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第3章 食の国、大和の魔王
第64話 旅立ち、別れの握手
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「さて、と。忘れ物とかは無い?」
タクマは荷物を詰めた鞄を持ち、後から付いてくるメアとノエルの二人に呼びかける。
場所は大和竹林へと行く道、玄武の結界岩。そこでノブナガやリュウヤ、おタツ、吾郎の四人が見送る為に集まってくれた。
「バッチリ揃ってますよ」
二人は鞄を一旦地面に置きながら言う。
そしてそんな様子を見ていたノブナガは一歩近付き、自分の胸の部分を探った。
「コイツはワシとの友情の証だ、持っていきたまえ」
ノブナガは言い、胸から出した「馬」と書かれた紙札をタクマに手渡した。
何か意味があるのだろうとは分かってはいるものの、それがどんな使い道があるのか分からないタクマは、反応に困りながらも「ありがとうございます」と礼を言い、受け取る。
「それで、コレは一体……?」
「コイツはこう使うんだ」
そう言うとノブナガはもう一枚の「馬」と書かれた札を取り出し、それを近くの地面に投げる。
するとその札は地面に落ちたと同時に、風雲絵巻に書かれているような雲を発しながら、馬車に変化した。
「な、何じゃこれ!!」
どう言ったタネがあるのか……いや、タネなんて元から無いのかもしれない。
魔法とは違う怪しい力を見て、メアは驚き、転びそうになる。
それを見ていたおタツは、瞬時にメアの後ろに移動し、頭を打つギリギリの所で手を引いた。
「コレはノブナガ様が使える特殊能力、文字化けと言うもので、札に書いたものを一時的に具現化できるものでありんす」
「まぁ、ワシにも何がどうしてこうなるのか、理解できないのだがね」
ノブナガはフフッと笑いながら言う。
そして最後、タクマはもう大和から出ようと、荷物を背負う。
「じゃあ、俺たちはこの辺で」
「お世話になりました」
タクマ達は礼儀正しく頭を下げ、竹林へと足先を向ける。
しかし、歩もうとした瞬間、「待ってくれ!」とリュウヤが呼び止めてきた。
「折角再会出来たんだ、最後くらいコイツ、やろうぜ?」
リュウヤは振り返ったタクマの前で固めた拳を顔の隣に出し、コイツの準備をした。
「そうだな、アイツが教えてくれたアレ、やるか」
そう言ってタクマも、リュウヤとは逆のポーズを取った。
そしてその手を開き、小指が下を向く握手、小指が上を向く握手、拳を同時に合わせ、上から下、下から上に合わせた。所謂、特定の友達とだけ行われる特別なハンドシェイク、それを二人でやった。
「何じゃそれ、どうやってやるのじゃ?」
「私にも教えてください!」
二人のハンドシェイクを見て、メアとノエルは「私にも教えて」と言わんばかりにキラキラした目で二人を見つめる。
それに気付いたタクマは、やれやれとは心の底で思いながらも、さっきやったハンドシェイクのやり方を教えた。
「まずは普通に握手!次に小指を上に向けた握手!そして拳を合わせて、上打って、下!」
「なるほど、これがトモダチの証なのじゃな!?」
「これで私たち、一層仲が深まりましたね」
二人は学んだハンドシェイクを何度も連続でやる。まるで面白い事を教えてもらった子供のようにはしゃぎながら。
それからひと段落つき、タクマ達は改めてお礼を言い、馬車に乗った。
「行き先はその馬が教えてくれる、ソイツの好きなように走らせたまえ」
「じゃあ、元気でやれよ~」
「偶には遊びに来るでありんすよ~」
ノブナガ達は馬車で竹林へと入っていくタクマに手を振る。
それにタクマは「また今度なー!!」と、3人で手を振り返した。
……それから数時間、タクマ達はリュウヤの特製弁当を嗜みながら、馬がただただ歩んでゆく方向を進む。
初めて来た時は骸骨兵士やらが闊歩していた禍々しい竹林が、今となっては太陽の光で黄金に輝く、神聖な場所に思えてくる。
そして、そこにカッコウが鳴く。
「あら、可愛いのぅ」
「スズメか、人懐っこいとはこれまた珍しい」
タクマは馬車の窓に止まり、チュンチュンとさえずるスズメの頭を指で撫でる。
するとそのスズメは、メアやノエルの肩に止まり、何かを伝えるようにさえずる。
するとどこからか、「おーい!」と誰かの呼ぶ声がしてきた。
タクマは何が来たか、二つの寿司を飲み込みながら見る。
するとその竹林の奥からなんと、馬に乗ったリュウヤ達がこちらに走ってくるのが見えた。
「リュウヤ!?」
タクマは驚き、馬車を止める。
そして追い付いたリュウヤは馬から降りて、すぐの再会を喜ぶように笑った。
「へへっ、来ちゃった」
「来ちゃったと言うても、大和は大丈夫なのか?」
へへへと笑うリュウヤに、メアは訊ねる。
するとその後ろに乗っていたおタツが、馬から荷物箱を降ろしながら「実は……」と話を始めた。
【大和】
「行ったでござるな」
タクマが向かって行ったその道をただ寂しそうに見つめるリュウヤを慰めるように、吾郎は言う。
しかし、タクマにはもう新しい仲間が居る。心配はいらない。
「さてさて、コレ全部復興となると骨が折れるなぁ~」
そう心の中で自分に言い聞かせたリュウヤは、目から垂れた涙を親指で拭い、ボロボロになってしまった大和の民家や城を眺める。
「行かなくて、良いのかね?」
ノブナガは、後ろを向いたリュウヤを呼び止めて訊く。
「いや、俺がここ出てったら、飯係が居なくなっちまいますから……」
リュウヤだって、本当は行きたいとは思っている。
だが、今言った通り、リュウヤが居なくなれば飯係が居なくなってしまう。それにエンヴォスの時には頑張れたけど、戦いに長けていない自分が、大切な目標の為に頑張るタクマの力になれる自信がない。
そのためリュウヤは、行きたい気持ちを殺そうとした。
だがその時だった、ノブナガは「人生50年~」と歌い出した。
「人生の中で人が一番輝くのは、己の欲望に正直になっている時だ。ワシも天下布武を目標に走った時は良く輝いとった」
するとノブナガは、リュウヤに向けてこう言った。
「それにお主の美味な飯を大和で独占するより、広めた方が面白かろう?」
「だから好きな時、好きなだけ、好きな事をやるのだ。己の気持ちに正直になりたまえ」
良い事を言ったぜ!と言わんばかりに、ノブナガはぎこちないウィンクをする。
そして、ノブナガに負けまいと、リュウヤから料理の事を教わり上達した大通りの店主達も、店から出て「先生ならいけますぜ」「どーんとダチの所行ってやってくだせぇ」と鼓舞する。
「ノブナガ様……皆……ありがとう!俺、ちょっと準備してくる!」
リュウヤは嬉し涙を流しながら、城の方へと走って行った。
話を戻して大和の竹林
「……てな事があってさ、俺も好きな時に好きな事をやろうと思ってさ」
「ウチはリュウヤさんの行く道なら、例え地獄だろうと付き合うと決めて嫁いだ者、どこでもついて行くでありんす」
「おタツ……」
「お前様……」
二人はタクマ達を置いて、共に手を合わせて見つめ合う。
すると吾郎が、それはさておきと、おタツの降ろした箱を開けて中身を見せた。
するとそこには数えきれないくらいのゼルン金貨が大量に入っていた。
「こ、これどうしたんだ!?」
タクマは大金に目が眩むどころか、ポンと出された大金を見て、逆に目が飛び出るほど驚く。
「旅費として120万渡す、親戚の爺ちゃんからのお年玉と思って使ってくれ。との事でござる」
「120万か、確かにヴェルハラ行きの船代は6人で120万だからちょうどだな。」
タクマは頭の中でそう計算して、呟く。
それよりも疑問に思ったのは、何故そんな大金があるのか。
タクマはその事について訊こうとした。
しかし「あ」と言った辺りで、吾郎がタクマの肩に手を置いて首を横に振った。
「そうそう、金についてはあまり深追いはしないでくれ。とも伝言を預かったでござる」
やっぱり禁句のようだ。
「さて、そんじゃあ俺達も着いてって良いよな?」
「断る、なんて言う筈ないだろ?よろしくな、リュウヤ」
こうして、タクマに新たな仲間、リュウヤ、おタツ、吾郎の3人が加わったのだった。
金色に輝く竹林の中に、二人の握手代わりのハンドサインをする音が響き渡る。
タクマは荷物を詰めた鞄を持ち、後から付いてくるメアとノエルの二人に呼びかける。
場所は大和竹林へと行く道、玄武の結界岩。そこでノブナガやリュウヤ、おタツ、吾郎の四人が見送る為に集まってくれた。
「バッチリ揃ってますよ」
二人は鞄を一旦地面に置きながら言う。
そしてそんな様子を見ていたノブナガは一歩近付き、自分の胸の部分を探った。
「コイツはワシとの友情の証だ、持っていきたまえ」
ノブナガは言い、胸から出した「馬」と書かれた紙札をタクマに手渡した。
何か意味があるのだろうとは分かってはいるものの、それがどんな使い道があるのか分からないタクマは、反応に困りながらも「ありがとうございます」と礼を言い、受け取る。
「それで、コレは一体……?」
「コイツはこう使うんだ」
そう言うとノブナガはもう一枚の「馬」と書かれた札を取り出し、それを近くの地面に投げる。
するとその札は地面に落ちたと同時に、風雲絵巻に書かれているような雲を発しながら、馬車に変化した。
「な、何じゃこれ!!」
どう言ったタネがあるのか……いや、タネなんて元から無いのかもしれない。
魔法とは違う怪しい力を見て、メアは驚き、転びそうになる。
それを見ていたおタツは、瞬時にメアの後ろに移動し、頭を打つギリギリの所で手を引いた。
「コレはノブナガ様が使える特殊能力、文字化けと言うもので、札に書いたものを一時的に具現化できるものでありんす」
「まぁ、ワシにも何がどうしてこうなるのか、理解できないのだがね」
ノブナガはフフッと笑いながら言う。
そして最後、タクマはもう大和から出ようと、荷物を背負う。
「じゃあ、俺たちはこの辺で」
「お世話になりました」
タクマ達は礼儀正しく頭を下げ、竹林へと足先を向ける。
しかし、歩もうとした瞬間、「待ってくれ!」とリュウヤが呼び止めてきた。
「折角再会出来たんだ、最後くらいコイツ、やろうぜ?」
リュウヤは振り返ったタクマの前で固めた拳を顔の隣に出し、コイツの準備をした。
「そうだな、アイツが教えてくれたアレ、やるか」
そう言ってタクマも、リュウヤとは逆のポーズを取った。
そしてその手を開き、小指が下を向く握手、小指が上を向く握手、拳を同時に合わせ、上から下、下から上に合わせた。所謂、特定の友達とだけ行われる特別なハンドシェイク、それを二人でやった。
「何じゃそれ、どうやってやるのじゃ?」
「私にも教えてください!」
二人のハンドシェイクを見て、メアとノエルは「私にも教えて」と言わんばかりにキラキラした目で二人を見つめる。
それに気付いたタクマは、やれやれとは心の底で思いながらも、さっきやったハンドシェイクのやり方を教えた。
「まずは普通に握手!次に小指を上に向けた握手!そして拳を合わせて、上打って、下!」
「なるほど、これがトモダチの証なのじゃな!?」
「これで私たち、一層仲が深まりましたね」
二人は学んだハンドシェイクを何度も連続でやる。まるで面白い事を教えてもらった子供のようにはしゃぎながら。
それからひと段落つき、タクマ達は改めてお礼を言い、馬車に乗った。
「行き先はその馬が教えてくれる、ソイツの好きなように走らせたまえ」
「じゃあ、元気でやれよ~」
「偶には遊びに来るでありんすよ~」
ノブナガ達は馬車で竹林へと入っていくタクマに手を振る。
それにタクマは「また今度なー!!」と、3人で手を振り返した。
……それから数時間、タクマ達はリュウヤの特製弁当を嗜みながら、馬がただただ歩んでゆく方向を進む。
初めて来た時は骸骨兵士やらが闊歩していた禍々しい竹林が、今となっては太陽の光で黄金に輝く、神聖な場所に思えてくる。
そして、そこにカッコウが鳴く。
「あら、可愛いのぅ」
「スズメか、人懐っこいとはこれまた珍しい」
タクマは馬車の窓に止まり、チュンチュンとさえずるスズメの頭を指で撫でる。
するとそのスズメは、メアやノエルの肩に止まり、何かを伝えるようにさえずる。
するとどこからか、「おーい!」と誰かの呼ぶ声がしてきた。
タクマは何が来たか、二つの寿司を飲み込みながら見る。
するとその竹林の奥からなんと、馬に乗ったリュウヤ達がこちらに走ってくるのが見えた。
「リュウヤ!?」
タクマは驚き、馬車を止める。
そして追い付いたリュウヤは馬から降りて、すぐの再会を喜ぶように笑った。
「へへっ、来ちゃった」
「来ちゃったと言うても、大和は大丈夫なのか?」
へへへと笑うリュウヤに、メアは訊ねる。
するとその後ろに乗っていたおタツが、馬から荷物箱を降ろしながら「実は……」と話を始めた。
【大和】
「行ったでござるな」
タクマが向かって行ったその道をただ寂しそうに見つめるリュウヤを慰めるように、吾郎は言う。
しかし、タクマにはもう新しい仲間が居る。心配はいらない。
「さてさて、コレ全部復興となると骨が折れるなぁ~」
そう心の中で自分に言い聞かせたリュウヤは、目から垂れた涙を親指で拭い、ボロボロになってしまった大和の民家や城を眺める。
「行かなくて、良いのかね?」
ノブナガは、後ろを向いたリュウヤを呼び止めて訊く。
「いや、俺がここ出てったら、飯係が居なくなっちまいますから……」
リュウヤだって、本当は行きたいとは思っている。
だが、今言った通り、リュウヤが居なくなれば飯係が居なくなってしまう。それにエンヴォスの時には頑張れたけど、戦いに長けていない自分が、大切な目標の為に頑張るタクマの力になれる自信がない。
そのためリュウヤは、行きたい気持ちを殺そうとした。
だがその時だった、ノブナガは「人生50年~」と歌い出した。
「人生の中で人が一番輝くのは、己の欲望に正直になっている時だ。ワシも天下布武を目標に走った時は良く輝いとった」
するとノブナガは、リュウヤに向けてこう言った。
「それにお主の美味な飯を大和で独占するより、広めた方が面白かろう?」
「だから好きな時、好きなだけ、好きな事をやるのだ。己の気持ちに正直になりたまえ」
良い事を言ったぜ!と言わんばかりに、ノブナガはぎこちないウィンクをする。
そして、ノブナガに負けまいと、リュウヤから料理の事を教わり上達した大通りの店主達も、店から出て「先生ならいけますぜ」「どーんとダチの所行ってやってくだせぇ」と鼓舞する。
「ノブナガ様……皆……ありがとう!俺、ちょっと準備してくる!」
リュウヤは嬉し涙を流しながら、城の方へと走って行った。
話を戻して大和の竹林
「……てな事があってさ、俺も好きな時に好きな事をやろうと思ってさ」
「ウチはリュウヤさんの行く道なら、例え地獄だろうと付き合うと決めて嫁いだ者、どこでもついて行くでありんす」
「おタツ……」
「お前様……」
二人はタクマ達を置いて、共に手を合わせて見つめ合う。
すると吾郎が、それはさておきと、おタツの降ろした箱を開けて中身を見せた。
するとそこには数えきれないくらいのゼルン金貨が大量に入っていた。
「こ、これどうしたんだ!?」
タクマは大金に目が眩むどころか、ポンと出された大金を見て、逆に目が飛び出るほど驚く。
「旅費として120万渡す、親戚の爺ちゃんからのお年玉と思って使ってくれ。との事でござる」
「120万か、確かにヴェルハラ行きの船代は6人で120万だからちょうどだな。」
タクマは頭の中でそう計算して、呟く。
それよりも疑問に思ったのは、何故そんな大金があるのか。
タクマはその事について訊こうとした。
しかし「あ」と言った辺りで、吾郎がタクマの肩に手を置いて首を横に振った。
「そうそう、金についてはあまり深追いはしないでくれ。とも伝言を預かったでござる」
やっぱり禁句のようだ。
「さて、そんじゃあ俺達も着いてって良いよな?」
「断る、なんて言う筈ないだろ?よろしくな、リュウヤ」
こうして、タクマに新たな仲間、リュウヤ、おタツ、吾郎の3人が加わったのだった。
金色に輝く竹林の中に、二人の握手代わりのハンドサインをする音が響き渡る。
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