婚約破棄した王子が距離を取られている件

Mr.後困る

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「はぁ・・・」

ドミナント王子が執務室で溜息を吐く。

「如何しました? 疲れましたか?」

御付きの執事が尋ねる。

「いや最近如何にも周囲の人間が離れて行っている気がするのだ」
「そんな事は無いと思いかと思いますよ?」
「いや、 そもそもお前はつい最近入って来たばかりの執事じゃないか」
「はい、 前任の執事は年齢が年齢だったので隠居したと」
「それは私から離れていると言う事じゃないか」
「気にし過ぎでは?」
「いいや、 絶対に人が離れて行っている
婚約破棄をしてから如何にも人が離れて行っているんだよ」
「婚約破棄、 ですか」

ドミナント王子を始めとした王族は国有数の魔法の使い手である。
婚約者が魔法があまり使えないロック伯爵令嬢だったので前々から不満が有ったので
少し前に婚約を破棄して魔法が堪能なマギ公爵令嬢と婚約を結び直したのだった。

「私としては事情が分からないので何とも言えませんね
伯爵令嬢と婚約破棄した時はどの様に婚約破棄したのですか?」
「普通に書類を交わしたさ、 こっちの有責で金も支払った」
「不審な点はない様ですね・・・不思議ですねぇ・・・」
「王妃教育でロック伯爵令嬢の時間を取ってしまったがそれを踏まえた金は支払ったよ」
「そもそも何故ロック伯爵令嬢と婚約したのですか?」
「先代の宮廷魔術師長が勧めたらしい、 具体的には良く分からんが・・・
ロック伯爵令嬢と子を成すのがベストと言う判断だったらしい」
「魔術的な要因でしょうか・・・それでしたら何故婚約破棄が出来たんですか?」
「今の宮廷魔術師長が検査をした結果、 ロック伯爵令嬢と子を成すのは
王族の魔法のレベルを著しく下げる恐れが有るからと判断されたからだ
その時には宮廷魔術師長が代替わりしていたから問題無しと判断されて婚約破棄出来た」
「そうでしたか・・・」

首を傾げる執事。

「だがしかし・・・婚約破棄をしてからと言う物、 皆が私から離れて行ったんだ」
「皆とは?」
「まずは側近だった騎士見習いのルテイン
騎士団長の息子だから将来的には騎士団を継ぐ筈だったのだが
騎士団長共々田舎に引っ込んでしまった
次にバリン子爵、 彼も側近で学生時代同学年だったが
何故だか隣国に急に留学してしまった
そして父上と母上、 体調を崩して地方に療養
父の代わりを務める宰相も地方での政治を行っている
極めつけは国教たるイソロイシン教、 教皇や枢機卿等のお偉いさんが一斉に
この王都から退去してしまった」
「それは確かイソロイシン教の本部を聖地たるエンテファミンに移動したからでは?」
「何で移動したかが問題なんだよ・・・まぁ代わりの者が来るから問題無いのだが・・・
それでも気になる物は気になる」
「なるほど・・・・・では私も調べて見ますね」
「頼むぞ、 私は執務で忙しいからな」

画して執事は色々と調べてみる事にした。
まずは王子の側近のルテインとバリンについて調べてみた。
彼等の移動はまるで問題は無かった。
続いて王子の両親について、 これは噂によると仮病で地方でほぼ隠居状態らしい。
年を取った貴族がこうしてずる休みをするのは良く有る事だ、 執事もそれは責め立てない。
イソロイシン教の本部移設に関してはかなりの機密事項だったので調べる事は出来なかった。

続いて前宮廷魔術師長に関して調べてみた。
『ロック伯爵令嬢と子を成すのがベスト』前宮廷魔術師長がそう判断したのは何故なのか?
また『ロック伯爵令嬢と子を成すのは王族の魔法のレベルを著しく下げる』
現在の宮廷魔術師長の推察と真逆なのは一体何故なのか?
執事は色々調べてみた。
まず『ロック伯爵令嬢と子を成すのは王族の魔法のレベルを著しく下げる』
これに関しては現在の宮廷魔術師長は論文に纏め上げていた。
執事には学が有った為、 スラスラとは行かないが読み進め
内容を理解した、 内容に不審な点は無かった。

次に『ロック伯爵令嬢と子を成すのがベスト』と言う前宮廷魔術師長の判断。
これについては根拠がまるで無かった
と言うよりも全宮廷魔術師長の資料自体まるで無かった。
論文が有ったのかもしれないがまるで無かったのだ。
仕方が無いので執事は国中を探し回り前宮廷魔術師長を見つけ出したのだ。



前宮廷魔術師長リジンは辺境にて大農場を開いていた。

「こんな爺の所に何の用かね?」
「お時間をお取りしてすみません
実はロック伯爵令嬢との婚約を勧めたのが貴方だと言う話をお聞きしまして・・・
それの根拠と言うのは何でしょうか?
今の宮廷魔術師長とは意見が正反対なので詳しくお聞きしたいのですが・・・」
「正反対では無いぞ」
「はい?」
「ワシが殿下にロック伯爵令嬢との婚姻を勧めた理由は単純明快
生まれて来る子供の魔法のレベルを下げる為じゃ」
「何故そんな事を? 国に対しての利敵行為では?」
「全く違う、 これは機密事項なんだが・・・
まぁ君はここまで調べに来たんだし特別に話してやろうか
今まで王族は魔力が高い、 魔法が巧みな者と結婚して
魔力や魔法のレベルを上げて行った、 ここまでは良いな?」

先程までの好々爺としたなりはひそめ、 真剣な口調で話し始める。

「はい、 大丈夫です」
「しかし人間には限界と言う物が有る、 人間ならば何にでも限界はある
魔法や魔力等にもそれは当てはまる」
「つまり?」
「つまりこれ以上魔法や魔力のレベルを上げる様になってしまえば
生まれてくる子供がちゃんと生まれるか怪しい
魔法や魔力が暴走、 いや爆発する恐れが有る
最低でも王都は木っ端微塵になるじゃろうて」
「木っ端微塵・・・そ、 その事は陛下や王妃は・・・」
「知って居るじゃろう、 機密だから政治中枢にいる者や教会の連中位しか知らんが
それでも知って居る、 王子には知らせんかった、 強過ぎて子を成せないと言うのは
知らぬが仏じゃろうて、 ロック伯爵令嬢は魔法や魔力が殆ど無かったから
生まれて来る子供も魔法のレベルが下がると推測され
つまり生まれて来る子供も普通の子供が生まれて来るだろうと推測されたんじゃ
しかし後任の宮廷魔術師長が自身の権威の為かワシを貶める為か
魔力レベルを下げる事を発表して婚約破棄を勧めたのじゃ」
「何故それを陛下達は了承したのですか?」
「王子に知らせなかったのが災いしたし、 大々的に発表されたからの
今更如何しようも無かったろう、 出来る事は逃げ出す事だけじゃろうな・・・
勿論王子に悟られない様にな」
「そ、 それでは貴方の資料が無かったのは・・・」
「ワシの研究資料を隠すか燃やしたか知らんが
事実を知られてパニックを恐れたか
或は王子の世話をする者が居なくなるのを恐れたか・・・
事実を知れば王子の傍に居る者は誰も居なくなるからのぉ・・・」
「・・・・・」

執事は青い顔になった。





「はぁ・・・」

ドミナント王子が執務室で溜息を吐く。

「如何しました? 疲れましたか?」

御付きの執事が尋ねる。

「いや最近如何にも周囲の人間が離れて行っている気がするのだ」
「そんな事は無いと思いかと思いますよ?」
「いや、 そもそもお前はつい最近入って来たばかりの執事じゃないか」
「はい、 前任の執事は田舎暮らしをしてみたくなったと地方の農場で生活しているとか」
「それは私から離れていると言う事じゃないか」
「気にし過ぎでは?」
「いいや、 絶対に人が離れて行っている
婚約破棄をしてから如何にも人が離れて行っているんだよ」
「婚約破棄、 ですか離れて行った人よりも今近くにいる人の方が大事では無いですか
奥方様と生まれてくる子供を大切にしましょうよ」
「うーむ、 そうかもしれないなぁ・・・」
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