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5 北の王国の流行病
6 流行病 王都へと(6)
しおりを挟む雪が積もった王都には誰も歩いている者はいない。新雪を踏み荒らした跡もなく、真っ新な雪が、ただ積もっている。
アリエーテは起こされ、騎士に馬車から下ろされた。
国境から1週間かかり、やっと到着した。
一面真っ白なそこに人が生存しているのか分からないほど、静寂している。
「もう手遅れかもしれませんね」
時間はお昼過ぎだと教えてもらった。
アリエーテは歩道に上がると、まずは神に祈り、その後で聖女の祈りを捧げた。
この国中に届くような大きな虹が広がった。空気が清浄な物に変わっていく。やはり動きはない。すべての人が亡くなってしまったのかもしれない。
アリエーテの身体が雪の中に倒れた。
騎士が雪の中からアリエーテを抱き上げる。
馬車に載せられ、看護師が至急で用意した昼食を勧めてきた。
「食欲はないかもしれませんが、食べてからお休み下さい」
「……はい」
缶詰に詰められた冷たい食事を食べて、缶詰に詰められた硬いパンを食べる。
味はそれほど悪くはないが、美味しくもない。ただの非常食だ。お茶だけは温かい物を入れてくれた。美味しい紅茶だった。
「身体が温まります」
「どうぞ、ごゆっくり飲んで下さい」
騎士団一行は王宮へ入って行った。残された聖女専属の騎士と警護の騎士が数人、アリエーテの馬車を守っている。
2杯目の紅茶を飲んでいるとき、馬が駆けてきた。分厚いコートを着ている。
「なんだ、おまえは?」
「私はフォルス・カロル・ラディウス公爵でございます。聖女様に祈りを捧げてもらい感謝しております。息子は一緒ではないのでしょうか?」
彼はエスパルダ王国の言葉を話していた。
「レヨンという若者は、疫病にかかり我が国で倒れた。我が国では二次感染はまだ起きていない。この国を清めてからでは、また感染が起きる可能性があるために、この国へ先に赴いた」
騎士が端的に答えた。
「左様でございますか。レヨンは病に倒れたのでございますね。ご迷惑をおかけしました」
フォルスは肩を落とした。
「現在、王宮の中を探索しておる。できれば、合流し案内を頼みたい」
「畏まりました」
フォルスは馬に乗り宮殿の前まで駆けていき馬を繋ぐと、宮殿の中に入って行った。
「もっと感染が軽いうちに、お手紙を下されば良かったのに……」
アリエーテは誰もいない王都を見て思った。
「聖女様、コップをいただきますね」
「ごちそうさまでした」
アリエーテは横になる。まだ聖女の証が熱い。
宮殿の中は静まりかえっている。
先に入った騎士達は、手当たり次第に扉を開けていた。
「騎士様、私はこの国の議員の一人。フォルス・カロル・ラディウス公爵と申します。我が息子がエスパルダ王国で感染を起こし倒れたと聞きました。誠に申し訳ございませんでした。宮殿の中を案内いたします」
「まずは、国王陛下が存命か確かめたい」
「畏まりました」
フォルスは国王陛下の部屋に案内した。寝室を開けると、腐臭がした。
「亡くなっているようだな。奥方はどうだろうか?」
扉をノックして王妃の部屋を開けると、王妃はベッドに倒れていた。
フォルスが脈を診ると生きている。
「こちらは存命のようです」
「皇太子はおられたか?」
「はい、こちらです」
次々に扉を開けて、王家の状態を確認していく。国王陛下以外生きていた。皇太子は17歳だと言っていた。小さな王子や王女も生きている。
「生きていれば、明日には目を覚ますでしょう。聖女様は、亡くなった方はウイルスがまだ残っている可能性が高いので、手袋をして、集めて燃やすようにと言われておりました」
「ありがとうございます」
「フォルス様も聖女の祈りを受けた身でございましょう。一度、自宅に戻りゆっくりお休み下さい。祈りを受けた身は眠くなるそうです。我々は、我が国へと戻り聖女様に清めてもらわなくてはなりませんので、すぐに出発します」
「なんとお礼を言っていいのか分かりませんが、本当に心からお礼を申し上げます」
「この国が落ちついたら、新王から我が国へ手紙を書いて下さい」
「畏まりました」
騎士とフォルスは王宮から出て、幌馬車に向かった。
聖女の馬車の騎士は外で警護をしている。中の状況を話すと、それぞれの馬車に乗り込んだ。フォルスは幌馬車を見送ると、自宅に戻った。
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