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チャプター3:キル・トゥー・バード・ウィズ・ワン・ストーン

グレート・アンガー・フォー・アンガー

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セルデン侯爵領に付いたフェザー達はコロシアムの一室に通された。

「うわぁ・・・」

来るなりフローラがドン引きしている。
重キャリッジの中で漏らした『うわぁ』とは全く違う物である。
部屋の中はそれなりに広いが石作りの打ちっぱなしで壁紙すら貼っていない。
椅子も有るが公園のベンチをそのまま拾ったかの様な雑さ。
テーブルも有るがそれも公園の物の様に見える。
ペンキを塗ってあるが豪華さを出しているつもりなのか?
唯一コロシアムの武道場は良く見える位置である。
しかしながらとても貴族を招く部屋では無い。

「それではここで待機を」
「ちょっと待ちなさい」

案内人を止めるサン。

「何この部屋は? 私を馬鹿にしているの?」
「えっと・・・ここが一番良い貴賓席ですが・・・」
「ここが? 本当に?」
「えぇ、 そうですが」
「はぁ・・・」

溜息を吐くサン。

「じゃあクッションと飲み物を」
「え? クッションですか?」
「当たり前じゃない!! こんな固い椅子に座れと言うの!?」

激昂するサン。

「いや、 あの・・・私は案内だけする人なので・・・
そう言う事は出来ないんです、 すいません」
「・・・・・責任者呼んで来なさい」
「あ、 せ、 責任者は今留守で・・・」
「・・・決闘を申し込んで呼び出してこんな所で待たせて
責任者は留守? 馬鹿にしているの?」
「い、 いえ、 そんな事は・・・」
「騒がしいな」

セルデン侯爵が現れた。

「ベルモンド伯爵の御息女ですかな? 私はセルデン侯爵です」
「サンです、 ご挨拶は程々にして、 これは酷いのではないのですか」
「酷い? 酷いとは何・・・事・・・」

セルデン侯爵が中の様子を見て愕然とする。

「デンエンを呼べ、 ヒエモントゥーリ※1 にする」


※1:セルデン侯爵領の処刑方法の一つ。
日本の薩摩に伝わるひえもんとりと言う
罪人の肝を素手で抜き取ると言う恐ろしい所業を
更に発展された代物で罪人の体を素手で生きたまま解体していく恐ろしい処刑方法。
四肢の指、 筋肉、 骨から始まり、 内蔵を丁寧に取り出して
最後は心臓の血管を捥ぎ取って失血死させて終わる。
処刑が娯楽として成立するセルデン侯爵領でも忌避される所業で
ベネルクス王国政府からは死刑囚とは言え余りにも凄惨な方法だと非難され
本家薩摩でも『まどろっこしい』と眉を顰められる。
因みにセルデン侯爵領騎士団の騎士団長は
ヒエモントゥーリを行い成功させた経験が無くてはならないと言う規約がある。
これは凄まじい腕力と残忍な事を行える胆力。
そして生きたまま体を解体する事が出来る程の知力を照明する為である。


「止めて下さい、 そんな残虐な事見過ごせません」
「分かりました、 ですがここは余りにも酷過ぎる
君、 直ぐにソファーとシャンパンを持って来なさい」
「え、 ですが」
「良し、 殺されたいんだな」

刀を抜くセルデン。

「い、 今すぐ持って来ます!!」

ダッシュで逃げる案内役。

「全く・・・本当に申し訳無いな
最近はコロシアムの売り上げが落ちていて・・・」
「いえいえ・・・」
「・・・・・」

フェザーが後ろで見ている。

「彼がフェザーですかな?」
「えぇ、 そうです」
「見た所素手の様ですがよろしいので?」
「確かにそうね、 フェザー、 素手で良いの?」
「えぇ、 殺し合いじゃないですから素手で大丈夫でしょう
それに素手にも利点があります」
「素手の利点? 何ですかなそれは?」

子馬鹿にした様に尋ねるセルデン。

「武器を持たないから早く攻撃が出来ます」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!????????????」

驚愕に目を見開き愕然とし膝と両手を地面に付けるセルデン。

「た、 確かにそうだ・・・なんと・・・何という事だ・・・」

セルデンは震えた。

「ちょっと待って下さいフェザーさん、 それはおかしいじゃないですか」

クローリスが割って入る。

「確かに素手は早いですが、 武器を持っていた方が威力が出るのでは?」
「そうだね、 だから素手と武器、 両方にそれぞれメリットとデメリットがある
デスマッチルールじゃなければ素手で充分でしょう」
「・・・・・」

立ち上がるセルデン。

「申し訳無い、 フェザー君、 君の決闘を見たくなった
ここで観戦してもよろしいでしょうか?」
「お嬢様が許可すれば」
「別に構わないですよ」
「すまないな・・・」
「失礼致します」
「「うわ!?」」

唐突に現れる立会人№500に驚く一同。

「どーも、 今回の決闘の立合人をさせて頂く立会人№500です
今回はフェザー氏とフランク氏の決闘ですが
フランク氏が提案するルールはダウンのタイム10分※2 見せ合い無しです」


※2:時間制限を設けた決闘法。
時間切れになった際には判定に持ち込む事からコロシアムで良く使われる。


「タイム10分?」
「えぇ」
「・・・・・分かりました、 それで行きましょう」
「ではフランク氏にも伝えましょう」
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