぎですが家庭教師を増やすのは
成り上がりたい下位貴族も行うでしょう、 これを虐待とするのは下位貴族の勉学の機会を奪うのでは?」
「いえ、 ホワイト侯爵、 それは違います」
検察が否定した。
「被告アルファ・ポリーヌは被害女性に対して常日頃から
交流をしない育児放棄を行っていた事が明らかになっています」
「何と・・・」
「悍ましい・・・」
陪審員たちが眉を顰める。
「それは!! 甘やかさない為です!! 私との交流で勉強時間が減るでしょう!!」
「いえ、 全てデタラメです
被告アルファ・ポリーヌは被害者に対して深い嫉妬、 憎悪を持っていました」
ざわつく裁判所。
余りにも強い言葉に困惑している。
「何を言っているの!? 私は娘を愛していました!!」
「そうですか、 被告は被害者を愛していたと、 そう仰る?」
「そうよ!!」
「ではお尋ねしますが被害女性には妹が居ましたね?
ジャンドゥーヤ準侯爵の娘のもう一人」
「それが何!!」
「彼女には碌な教育をなさっていないですね? 家庭教師を付ける事すらしていない様子
そしてこの妹とは積極的に交流を持っている、 愛している筈の姉とは違って甘やかしている」
「あの子はあまり頭が良くないのよ!! だから代わりに私は」
「いえ、 貴女の本音を代わりに言って差し上げましょう
恐らく貴方は被害者に対して『あぁこの娘は尊い血の娘だ』『自分とは違って何でも出来る』
『賢く美しい』『妬ましい』『憎い』と思っていたのでしょう
被害者はジャンドゥーヤ準侯爵の血を濃く受け継いだ賢く強い女性だ」
「違う!! 私は二人を愛していた!!」
「そして妹の方は『この娘は間違いなく私の子だ』『愚かで見てくれだけは良い』
『愚かで愛らしい』と劣っている自分と重ね合わせて愛しているのでしょう
妹の方は率直に言って評判がとても悪い
ジャンドゥーヤ準侯爵の息子に媚を売った男爵の娘から産まれた娘だ」
「無礼だ!!」
「無礼? 貴女はジャンドゥーヤ準侯爵に媚を売って気に入られた娼婦と変わらない女だ
誰もがそう思っている」
「そーだそーだ!!」
「悍ましい売女!!」
「ジャンドゥーヤ準侯爵の子に仇なした逆賊!!」
「恥知らず!!」
「黙れお前達!!」
傍聴席からのヤジを黙らせる一人の壮年の男性。
彼はジャンドゥーヤ準侯爵の父ココナッツ。
「裁判長!! ジャンドゥーヤ準侯爵の父として
ジャンドゥーヤ準侯爵の子の祖父としてこのアバズレに対して決闘を申し込みます!!」
「駄目だ、 これは決闘で解決してはならない、 この女は稀代の大犯罪者として裁かれる運命だ」
「わ、 私は娘を愛していますわ!!」
アルファは尚も叫ぶ。
「では被告人に質問します、 被害者の好きな色は?」
「・・・え?」
アルファは検察の言葉に戸惑った。
「被害者の好きな色は?」
「・・・・・黄色、 黄色よ!!」
「答えはオレンジです、 では好きな花は?」
「・・・・・が、 ガーベラよ」
「チューリップです、 好きな食べ物は?」
「・・・・・さっきから何なのよ!!」
「陪審員の皆さん、 これが答えですよ、 この女は愛していると言っておきながら
自分の子供の好きな物すら知らない、 知ろうとしない、 そういう女なのです
これで愛していると言えるのでしょうか? 以上です」
場は沈黙した。
「では被告アルファ・ポリーヌに対する判決を述べる
ジャンドゥーヤ準侯爵を誑かした姦淫罪、 ジャンドゥーヤ準侯爵の子を虐待した児童虐待罪
更に上位貴族の子女を過度の教育で疲労骨折をさせた反逆罪
よって火あぶりに処します、 さぁ直ぐにでも広場に行ってこの女を燃やしましょう」
「・・・べ、 弁護人、 そ、 そうよ!! 弁護人が居ないわ!!」
アルファは叫んだ。
「貴女の弁護なんて誰もしませんよ、 さぁ騎士達、 その女を連れて行って燃やしなさい」
「いや!! いやああああああああああああああああああああああああ!!!」
バァン!! と裁判所の扉が勢い良く開かれた。
「・・・ジャンドゥーヤ準侯爵?」
「あなた!!」
裁判所の扉から現れたのはジャンドゥーヤ準侯爵だった。
「な、 何でここに居るんだ? お前は謹慎の筈だぞ?」
ココナッツも困惑していた。
「妻を返してもらいに来ました」
ジャンドゥーヤ準侯爵は懐に隠していたハンドサイフォンを取り出し炎を噴出した。
「なっ!? 逃げろ諸君!! 騎士達はジャンドゥーヤ準侯爵を捕ば」
「大変です公爵閣下!! 裁判所の裏手から炎が!!」
伝令の報告に心底混乱したゴディバ公爵。
混乱に乗じジャンドゥーヤ準侯爵はアルファと共に裁判所を脱出した。
再誕歴7701年メイ3日。
ベネルクス王国首都国王直轄領ブリュッセルの 外側エリアの路地裏。
そこでボロを纏ったアルファが目を覚ました。
「あの日の夢・・・か・・・」
アルファはジャンドゥーヤ準侯爵と共に裁判所から脱出したが
追手を巻き添えにしてジャンドゥーヤ準侯爵は爆死。
アルファは一人何とかゴディバ公爵の権力圏から逃走し何とかブリュッセルまでやって来た。
ここでアルファは貴族としての美貌を活かして娼婦として娼館に勤めていたが先日解雇された。
もう既に200歳(現実で言う所の50歳)を過ぎたからだ、 既に雇ってくれる所はない。
「ひもじい・・・」
貴族としての生活をしていたアルファにとって娼婦として働いて得た金は
まさに端金であり、 彼女にとってのまともな生活をする為にはまるで足らなかった。
彼女には金が無かった。
「・・・・・」
目覚めたアルファは路地裏を彷徨った。
何か仕事は無いだろうか、 しかしながらそう都合の良い話が転がっている訳も・・・
「!?」
アルファは路地裏の壁に張ってあったポスターを見た。
「日給1万ユーロも夢じゃない・・・ですって!?」
アルファはポスターを見て驚愕した。
【日給1万ユーロも夢じゃない!! 楽に早く儲かる!!
人手募集中!! 応募条件は金に困っている事だけ!!】
「これは・・・応募するしかない!!」
アルファは応募先の事務所に走り出した。
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いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
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チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
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シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
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一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
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