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第11章 バカと天才は死んでも治らない
第267話 独りぼっちの代償
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「た、タクマさん、やっぱり怖いです……」
「この気配、妾もあまり好きにはなれぬ」
「いやな、その気持ちはすげぇ分かるけど、離れろ。そろそろ」
城へと潜入したタクマ一行。奥にZとリュウヤが居ることを信じて、付近を隈なく捜索していた。
しかしそんな中、メアとノエルは城の雰囲気にやられ、タクマの後ろに張り付いていた。
確かに、所々天井が欠けて、屋内であるはずなのに雪が積もっていたり、瓦礫に挟まれて永遠にもがき苦しむゾンビとか。見るに耐えない光景が広がっている。
「ウフフ、タクマさんったらモテモテでありんすな」
「まあタクマ殿、外も中もこんな状況でござる。刺激が強すぎるのも無理はない」
「だよなだよなぁ?さっすがダーリン、頼りになるぜ!」
そんな事を言いながら、アリーナは吾郎の腕にしがみつく。その様はまさに、昭和に流行った抱っこちゃん人形のような姿だった。女海賊としてのプライドとかないのかね。タクマは汗を流しながら思う。
しかしナノだけは怖がる事を知らず、この惨状を見ても1人、懸命に匂いを探っていた。まだあんなに幼いのに、尊敬する。
「ナノちゃんさん、何かお見つけになられました?」
「ううん、ダメや。なぁフラりん、フラりんは何処で蘇ったん?」
「あっ、そういえば。フランさん、覚えているでありんすか?」
あっと驚き、おタツは早速訊いた。もしかすると、その蘇った場所を辿って行けば、Zの研究室に繋がるかもしれない。
するとその時、突然フランが頭を押さえて苦しみ出した。
「ふ、フラン!しし、しっかりせい!」
「ぐっうぅ……頭が……この感じ……あの時も……キャアアアアアアア!!」
フランが叫んだその瞬間、彼女を守るように丸いバリアが展開した。それは巨大風船のように膨らみ、波紋のような速さでタクマ達を吹き飛ばした。
しかも、その圏内に居たゾンビ達は、どういう訳か、ドロドロに溶けてしまった。
「あいたた……おいブレンお前!アタシらも巻き込んで何のつもりだ!」
「ちょっとアリーナさん、ダメですって」
「ダメも何もあるか!おい、聞いてんの……」
アリーナは彼女の胸ぐらを掴もうと近付いたが、彼女の顔を見て、怒る気が失せた。その顔は、あまりにも苦しそうで、悲しそうな顔をしていた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「フラりん……?」
「そんなに謝って、いきなりどうしちゃったんです?」
「私だけ、私だけがこうして生き返っているのに、他のみんなは……あんな酷い姿になっているのです。そう思うと私、耐えられなくて……」
フランの顔は、涙でぐちゃぐちゃになっていた。彼女の言う通り、見たところゾンビとはいえ綺麗な姿のままで蘇れたのは彼女のみ。城の中を見ても、ゾンビになりきれず、無惨に裂き殺されたメイドだったものや、横たわる鎧がそれを物語っている。
「あまり深く考えるな、トキ娘。全部テメェのクソ兄貴がエゴでやらかした事だ。ケジメ付けてぇんなら、ワンワン泣くのはやめろ。耳障りだ」
その時、美味しそうな肉の香りと共に、チャラチャラとした足音が聞こえてきた。振り返ると、なんとそこにはオニキスが居た。しかも、骨付きの肉を片手に持っている。
「お、オニキス殿!先程の怪物は?」
「あぁコレか?美味いぞ、食うか?」
まるで何とも思っていないのか、オニキスはタクマに肉を手渡す。しかし、何の肉か微かに想像はつくものの、得体の知れないものは食べたくない。そもそも、こんな吐き気を催すほど憎悪が渦巻く場所で、呑気に肉にかじり付きたくもなかった。
「とにかくだ。トキ娘、テメェは何のためにここに来た?」
「えっ、それは……むぐっ」
これから話そうとしていた所、オニキスはすれ違い様にフランの口に肉をぶち込んだ。
そして、理不尽に「うるせぇ」と低い声で唸るように言った。
「おい女もどき、唐突に現れて何のつもりじゃ」
「お前らって本当にバカだな。まだアイツの居場所突き止められてねぇのか?」
「フン、貴方様も大概のくせに」
おタツは聞こえるように呟く。しかしオニキスは気にせずに、自分の剣に血を与え、それを大広間の中央に突き立てた。
すると、まるで地形を読み取るかのように、赤黒い線が部屋を駆け巡った。
「な、なんだこりゃ。コレと奴の居場所を調べるのに、何の意味があるんだ?」
「アイツがどんな奴か、それくらいは言わなくても分かるだろ?なぁ、ネコ娘」
「勿論ですとも。卑劣で腹立たしい人です。現にリュウヤさんを人質にしてこんな薄気味悪い所に隠れてるし、ハッキリ言えばゲス外道です」
「そのゲス外道の妹サマが居るのに、よく言えるな。だったらアイツが何処に潜んでるか、そんなの分かるだろ」
勝手に話が進んでいくが、まだ何もわからない。一体オニキスは、何を言いたいのだろうか。
するとオニキスは突然「見えた」と言い、剣を引き抜いた。
「アイツが隠れてる場所、それはあそこだッ!」
そう言って、オニキスは剣を階段の方向に投げた。そして、追い討ちをかけるように血で生み出した長い爪で空間ごと斬り裂いた。
すると、そこに歪みが生じ、二階の玉座の間に繋がるであろう階段が、地下へと通ずる階段に変化した。
「な、なんだこりゃあ……」
「見てくださいタクマさん!あの階段の奥、あの扉って!」
ノエルの指した方を見てみると、なんとそこには近未来的なデザインの扉が設置されていた。しかもその両サイドには、偽りの時空を作っていたであろう装置が付いていた。
「あれ、見た事ありますわ!朧げな記憶だから、夢だとばかりに……」
「す、凄い……オニちゃん、これはどう言うこっちゃ?」
目を輝かせてナノが訊くが、オニキスは説明は後にすると言うだけで、何も答えなかった。
そして、タクマ達は開いた道を進んだ。
「この気配、妾もあまり好きにはなれぬ」
「いやな、その気持ちはすげぇ分かるけど、離れろ。そろそろ」
城へと潜入したタクマ一行。奥にZとリュウヤが居ることを信じて、付近を隈なく捜索していた。
しかしそんな中、メアとノエルは城の雰囲気にやられ、タクマの後ろに張り付いていた。
確かに、所々天井が欠けて、屋内であるはずなのに雪が積もっていたり、瓦礫に挟まれて永遠にもがき苦しむゾンビとか。見るに耐えない光景が広がっている。
「ウフフ、タクマさんったらモテモテでありんすな」
「まあタクマ殿、外も中もこんな状況でござる。刺激が強すぎるのも無理はない」
「だよなだよなぁ?さっすがダーリン、頼りになるぜ!」
そんな事を言いながら、アリーナは吾郎の腕にしがみつく。その様はまさに、昭和に流行った抱っこちゃん人形のような姿だった。女海賊としてのプライドとかないのかね。タクマは汗を流しながら思う。
しかしナノだけは怖がる事を知らず、この惨状を見ても1人、懸命に匂いを探っていた。まだあんなに幼いのに、尊敬する。
「ナノちゃんさん、何かお見つけになられました?」
「ううん、ダメや。なぁフラりん、フラりんは何処で蘇ったん?」
「あっ、そういえば。フランさん、覚えているでありんすか?」
あっと驚き、おタツは早速訊いた。もしかすると、その蘇った場所を辿って行けば、Zの研究室に繋がるかもしれない。
するとその時、突然フランが頭を押さえて苦しみ出した。
「ふ、フラン!しし、しっかりせい!」
「ぐっうぅ……頭が……この感じ……あの時も……キャアアアアアアア!!」
フランが叫んだその瞬間、彼女を守るように丸いバリアが展開した。それは巨大風船のように膨らみ、波紋のような速さでタクマ達を吹き飛ばした。
しかも、その圏内に居たゾンビ達は、どういう訳か、ドロドロに溶けてしまった。
「あいたた……おいブレンお前!アタシらも巻き込んで何のつもりだ!」
「ちょっとアリーナさん、ダメですって」
「ダメも何もあるか!おい、聞いてんの……」
アリーナは彼女の胸ぐらを掴もうと近付いたが、彼女の顔を見て、怒る気が失せた。その顔は、あまりにも苦しそうで、悲しそうな顔をしていた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「フラりん……?」
「そんなに謝って、いきなりどうしちゃったんです?」
「私だけ、私だけがこうして生き返っているのに、他のみんなは……あんな酷い姿になっているのです。そう思うと私、耐えられなくて……」
フランの顔は、涙でぐちゃぐちゃになっていた。彼女の言う通り、見たところゾンビとはいえ綺麗な姿のままで蘇れたのは彼女のみ。城の中を見ても、ゾンビになりきれず、無惨に裂き殺されたメイドだったものや、横たわる鎧がそれを物語っている。
「あまり深く考えるな、トキ娘。全部テメェのクソ兄貴がエゴでやらかした事だ。ケジメ付けてぇんなら、ワンワン泣くのはやめろ。耳障りだ」
その時、美味しそうな肉の香りと共に、チャラチャラとした足音が聞こえてきた。振り返ると、なんとそこにはオニキスが居た。しかも、骨付きの肉を片手に持っている。
「お、オニキス殿!先程の怪物は?」
「あぁコレか?美味いぞ、食うか?」
まるで何とも思っていないのか、オニキスはタクマに肉を手渡す。しかし、何の肉か微かに想像はつくものの、得体の知れないものは食べたくない。そもそも、こんな吐き気を催すほど憎悪が渦巻く場所で、呑気に肉にかじり付きたくもなかった。
「とにかくだ。トキ娘、テメェは何のためにここに来た?」
「えっ、それは……むぐっ」
これから話そうとしていた所、オニキスはすれ違い様にフランの口に肉をぶち込んだ。
そして、理不尽に「うるせぇ」と低い声で唸るように言った。
「おい女もどき、唐突に現れて何のつもりじゃ」
「お前らって本当にバカだな。まだアイツの居場所突き止められてねぇのか?」
「フン、貴方様も大概のくせに」
おタツは聞こえるように呟く。しかしオニキスは気にせずに、自分の剣に血を与え、それを大広間の中央に突き立てた。
すると、まるで地形を読み取るかのように、赤黒い線が部屋を駆け巡った。
「な、なんだこりゃ。コレと奴の居場所を調べるのに、何の意味があるんだ?」
「アイツがどんな奴か、それくらいは言わなくても分かるだろ?なぁ、ネコ娘」
「勿論ですとも。卑劣で腹立たしい人です。現にリュウヤさんを人質にしてこんな薄気味悪い所に隠れてるし、ハッキリ言えばゲス外道です」
「そのゲス外道の妹サマが居るのに、よく言えるな。だったらアイツが何処に潜んでるか、そんなの分かるだろ」
勝手に話が進んでいくが、まだ何もわからない。一体オニキスは、何を言いたいのだろうか。
するとオニキスは突然「見えた」と言い、剣を引き抜いた。
「アイツが隠れてる場所、それはあそこだッ!」
そう言って、オニキスは剣を階段の方向に投げた。そして、追い討ちをかけるように血で生み出した長い爪で空間ごと斬り裂いた。
すると、そこに歪みが生じ、二階の玉座の間に繋がるであろう階段が、地下へと通ずる階段に変化した。
「な、なんだこりゃあ……」
「見てくださいタクマさん!あの階段の奥、あの扉って!」
ノエルの指した方を見てみると、なんとそこには近未来的なデザインの扉が設置されていた。しかもその両サイドには、偽りの時空を作っていたであろう装置が付いていた。
「あれ、見た事ありますわ!朧げな記憶だから、夢だとばかりに……」
「す、凄い……オニちゃん、これはどう言うこっちゃ?」
目を輝かせてナノが訊くが、オニキスは説明は後にすると言うだけで、何も答えなかった。
そして、タクマ達は開いた道を進んだ。
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