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絶望

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白いシャツに青いベストに青いズボン。
所謂普通の庶民の恰好、 しかしポケットが付いていない物。
ペンチ、 物を入れる為の黒い袋、 木の葉を模した髪飾り。
娼館の従業員の名刺に金貨6枚。
まるで自殺するかのように輪が結んであるロープ。
しかし自殺用には余りにも短い。

「・・・何だこれは?」

メイズは机の上に並べられた荷物を見て困惑していた。

「犯人側の指定です」

ロウが答える。

「指定・・・取引するには相手を知らなければならないから
衣服の指定は分かるが・・・荷物が意味が分からない」
「袋の中にダイヤモンドを入れろとの事です、 髪飾りも着用せよと」
「・・・それ以外の意味が分からない、 娼館の従業員の名刺って何だ?」
「さぁ・・・?」

部屋の中の者達も首をかしげている。

「指定された場所は?」
「王都の公園です、 見張りをつける事は許さないと向こうは言っていますが
元々広場には警邏の巡回もありますので怪しい点は見逃しません」
「公園の何処?」
「栗の木の傍のベンチに行けと」
「・・・・・すみません、 中座します」

カボンは離席した。
カボンの家臣団はカボンが居なくなるとひそひそと陰口を言い始める。

「・・・見苦しいな」
「全くですな、 指定の日時は明日です
指定されたのは・・・・・我が愚息です」
「・・・・・」

苦笑いするオリ。

「お前何か有ったらマジで殺すからな」
「は、 はいぃ・・・」

ロウの脅迫に冷や汗を流すオリ。

「・・・・・何故この男に?」
「さぁ? 王太子殿下の側近で高い身分且つ身体能力が低いからでしょうか?
何か有ってもこいつなら倒せますよ」
「・・・・・」

俯くオリ。

「まぁ良いだろう、 彼なら問題あるまいて、 しっかりやれよロウの倅」
「は、 はい!! お任せください陛下!!」

ルイ3世の言葉に感激するオリ。

「大事を取ってお前はもう寝なさい」
「はい!!」

オリは部屋から出た。

「・・・愚息を随分高く評価している様で助かります」
「奴ならば持ち逃げしても追いかけるのも容易だからな」
「そうですか・・・」
「まぁ良い、 チェン、 お前は相手から確認出来ない超遠方から監視せよ」
「はい」

カボンが戻って来た。

「では解散、 カボンは残れ」
「・・・はい」

カボンとルイ3世、 フロアーと近衛を残して後は帰って行った。



「・・・・・さてカボン、 5000億だが・・・利子をつけての分割返済を認める」
「・・・・・」

カボンは安堵の溜息を吐いた。

「利率は年利10%にしてやろう、 毎年51億Gを5000年支払え」
「そんな!! それでは民草の生活が成り立ちません!!」
「既に王太子を婚約者から寝取った時点で君の領地の信頼性はゼロだ
それでも不動産やらなにやらの価値が5000億あるのが驚きだ」
「・・・・・」
「嫌だったら、 全部清算するんだな、 もう帰ってよろしい」
「・・・・・」

カボンはふらつきながらも部屋から出て行った。
部屋の外にはカボンの家臣団が待ち構えていた。

「お前達・・・待っていてくれたのか」
「閣下、 我々が任されている商会や領地の件でお話が有ります」
「話だと?」
「えぇ、 閣下が資金を出していますが実質的な権限は我々にあります」
「・・・何が言いたい?」
「売却での一括返済は承認しかねると言いたいのです」
「先程利子を毎年1割払えと言われた、 年間51億Gを5000年
こんな馬鹿みたいな話があるか?」
「ならば税を上げるしかありませんね」
「領民を殺す気か、 貴様等」
「それは此方の台詞です、 貴方が何処からか拾った小娘のせいで
我々の信用も大分落ちてしまった、 既に首を括った者も大勢居るのです
100人殺そうが、 1万人殺そうが、 もう大差ありませんよ」
「・・・・・」

カボンの眼には絶望しか無かった。
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