【完結】拾った皇子と時空を超える。魔力∞でも、恋愛は素人なの

綾月百花   

文字の大きさ
上 下
17 / 48
第二章

11   襲撃

しおりを挟む

 最後の宿場町に到着すると、素早く扉がノックされ、開けられた。

「お疲れ様でした」

「夜遅くなりましたが、すぐに食事にいたしましょう。お部屋に食事を運ばせます。まずは宿屋にお入りください」

 シュワルツの側近のエスペル・ノアとケイネス・リザルドルフが、順に話し、シュワルツは馬車を降りて、フラウムに手を差し伸べた。

 その瞬間、シュワルツを狙った矢がシュワルツとフラウムの間を引き裂いた。

「フラウム、馬車の中で背を低くしていろ」

「シュワルツ」

 シュワルツは剣を抜き、暗闇の中で矢を打ち払っている。

 エスペル・ノアとケイネス・リザルドルフもシュワルツを守るように、前に出た。

「襲撃だ!」

 一緒に行動してきた騎士達は、抜刀し、シュワルツと一緒に矢を打ち払う。

 矢に打ち抜かれた騎士が倒れる。

 暗闇で、こちらは狙い撃ちされている。
 劣勢だ。

「障壁」

 フラウムは、味方の周りにバリアを作った。

 矢はその壁に邪魔をされて、中に入れない。

 その間に、シュワルツ達は敵の位置を把握した。

 矢が通用しないと分かると、敵は宿場町に火を放った。

 そこら辺で火災が発生して、宿屋から人があふれ出てくる。

「シュワルツ皇子、すぐに馬車へ」

「怪我人は馬車に乗せてくれ」

「かしこまりました」

 エスペル・ノアが、騎士に指示を出している。

「怪我人を収容し、すぐに出発だ」

 馬車はまた走り出した。

 人でごった返しになった、そこを通り抜けるときに、また矢を放たれた。

 馬車を突き抜け、矢が馬車の中まで貫通する。

 御者が撃たれたのか、馬車が止まった。

「やられたか」

 すぐにシュワルツは馬車の扉を開けた。

「フラウム、降りるぞ」

「はい」

 フラウムは、咄嗟にブランケットを掴んだ。

 外は冷える。

 それに、フラウムは村娘のワンピースに外套を着ているが、シュワルツは美しい正装にコートを着ている。

 シュワルツの姿は目立つのだ。

 馬車の外の出ると、周りは火の海で、馬は暴れて走り出し、騎士達は、矢の襲撃に遭っていた。

「皇子、お逃げください」

 エスペル・ノアの声がした。

「フラウム、行くぞ」

「シュワルツ、毛布をかぶって」


「寒いなら、フラウムが……」

「目立つから」

 シュワルツは暗い色のブランケットを頭から被って、フラウムの手を握った。

 フラウムは外套の帽子を被ると、見えなくなる魔法をかけた。

 火花が散る中、走って行く。

 宿場町を抜けて、振り返ると、街が真っ赤に燃えていた。

 走って息が苦しげなフラウムの手を繋ぎ、シュワルツはフラウムの呼吸が整うまで待って歩き出した。

「ここからは、徒歩だ」

「ええ」

 雪がチラチラ降ってきた。

 冷えた道を二人で歩いた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】白い結婚はあなたへの導き

白雨 音
恋愛
妹ルイーズに縁談が来たが、それは妹の望みでは無かった。 彼女は姉アリスの婚約者、フィリップと想い合っていると告白する。 何も知らずにいたアリスは酷くショックを受ける。 先方が承諾した事で、アリスの気持ちは置き去りに、婚約者を入れ換えられる事になってしまった。 悲しみに沈むアリスに、夫となる伯爵は告げた、「これは白い結婚だ」と。 運命は回り始めた、アリスが辿り着く先とは… ◇異世界:短編16話《完結しました》

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...