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第二章
11 襲撃
しおりを挟む最後の宿場町に到着すると、素早く扉がノックされ、開けられた。
「お疲れ様でした」
「夜遅くなりましたが、すぐに食事にいたしましょう。お部屋に食事を運ばせます。まずは宿屋にお入りください」
シュワルツの側近のエスペル・ノアとケイネス・リザルドルフが、順に話し、シュワルツは馬車を降りて、フラウムに手を差し伸べた。
その瞬間、シュワルツを狙った矢がシュワルツとフラウムの間を引き裂いた。
「フラウム、馬車の中で背を低くしていろ」
「シュワルツ」
シュワルツは剣を抜き、暗闇の中で矢を打ち払っている。
エスペル・ノアとケイネス・リザルドルフもシュワルツを守るように、前に出た。
「襲撃だ!」
一緒に行動してきた騎士達は、抜刀し、シュワルツと一緒に矢を打ち払う。
矢に打ち抜かれた騎士が倒れる。
暗闇で、こちらは狙い撃ちされている。
劣勢だ。
「障壁」
フラウムは、味方の周りにバリアを作った。
矢はその壁に邪魔をされて、中に入れない。
その間に、シュワルツ達は敵の位置を把握した。
矢が通用しないと分かると、敵は宿場町に火を放った。
そこら辺で火災が発生して、宿屋から人があふれ出てくる。
「シュワルツ皇子、すぐに馬車へ」
「怪我人は馬車に乗せてくれ」
「かしこまりました」
エスペル・ノアが、騎士に指示を出している。
「怪我人を収容し、すぐに出発だ」
馬車はまた走り出した。
人でごった返しになった、そこを通り抜けるときに、また矢を放たれた。
馬車を突き抜け、矢が馬車の中まで貫通する。
御者が撃たれたのか、馬車が止まった。
「やられたか」
すぐにシュワルツは馬車の扉を開けた。
「フラウム、降りるぞ」
「はい」
フラウムは、咄嗟にブランケットを掴んだ。
外は冷える。
それに、フラウムは村娘のワンピースに外套を着ているが、シュワルツは美しい正装にコートを着ている。
シュワルツの姿は目立つのだ。
馬車の外の出ると、周りは火の海で、馬は暴れて走り出し、騎士達は、矢の襲撃に遭っていた。
「皇子、お逃げください」
エスペル・ノアの声がした。
「フラウム、行くぞ」
「シュワルツ、毛布をかぶって」
「寒いなら、フラウムが……」
「目立つから」
シュワルツは暗い色のブランケットを頭から被って、フラウムの手を握った。
フラウムは外套の帽子を被ると、見えなくなる魔法をかけた。
火花が散る中、走って行く。
宿場町を抜けて、振り返ると、街が真っ赤に燃えていた。
走って息が苦しげなフラウムの手を繋ぎ、シュワルツはフラウムの呼吸が整うまで待って歩き出した。
「ここからは、徒歩だ」
「ええ」
雪がチラチラ降ってきた。
冷えた道を二人で歩いた。
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