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第5章 白熱!アコンダリアトーナメント

第117話 斬鉄!地震と自信と彼女の約束

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「くそっ、体が重い……」
「サテ、ト。貴様ニハ、ココデ退場シテモラオウ」
 
 勝ちを確信したフールは、ドリルで地震を発生させつつ、モーニングスターを縦に振り回し、動けないタクマに狙いを定める。
 しかし、ここでやられてしまえば、約束の言い出しっぺでもある自分がやられてしまえば、ナノやその仲間達を救う事が出来ない。
 そう思ったタクマは、体が上がらないながらも、降りかかってくる重力に逆らって剣を構えた。だが、やっぱり重たい。まるで、ギリギリ持てる重さの丸太をずっと持ち続けてるような重さ。

「死ネ!コピー使イ!」
「ぐはぁっ!」

 真正面から飛んでくるモーニングスターを剣で防いだ。しかし、強力な攻撃であったため、タクマは吹き飛ばされる。しかも、重力が強くなっているせいか、落ちる際にいつもの数倍近くの衝撃が走った。

「……っ。」

 痛いなクソが。口は悪くなるが、そう言いたくなる。しかし、今喋ったら重さで舌が噛みちぎれてしまいそうな気がして、何も言えない。
 タクマは、心の奥底で、次はどう言った攻撃をしようか考えた。まずはあの厄介な地震発生装置だろうドリルを破壊する。まずはそれが先決だ。
 だが、重力攻撃を行なっている間は体が重い。そのせいで機械剣やモーニングスターの攻撃を許してしまう。

「ドウシタ?早クソコカラ起キ上ガレ。ツマラヌゾ?」

 ま、起き上がった所で無意味なんだがね。絶対アイツはそんな事を思っているのだろう。だってそりゃあ、重力でほぼ永久的に行動を封じるチート技を使えるのだ。普通の相手ならば勝ち目なんてものはない。
 いや違う。諦めては駄目だ。とにかく剣を取って立ち向かわなければならない。

「まだまだ……やる……俺は……」

 言葉が所々おかしくなっているが、立ち上がる事に集中した結果なのだから知ったこっちゃない。タクマは剣を突き立て、それを杖代わりにして立ち上がろうとした。
 しかし、そこでタクマはある異変に気付いた。剣がない。

(どこだ!?どこ行った!?)
「愚カナ。貴様ノ剣ハ脅威ト判断シ、私ノ後ロニ置イタ」
「そんな馬鹿な……」

 剣を失った以上、戦うことはほぼ不可能。タクマは肩を落としそうになる。だかその時、フールは何故か、地震を引き起こす事をやめた。
 何でか今考える時間は無駄。タクマは後ろにある剣目掛けて走った。しかし、モーニングスターがフールの周囲を守っているせいで、なかなか近付けなかった。
 タイミング良く入るにしても、常に目の前に鉄球があると錯覚してしまう程速く、入れない。

「けど一か八かッ!」

 しかし、倒す為に手段を選んではいられない。タクマはそのまま突っ切ろうとした。
 だが、やはりその行動は無謀だった。タクマは呆気なく、鉄球の餌食となり、横に飛んで行き、その奥にある細長い木箱にぶつかる。

「イツツ、ん?これって……」

 カランカラン、と言いながら倒れて来たものを見て喜びの声を上げようとする。何故ならそれは、槍だったからだ。
 対価もあり、適正武器でない事から、ちゃんとした攻撃はできないかもしれないが、無いよりはマシだ。

「ソンナ棒ッキレデ、コノ“モーニングスター”ハ、壊セナイ!」
「始まってもないのに決めつけんなッ!」

 タクマは対抗して、槍をバットのように持った。そして、モーニングスターの攻撃範囲まであと1メートルに入った辺りで、タクマは目を瞑る。
 ブン、ブン、ブン。ゆっくりと一周する定期的な風切音が鳴る。タクマはその音を頼りに、槍を振った。
 先端に強い衝撃が走る。だが、跳ね返したような爽快な感覚も感じた。

「貴様、何故コイツヲ跳ネ返セタ……!」
「機械にはない、野生の勘って奴だっ!食らえ!」

 タクマは、そのまま突っ切り、フールの腕のロウ──付け根に槍を突き刺した。そのお陰で、モーニングスターを持つ腕は壊れた。だが、対価により、タクマの肩に、槍が刺さるような激痛が走る。
 機械に痛覚はないから大丈夫かもしれない。そう何処かで思ったのが浅はかだったようで、タクマは歯を食い縛る。

「コレが代償……けど、後で治療すれば!」
「ナッ、剣ヲ取ッタダト!?」

 タクマは剣を引き抜き、すぐさまフールの本体目掛けて振りかざした。だが、そうはさせまいと、機械剣がタクマの侵攻を妨げる。
 
「畜生、半永久的ニ地震発生装置ヲ発動サセラレタラ今頃……」
「やっぱり、クールダウンの為の時間が必要って事か。」
「ソウサ。ダガ、復活迄アト30秒ヲ切ッタ。貴様ノ貧弱ナデクノ棒デハ敵ワヌ!」

 その話を聞いたタクマは、あっと何かに気づく。するとその時、運が良かったのか、フールの剣を避けた時、ポケットから一つ、風弾石がポロリと落ちた。
 その瞬間、タクマの中で、勝利への道が出来上がった。
 風、重力、そしてブレイク達との修行。その三つのビジョンが、今一つとなる。

「3、2、1!冷却完了!退ケッ!」

 鍔迫り合いを繰り広げていたフールは、機械剣でタクマを跳ね返した。だが、タクマはその行動を狙っていたのか、つい笑みが浮かび上がる。

「《ウィンド》!たぁっ!」

 タクマは、地面スレスレの所で、風弾石を使い、風のクッションを生み出した。そして、それを利用し、剣を先に投げ、後からタクマも飛び上がった。
 そう、まだ一度も成功した事のない、天空斬りをやろうとしたのである。

「無意味ダ!叩キ落トシテヤル!」

 そう叫んだフールは、ドリルの地震発生装置を起動させた。その瞬間、体が急激に重くなった。やはり空中でも重力はかかるようだ。だが、それがいい。それでいいのだ。
 
「食ぅらぁえぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 タクマは、体が重い状態でも気にする事なく、剣を掴んだ。そして、そのまま剣を振り下ろし、フールの頭上目掛けて落ちて来た。
 危機を感じたフールは、機械剣を変形させ、盾の形に変化させる。だが、タクマはそのまま突っ切った。そして、タクマはフールの前に落下した。

「ガ……ガガ……」
「《閃の剣・天空斬》」

 タクマは落下した状態のまま、最後に適当に考えた技名を言う。
 すると、フールの体から火花が飛び散り、ゆっくりと真っ二つになった。

「Dr.Z様……申シ訳……ゴザイ……ママママママママママママママ」

 フールは爆発した。バグった最後の言葉を残して。

『しょ、勝負ありぃぃぃぃ!招かれざる選手を討伐し、大会を無事運営できるようにしたのは、タクマ選手!皆様彼に惜しみない拍手をッ!』
「勝った……勝ったぁぁぁぁぁ!」

 勝ったうれしさで、タクマは自然と腕が上がる。そして、腕を上げながら、後ろに倒れ込んだ。
 そして、医療班が持ってきた担架に乗せられ、戦場を後にした。
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