上 下
30 / 495
チャプター4:ホエア・イズ・コープ

コブリン・スマッシュ

しおりを挟む
再誕歴7701年ジュニアリー4日。

セルデン侯爵邸にてデンエンが年始の挨拶にやって来た。

「どうも侯爵閣下!! 新年あけましておめでとうございます!!」
「丁度良い所に来たな、 今からお前の所に向かうつもりだった」

邸に入る前に玄関先で挨拶を交わすセルデンとデンエン。
ジョンとジャン、 グレゴリオとフランクも居る。

「それはそれは態々御年始の挨拶、 痛み入ります」
「年始の挨拶では無い」
「は?」
「先日のフランクとフェザーの決闘だがフランクが負けたのは足場が悪かったからだ
と本人が言っている」
「は!?」
「えぇ、 コロシアムの舞台上の足場が悪く機動力が削がれました
全部が全部が私のせいとは言いませんが7:3で貴方の整備不足で負けたと思ってます
当然7が貴方です」
「ちょ、 ちょっと!? どういう事ですか!?」
「黙れデンエン」

ジョンがデンエンの言葉を制する。

「整備をきちんとしてなかったお前が悪い」
「そんな無茶苦茶な・・・」
「先の決闘ではフェザーと決闘する為の条件として勝者に5万ユーロを渡す事になっている
先の通り7:3で貴方が悪いので5万の7割の35000ユーロを払って貰います」
「ちょ、 ちょっと待って下さいジャン様!!
先日はチケットの売り上げとかサクラ代で出費が嵩んでげほァ!?」

ジョンがデンエンを蹴り飛ばし踏みつける。

「黙れや、 お前がピンハネしまくるからこんな事になってるんだろうが」
「す、 すみません・・・」
「あとそれからコロシアムだがさっさと廃業しろ」
「は、 はぁ!? い、 一体如何言う」
「・・・・・」

苦々しそうに足を退けるジョン。

「説明するとだね、 今度市街地を拡張して新しいコロシアムを作ろうと思う」
「あ、 新しいコロシアムぅ!?」

ジャンの言葉に驚愕するデンエン。

「前々から新コロシアムを作ろうと言う話はジャンがしていたのだが
今回の件で決心がついた」
「じゃ、 じゃあ私はどうなるんですか!?」

セルデン侯爵に縋りつくデンエン。

「知るか、 サホロにはとっくに見捨てられているのだろう
もう既にコロシアムは終わっている、 隠居しろ」
「そ、 そんな・・・・・いや、 まだ・・・
まだだ!! サホロ・ファイターズが無くなっても
まだこの街には決闘代行業は居る!!」

立ち上がるデンエン。

「だがしかしサホロ・ファイターズ程の勢力がある連中は居ないだろう」
「いや!! やる気のある奴等が居ます!! 連中に賭ける!!」
「やる気のある奴等?」
「 小鬼の一撃コブリン・スマッシュです!!
アイツらは前々からコロシアムでの決闘に興味がありました!!」
「あいつ等か、 ならば手向けとして激励をしておこう」

セルデンはサラサラと公用便箋※1 に『頑張れ』と署名と一筆入れる。


※1:ベネルクス王国貴族当主にのみ発行される公式な便箋。
この便箋に当主が書くと言う事は紛れも無い真実とベネルクス政府が保証する。
だが30枚セットで500ユーロと凄い高いので極めて緊急性と非常性が高い時以外には使われない
因みにセルデン侯爵は公用便箋を親である先代当主から買って貰ったはいい物の
重大事には伝令を使ったり自分で向かう事が多い為、 全く使っていない。
30枚セットの3枚目の使用である。


「ありがとうございます!! では失礼!!」

ダッシュで駆けるデンエン。

「アイツもナンギだネ、 カネモチになり続けるのもタイヘンだ」

グレゴリオが呟く。

「寧ろ、 現役時代よりも焦っているだろうな
現役のアイツは貧乏でも若かったがここでヘマしたら
年金で最低限の生活は出来るだろうが
高みを味わった分、 惨めさは酷い上に年老いている
やはり戦場で死んだ方が良いだろうか・・・終活考えようか」
「いやいや!! もっと長生きしてくれないと困りますよ父上!!
それよりも小鬼の一撃コブリン・スマッシュって何です?」
「ジョン、 説明してやれ」
「・・・・・侯爵領騎士団団員の落ちこぼれとか脛に傷ある奴とか
集まっている決闘代行業だ、 従業員数10人
サホロの所とは格落ちするが、 まぁまぁやるだろうが
コロシアムで決闘出来るとは思えない」
「何故です?」
「アイツ等はヴァカで貧乏な連中だから剣がまともに使えないし
良い武器を揃えられないから所属決闘者全員が棍棒しか使わん」
「蛮族ですね」
「そうだな、 まぁ義理堅い連中だ、 歳暮※2も送って来る」


※2:冬の終わりに贈り物を送る事。
元々は日本の行事だったが如何言う訳だがヨーロッパにも伝来した。


「そうですか、 まぁアイツが如何なろうが新しいコロシアム作ってしまえば奴も終わりですよ」
「だな・・・・・」




小鬼の一撃コブリン・スマッシュの事務所が有るビルの一室にやって来たデンエン。

「と言う訳でサホロが撤退したのでコロシアムで決闘をやって貰えないだろうか」
「デンエンさん、 それはキツイっすわ」

小鬼の一撃コブリン・スマッシュ代表のマスク・ザ・コオニが
自慢のオニ・ザ・マスク※3 のツノ・ザ・マスク※4 を撫でながら答える。


※3:左右に角が生えたマスク。

※4:角


「前々からコロシアムで決闘したかったッスけども
サホロん所のバーター※5 を考えてましたから、 俺達だけじゃあ人手不足ッスよ」


※5:役者の抱き合わせ、 『束』にして売り出すの束を逆さ読みしたと言う説が支配的。


「他の決闘代行業にも声をかけます?」
「いや、 手続きが煩雑になって手数料もかかる
もっと人を雇えないか?」
「それならナイスな話がありますよ、 おーい新入り―」
「へい」

上半身裸のチョコレート色の良く焼けた肌の男がやって来た。

「こいつはウチの新入りのオガっす
コイツはネルネルネルネルネって言う街から逃げて来た奴なんですが
スゲェ強いです」
「ねる・・・何?」
「マーナガルム男爵の治める治安の悪い街っす」
「マーナガルム男爵? 知らんなぁ・・・で?」
「ネルネルネルネルネでは明日の飯にも困る連中が多いんで
そいつ等を雇うって言うのは如何でしょう」
「なるほど、 それは名案だな、 では早速スカウトに向かおう」
「ちょっと待った、 住んでいる奴等は警戒心が強いから
土産とかも買っておいた方が良い、 食べ物とか
それから治安悪いから全員で行った方が良い」
「出費が嵩む・・・えぇい!! 乗り掛かった舟だ!! 金は全部任せろ!!」
「よっ!! 太っ腹!!」

画してデンエンと小鬼の一撃コブリン・スマッシュはN5に向かうのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

処理中です...