上 下
33 / 295
第2章 不思議な僧侶と世紀末的砂けむり事件

第32話 リベンジマッチと狂気的なショー

しおりを挟む
【キョーハイ砂漠】
 ズッ、ズッ。大きな足音が砂漠中に響く。どんどん近づいてくる。あの時のゴーレム、奴が再びウォルへの侵攻を試みようとしているのだ。

「やはり、研究に研究を重ねた最高傑作が暴れる様を見ながら嗜む酒。まさに格別、ですネ」

 近くの高台でそれを傍観するZは、αから貰ったワインを嗜みながら、ゴーレムが暴れる様を見て笑う。

「初めて会った時からそうだろうとは思ってはいたが、そこまで趣味が悪い奴だとはな」
「来てくれると信じておりましたヨ、オニキス君」

 招待されたオニキスはZの隣に立ち、そこに置いてあったワインを一気に飲んで座った。
 そして「ショーのパンフレットはまだ受け取ってないが、一体どんな内容なんだ?」と訊いた。

「クックック、このレクイエムの祭典にそんなモノはありません。観客が思い思いに歌うのですからネ」

 Zは虚な目を大きくしながらオニキスの問いに答え、グラスにワインを注いだ。
 オニキスはそれをすぐに飲み干し、グラスを置く。

「さてと、そろそろ本番の始まりですヨ」
「自分で“最高のショー”って豪語したからには、楽しませてくれよ?」

 オニキスはそう言い、主役であるゴーレムを見た。

 ✳︎

「アイツが、お前らが倒したがってた奴か」
「思った以上に大きいね、兄さん」

 メイジュは想像以上のデカさに驚きながら、ブレイクに言う。
 するとブレイクは、メイジュに「でもその分、戦い甲斐があるってモンよ!」と言ってゴーレムの足元へ突っ走って行く。

「妾達も行くぞ、あの時より強くなった事を知らしめてやるのじゃ!」
「えぇ、修行の成果を見せてやりましょう!」

 ブレイクに続いて、タクマ達も気合いを入れてゴーレムの足元に向かう。
 そんなタクマ達に応戦しようと、ゴーレムは巨大な腕で地面を殴りつける。それと同時に、その殴った場所が凍り出した。

「さては、これが砂漠寒冷化の原因だな?」
「ブレイク!ちゃんと前を見るのじゃ!」
「ん?危ねっ!!」

 ゴーレムは、別方向からやって来るブレイクに向けて、《メガ・ウォーター》を放つ。
 ブレイクはメアの忠告のお陰で、咄嗟に回避する事ができ、タクマも指を鳴らして《メガ・ウォーター》をコピーした。

「よし来た、《フリズ》!」
「よしタクマ!俺たちはこっから攻めるぞ!」

 ノエルは《フリズ》で氷の橋を作り上げ、ブレイクはタクマの手を引き、共にその橋を駆け上がる。
 がしかし、ゴーレムの目から飛び出したレーザー光線によって、手まで後一歩のところでその橋を切り落とされてしまう。

「そんな、後一歩なのに……」
「タクマ、絶対に口開けて下見るなよ?」
「え……ブレイクさん!?ちょ、待……あぁぁぁぁぁぁ!!!」

 ブレイクはタクマを軽々しく持ち上げ、ゴーレムの肩あたりに投げ飛ばした。一瞬下を見てみると、ブレイクが落ちていくのが見えた。
 タクマは落ちていくブレイクに心の中で「行ってくる」と言い、そのままゴーレムの肩に乗った。

【ゴーレム 肩】

 ──ブレイクさんなら大丈夫。俺は俺のやるべき事をやる!
 タクマは剣を構えながら、ゴーレムの周りを回る。
 しかしそれと同時に、タクマを狙ってゴーレムの首も回り、赤い一つ目から大量のレーザーを撃つ。

「うおっ!わっ!しつこいっ!!」

 タクマは、ブレイクとの朝練で身につけた反射神経でゴーレムのレーザーを回避し、首のロウとゴーレムの隙を探す。
 だが、何度走ってもゴーレムの首がどこまでも追いかけてくるせいで見つからない。

「これはあまり使いたくないけど、相手は機械、そして威力も高いなら……」

 タクマは、追いかけてくるゴーレムの目に向けて《コピー・メガウォーター》と唱えた。
 すると予想通り、ゴーレムの目が一時的に光を失い、首の裏へ回る事ができた。更に、そこにロウがあった。

「今のうちに、〈閃の剣〉!」

 手応えあり、でも首を完全に切った感じはしない。しかも何かスライダーのような物で滑り落ちているような気がする。
 ガコン!何かが開く音がする。タクマは何が起きたのか、目を開ける。
 するとちょうど、目の前を歩き回っていた目玉型のロボットと目が合ってしまった。

「あ……ちゃす……」

 タクマは何が起きたのか分からず、何故かそのロボットに挨拶をする。

『侵入者発見!侵入者発見!直チニ排除シマス!』
「うるせぇっ!!」
『排除シ……マ……ハイ……シ……』

 何とかすぐに、ゴーレムの中に入ってしまったと気付いたタクマは、気を取り直してロボットを真っ二つに斬った。

「にしても変なとこ入っちゃったな。ケーブルまみれで気持ち悪っ」

 タクマは再び剣を構え、ゴーレムの内部を探索した。



【キョーハイ砂漠 ゴーレムの外】

「《ウィンド》!」

 メイジュは落ちてくるブレイクの下に《ウィンド》のクッションを生み出し、ブレイクを助けた。

「ブレイクさん!タクマさんは……」
「安心しろ!奴ならゴーレムの肩に投げてきた」

 ブレイクは笑顔でグッドサインを出しながらノエルに言い、ゴーレムの右足首に〈閃の剣〉と通常攻撃を当てた。
 すると、それに反撃するかのように、足首から電気の槍らしきものが飛んできた。
 ブレイクはそれを何とか避けたが、頬に掠った事でそこから血が流れる。

「ブレイク!大丈夫か!!」
「あぁ、それより分かった事がある!」

 ブレイクは口をにやつかせながら、頬から流れ出た血を親指で拭う。そして、その分かった事をメア達に伝えた。

「コイツ、硬すぎて俺だけじゃ無理だ」
「そりゃあ、無理じゃろうな。で、策はあるのか?」
「俺が攻撃を与えた後、そこにメアの《ドゥンケル》、ノエルの《フリズ》、そしてメイジュの《フレア》で攻撃を与えてくれ!」
「成る程、剣がダメなら魔法でやれ、という事だね」
「あぁ、分かったらさっさと決行すんぞ!

 ブレイクは3人にそう伝え、今度は左足首に向けて〈閃の剣〉を放ち、その間にメイジュ達は魔力を溜めた。
 その時、足首から電気の槍が飛び出した。

「二度目は効かねぇ!今だっ!!」
「あぁ!」
「行きますっ!!」
「やったるのじゃ!」

 メイジュ達は溜めた魔力を、《ドゥンケル》、《フリズ》、《フレア》に変えて、足首の隙に打ち込んだ。
 すると、そこの装甲が小さな爆発音と共に剥がれ、そこからカラフルな電線などが現れた。

「うへぇ、気色悪い血管です……」
「ようし!次はあっちだ!」

 ブレイク達は言い、また同じように右足の装甲も剥いだ。するとその時、ノエルが急に悲鳴を上げた。

「どうしたノエル!この血管で気分悪くしたか?」
「違います、今ゴーレムの中からタスケテって……」

 ノエルは涙を流しながら言う。
 それを聞いたメイジュは、ノエルの手を掴んで攻撃のチャンスを探しながら、ゴーレムの中の生命反応を調べた。

「本当だ、心臓の辺りに10人くらいの生命反応がある!」
「なんじゃと!?」

 メイジュの発言に、周りの空気が冷たくなった。
 すると、そんな中でブレイクが「だあぁぁぁぁっ!!」と雄叫びを上げた。
 メイジュ達はそちらに振り向く。

「生命反応があろうが、まずはコイツを倒さねぇといみがない!気を取り直して武器を取れっ!!」

 ブレイクは3人を鼓舞し、改めてゴーレムへ突撃した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

【番外編】貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン
ファンタジー
『貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。』の番外編です。 本編にくっつけるとスクロールが大変そうなので別にしました。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

処理中です...