【完結】拾った皇子と時空を超える。魔力∞でも、恋愛は素人なの

綾月百花   

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第五章   

5   三日後

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 フラウムは無心で本を読んでいた。最後まで読み終えた瞬間、体に異変が起きた。


「あああっ」


 本を机に置き、体も机に預けるように掴まる。

 体の中を熱い物が流れていき、静かに収まった。


「あら、なんだったのかしら?」


 フラウムが立ち上がると、目の前にユラナスが立っていた。


「神聖魔法の世界はどうだった?」

「治癒魔法が主なのね。勉強になったわ。攻撃魔法もあるのね。なんだか、無敵になったような気がするわ」

「そうか」


 ユラナスは、僅かに笑った。


「其方の細胞は神へと変わったのだ」

「細胞が変わったの?神様?細胞が変わったのは嬉しいわ。わたくしは父の細胞など一欠片も欲しいとは思ってはいないのよ。でも、神様にならなくてもいいのよ」

「欲のない人間だな。死は訪れないであろう。力も無限にある」

「シュワルツと一緒に歳を取って行くことは嬉しい事よ」

 フラウムは、勝手に神にされて怒っていた。

「神聖魔法を学びたかったのだろう?学んでも、神に誰もがなれるわけではない。その体に、魔力が宿り、神へと選ばれたのではないか」

「元の体に戻して」

「それはできぬ。わしは神だ。同類と言ったであろう」

「神様だなんて聞いてないわ。ドラゴンと契約したのよ」

「天上に住むドラゴンは、神だ」


 フラウムは、ユラナスの顔をじっと見た。


「一つ、方法があったであろう?」


 フラウムは考える。学んだ事で忘れていることあっただろうか?

 あった。


「分かったわ、一人だけ、無死にできるのね?」

「慎重に決めなさい。一生、供に暮らすことになる。相手が裏切れば、其方は一人で過ごすことになる」

「分かったわ」

「約束の三日だ。送っていくか?」

「お願いします」

「では、参ろう」


 ユラナスはフラウムをエスコートしてくれる。


「何か食べていくか?三日何も口にしてなかったであろう」

「そう言われれば、お腹が空いたわ」

「そうであろう」


 ユラナスは、何かをまたぐと、ダイニングルームだった。

 大きなテーブルに食事が並んでいる。

 ユラナスが椅子を引いてくれた。


「ありがとう」


 ユラナスは遠く離れた椅子に座った。

 白い人が給仕をしてくれる。

 お肉をとりわけ、スープやサラダを分けてくれる。


「さあ、食べなさい」

「いただきます」

 
 フラウムはサラダから順に食べていく。サラダもスープもお肉も全て美味しい。


「味は気に入ったか?」

「はい、とても美味しいです」

「一つ、言っておこう。伴侶が心変わりを起こしたら、殺すがいい。情はかけるな」

「どうして?」

「その者は、自分の力で無死になったわけではない。いずれ、自滅していく。その姿が見たければ生かしておくことだ。だが、哀れだぞ」

「ユラナスに伴侶はいないの?」

「裏切った。生かしておったが、ただ自由に長生きしているだけだ。男と逢瀬を繰り返し、終いには、ドラゴンに食べられて終えたぞ。無残に死にゆく姿を見るのは悲しい。万が一、一人になったら、天上に来るがいい。フラウムとなら楽しく過ごせそうだ」

「シュワルツは心変わりなど起こさないわ」

「そうであるといいな」


 食後の紅茶を出されて、それをゆっくり飲む。


「でも、ありがとう。ユラナスが寂しいと思ったときは、お茶に誘ってください。シュワルツと一緒に来るわ」


 ユラナスは、微笑んだ。


「それは楽しみだ。茶を飲んだら、行くか?」

「はい」


 白い人が椅子を引いてくれた。

 お辞儀をすると、白い人もお辞儀をした。

 ここは神の国だから、神に口をきけないのだろう。

 ユラナスが手を引いてくれる。

 宮殿の外に出ると、ユラナスは大きなドラゴンに変わった。

 そっと首を下げてくれる。そこにフラウムは上った。


「では行くぞ。それで、どこに飛ぶ?」

「シュワルツの宮廷にお願いします」

「しっかり掴まっていなさい」

「はい」


 ユラナスは大きく伸びをすると、大きな翼で羽ばたいた。

 天上から、もうシュワルツの宮廷が見える。

 宮廷の陰に降りると、ユラナスは、フラウムを地上に降ろしてくれた。


「では、またな」


 ユラナスの姿は消えた。
 
 フラウムは自分の姿を消した。それから、宮廷の中に入って、シュワルツの執務室に歩いて行った。


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