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第11章 バカと天才は死んでも治らない
第265話 ヘビとカニは特撮怪人でよく出てくる
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それから、一行はフランの案内のもとZの本拠地へと向かった。道中は当たり前のようにゾンビが徘徊していたが、フランが居るからか、こちらに気付いても襲ってくるような個体は現れなかった。
しかし、どれだけ襲われなかったとはいえ、周囲のゾンビ臭はずっと付き纏い、途中で気分を悪くしそうにもなったが、段々慣れてきた。本来慣れるべきではないのだが。
そして、そんなこんなありながらも、遂に目的地に辿り着いた。
「着きました。ここがエントポリス城、かつてこの国を統治する賢人が暮らした場所ですわ」
そう言われて見上げると、そこには無惨にも崩れた白の廃墟があった。雪かきをする者が誰も居ないため、雪が第二の屋根のように積もり、小学生なら絶対に喜ぶであろう極太の氷柱なんかも生え放題になっていた。
それだけではなく、よく見れば屋根雪の中に、ゾンビと思しき何かがビクビクと蠢いているのが見えた。しかし、降り積もった雪が重りとなっているせいか、冷たい雪布団の監獄から抜け出せない。
「なんとも無惨な……痛ましいでござる……」
「住民がゾンビじゃから、魂の気配がないのが唯一の救いじゃよ、全く」
「ゾンビだがサンビカだか知んねぇが、何だかソイツと似たヤベー気配がする。テメェら、気を抜くなよ?」
オニキスはそんな事など気にせず、1人だけ剣を抜いた。するとその時、突然城下町の方で爆発が起きた。
振り返ると、すぐ近くにあった民家の中から、謎の怪人が現れた。
頭はガラガラヘビ、腕はカニのようなハサミ、脚はバッタと、色々な生物を合成させたような見た目をしていた。まさしく、キメラの名を冠するに相応しい。
「な、なんやアレ!気持ち悪い!」
「チッ。ゾンビの次はごちゃ混ぜ怪人かよ!しかも強そうだし」
「っ!まずい来るでありんす!」
おタツは怪物が飛び上がったと同時にクノイチに変身し、怪物のハサミに苦無を挟ませた。
しかし、怪物のハサミの切れ味は凄まじく、根本に入れられた苦無を難なく真っ二つにしてしまった。
「そ、そんな……」
まずい、Zのところに行く前に殺されてしまう。嫌な予感がしたその時、突然目の前で閃光が走った。そして、キン、キン、と金属を弾く音が響く。
目を開けると、おタツを守るようにしてオニキスが剣を握っているのが見えた。
「オニキスさん、どうして……」
「この臭い、他のゾンビよりも喧嘩しがいのある奴の臭いだ。最強狩りの血が騒ぎやがる」
「ダメですわオニキス様。今ここにいる魔物は皆、逆転の呪いにかかっています!倒しても復活してしまいますわ!」
フランはオニキスを止めようと、急いで駆け寄る。しかし、オニキスは振り返らずに「来るな!」と叫び、怪物の頭をはねた。だが、首は逆再生されたビデオのように元の位置に戻り、オニキスの肩に傷を付ける。
するとオニキスは、傷をつけられたのが嬉しかったのか、大声で笑った。
「この痛み!最高に生きてるって感じがするぜ!面白い、テメェとなら死に場所争いすんのも悪くねぇ!」
「オニキスさん、まだ傷も癒えてないのに無茶したら本当に死ぬでありんすよ」
「オニちゃんも死ぬなんて、ウチ見てられへん!」
「うるせぇ!テメェらはさっさと和食屋のとこにでも行ってろ!コイツは俺の獲物だ!」
オニキスは血を吸わせた剣で怪人を押し返し、とっとと失せろ、と顎で指示を出した。
それを聞いたタクマは、オニキスの目を真っ直ぐと見つめたまま頷き、城の門を潜った。
「ちょ、タクマまで!?良いのか?」
「αと互角に戦った奴が、あんなごちゃ混ぜ怪人にやられるか?」
「うむ。タクマ殿の言う通り、アレはオニキス殿を信じて、拙者達はリュウヤ殿を助けに行くでござる」
確かにそうじゃな。メアは吾郎とタクマの言葉で彼の強さを信じることにし、共に城へ攻め込んだ。
「……さてと。オマエ、どれくらい強い?」
2人きりになったオニキスは、改めて怪人に問いかける。すると、先程まで何も喋らなかった怪人は、ガラガラと人間のように笑った。
『ガラガラガラ!オレサマはZ様に作られた最強の用心棒ガラシーザー。貴様のような猿の子など、ざっと3分あれば殺せるなぁ!』
「3分、か。悪いがそれは違うな、ハサミ野郎」
『違うだと?オレサマはZ様の遺伝子を特別に頂いた天才的頭脳の持ち主!オマエのような頭の悪そうな戦闘狂とは違って、計算で間違うことなど絶対にない!』
ガラシーザーはヘビ睨みを効かせながら、ハサミをガチガチと鳴らした。威嚇をしているらしい。
しかし、オニキスにそんなものが効くはずもなく、彼は外国人がやるように両手を上げるジェスチャーをして、ため息をついた。
「確かに、オレは数字ってのが大嫌いだ。特に時計とかはな。ざっくり朝昼晩以外、ちゃんと読んだ事なんて一度もねぇ」
『フン、それがどうした』
「つまり、オマエの計算とやらに間違いがねぇのは確かって事だ」
『自ら認めるか。自分が3分でやられる、と。実に愚か、オマエのような奴、Z様のモルモットにすらなれないぞ!』
「だが、だとしても間違ってんだよ」
そう言うと、オニキスは一瞬の隙も見せずに剣を構え直し、そのままガラシーザーに突撃した。
油断して隙を突かれたガラシーザーは、反撃することもできずに、そのまま肩に斬撃を喰らってしまった。
『き、貴様……!』
「何故なら、オレが3分以上持ち堪えて、テメェを倒すからだ。そうしたら、テメェの計算は間違ったことになる。だろ?」
『そんな事、できるものか……!』
「和食屋かあのバカか忘れたが、言ってたぜ?“やってみなくちゃ分からねぇ”ってな。だからオレも、ホントにそうかやってみるぜ!」
しかし、どれだけ襲われなかったとはいえ、周囲のゾンビ臭はずっと付き纏い、途中で気分を悪くしそうにもなったが、段々慣れてきた。本来慣れるべきではないのだが。
そして、そんなこんなありながらも、遂に目的地に辿り着いた。
「着きました。ここがエントポリス城、かつてこの国を統治する賢人が暮らした場所ですわ」
そう言われて見上げると、そこには無惨にも崩れた白の廃墟があった。雪かきをする者が誰も居ないため、雪が第二の屋根のように積もり、小学生なら絶対に喜ぶであろう極太の氷柱なんかも生え放題になっていた。
それだけではなく、よく見れば屋根雪の中に、ゾンビと思しき何かがビクビクと蠢いているのが見えた。しかし、降り積もった雪が重りとなっているせいか、冷たい雪布団の監獄から抜け出せない。
「なんとも無惨な……痛ましいでござる……」
「住民がゾンビじゃから、魂の気配がないのが唯一の救いじゃよ、全く」
「ゾンビだがサンビカだか知んねぇが、何だかソイツと似たヤベー気配がする。テメェら、気を抜くなよ?」
オニキスはそんな事など気にせず、1人だけ剣を抜いた。するとその時、突然城下町の方で爆発が起きた。
振り返ると、すぐ近くにあった民家の中から、謎の怪人が現れた。
頭はガラガラヘビ、腕はカニのようなハサミ、脚はバッタと、色々な生物を合成させたような見た目をしていた。まさしく、キメラの名を冠するに相応しい。
「な、なんやアレ!気持ち悪い!」
「チッ。ゾンビの次はごちゃ混ぜ怪人かよ!しかも強そうだし」
「っ!まずい来るでありんす!」
おタツは怪物が飛び上がったと同時にクノイチに変身し、怪物のハサミに苦無を挟ませた。
しかし、怪物のハサミの切れ味は凄まじく、根本に入れられた苦無を難なく真っ二つにしてしまった。
「そ、そんな……」
まずい、Zのところに行く前に殺されてしまう。嫌な予感がしたその時、突然目の前で閃光が走った。そして、キン、キン、と金属を弾く音が響く。
目を開けると、おタツを守るようにしてオニキスが剣を握っているのが見えた。
「オニキスさん、どうして……」
「この臭い、他のゾンビよりも喧嘩しがいのある奴の臭いだ。最強狩りの血が騒ぎやがる」
「ダメですわオニキス様。今ここにいる魔物は皆、逆転の呪いにかかっています!倒しても復活してしまいますわ!」
フランはオニキスを止めようと、急いで駆け寄る。しかし、オニキスは振り返らずに「来るな!」と叫び、怪物の頭をはねた。だが、首は逆再生されたビデオのように元の位置に戻り、オニキスの肩に傷を付ける。
するとオニキスは、傷をつけられたのが嬉しかったのか、大声で笑った。
「この痛み!最高に生きてるって感じがするぜ!面白い、テメェとなら死に場所争いすんのも悪くねぇ!」
「オニキスさん、まだ傷も癒えてないのに無茶したら本当に死ぬでありんすよ」
「オニちゃんも死ぬなんて、ウチ見てられへん!」
「うるせぇ!テメェらはさっさと和食屋のとこにでも行ってろ!コイツは俺の獲物だ!」
オニキスは血を吸わせた剣で怪人を押し返し、とっとと失せろ、と顎で指示を出した。
それを聞いたタクマは、オニキスの目を真っ直ぐと見つめたまま頷き、城の門を潜った。
「ちょ、タクマまで!?良いのか?」
「αと互角に戦った奴が、あんなごちゃ混ぜ怪人にやられるか?」
「うむ。タクマ殿の言う通り、アレはオニキス殿を信じて、拙者達はリュウヤ殿を助けに行くでござる」
確かにそうじゃな。メアは吾郎とタクマの言葉で彼の強さを信じることにし、共に城へ攻め込んだ。
「……さてと。オマエ、どれくらい強い?」
2人きりになったオニキスは、改めて怪人に問いかける。すると、先程まで何も喋らなかった怪人は、ガラガラと人間のように笑った。
『ガラガラガラ!オレサマはZ様に作られた最強の用心棒ガラシーザー。貴様のような猿の子など、ざっと3分あれば殺せるなぁ!』
「3分、か。悪いがそれは違うな、ハサミ野郎」
『違うだと?オレサマはZ様の遺伝子を特別に頂いた天才的頭脳の持ち主!オマエのような頭の悪そうな戦闘狂とは違って、計算で間違うことなど絶対にない!』
ガラシーザーはヘビ睨みを効かせながら、ハサミをガチガチと鳴らした。威嚇をしているらしい。
しかし、オニキスにそんなものが効くはずもなく、彼は外国人がやるように両手を上げるジェスチャーをして、ため息をついた。
「確かに、オレは数字ってのが大嫌いだ。特に時計とかはな。ざっくり朝昼晩以外、ちゃんと読んだ事なんて一度もねぇ」
『フン、それがどうした』
「つまり、オマエの計算とやらに間違いがねぇのは確かって事だ」
『自ら認めるか。自分が3分でやられる、と。実に愚か、オマエのような奴、Z様のモルモットにすらなれないぞ!』
「だが、だとしても間違ってんだよ」
そう言うと、オニキスは一瞬の隙も見せずに剣を構え直し、そのままガラシーザーに突撃した。
油断して隙を突かれたガラシーザーは、反撃することもできずに、そのまま肩に斬撃を喰らってしまった。
『き、貴様……!』
「何故なら、オレが3分以上持ち堪えて、テメェを倒すからだ。そうしたら、テメェの計算は間違ったことになる。だろ?」
『そんな事、できるものか……!』
「和食屋かあのバカか忘れたが、言ってたぜ?“やってみなくちゃ分からねぇ”ってな。だからオレも、ホントにそうかやってみるぜ!」
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