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2 奔放なプリューム
6 奔放なプリューム(6)
しおりを挟むまったく厄介ね。
トマトソースの汚れは取れにくい。
汚れを水で流してから、すぐに洗剤で洗ってみたが、色が明るいものだから、綺麗に汚れが落ちない。
漂白剤があればいいけれど、ここは私がいた日本ではないし、漂白剤など知らないとモリーは言う。代用品を考える。……重曹ならひょっとして綺麗になるだろうか?モリーに聞いてみたら重曹はあるらしい。モリーに重曹を持ってきてもらった。重曹を溶かし、ワンピースをつけ置きすることにした。
これで汚れが取れなければ、外には着ていけない。
まったくプリュームは、嫌がらせの天才ね。わざとトマトソースを飛ばしたのは分かっている。私もプリュームに美しいアリエーテの姿を見せようと、美しい洋服に着替え、頭もセットし香水まで付けてプリュームに挑発するような事をしたことは認めるけれど、洋服を汚しに来るとは思ってもみなかったわ。
洗濯桶にぬるま湯を入れてもらい重曹をよく溶かしワンピースの汚れ部分を軽くもみ洗いをして、そのまま重曹に浸けた。
モリーとメリーが不思議そうに見ている。
「これで一晩おきます」
「お嬢様はいつの間にお洗濯の知識まで身につけられたのですか?」
メリーが大きな目をぱちくりさせながら、質問してくる。
「これも浄化よ」
「なるほどでございます」
二人は浄化という言葉で、納得してしまった。
汚れた手を、お風呂場の水道で良く洗う。
「モリー、紅茶を淹れてくださる?メリーは就寝の準備を」
「畏まりました」
その間に、歯を磨き、顔を洗う。洗顔した後は、素早くネグリジェを着て肌のお手入れをする。お風呂の時、マッサージをしてくれるので、寝る前の簡単なものだ。ナイトクリームを塗って、ハンドマッサーをして、髪を綺麗に梳かす。ストレートの髪は、すぐに真っ直ぐに戻る。リボンを片付けて、着ていたワンピースはメリーが陰干ししてくれる。
「お茶が入りました」
「ありがとう」
やっと一息つける。
それにしても、なんで突然プリュームは戻って来たのだろう?
宮殿を追い出されたのか?
両親、特に父の機嫌がすこぶる悪かった。プリュームが何かしでかしたと想像できるが、何をしてきたかまでは分からない。
この国の紅茶は、美味しい。紅茶はリラックス作用があるから就寝前に飲むといいらしい。集中して仕事をする前に飲むのも効果的だとテレビで見たことがあった。この家は、飲み物は水か紅茶の二択のようで、いつも紅茶をいただいている。
せっかくリラックスしているのに、扉がノックされた。
タクシスなら可愛いからいつ来ても許せるけれど……。
「アリエーテお姉様、お部屋に入ってもいいですか?」
訪ねてきたのは、プリュームだった。
「眠ろうと思っているの」
「ほんの少しで構いませんわ」
私はモリーを見つめ、頷いた。
モリーが扉を開けると、まだ着替えもしていないプリュームが部屋に入ってきた。
「何の用かしら?」
「アリエーテお姉様は、どこにお務めになっていらっしゃるの?」
「いつも洋服を買うお店よ」
「ちょうど良かったわ。私、ウエディングドレスが欲しいの」
「お店で注文なさったらいかが?」
「謹慎処分で、家から出てはいけないと言われているの」
「何をしてきたの?」
「それは……」
「話せないことをしてきたの?」
「はい。家の恥だと言われましたわ。私も反省しているのです」
「イグレシア王子に何かしたの?」
「ごめんなさい」
「何をしてきたの?」
「お姉様には言えません」
「言えないのなら、部屋から出て行ってください。お話はありませんので」
プリュームは部屋から出て行こうとして、俯いていた顔を上げて綺麗に微笑んだ。
「私、好きな人ができたんです。イグレシア王子様はお姉様にお返しします」
プリュームは軽やかに部屋から出て行った。
私の体の奥でさざめきが起こった。
心を閉じたアリエーテが、イグレシア王子の名前に反応した。心の奥底で心配している。
私はガウンを羽織ると、部屋を出て、両親の部屋の扉をノックした。
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