【完結】拾った皇子と時空を超える。魔力∞でも、恋愛は素人なの

綾月百花   

文字の大きさ
7 / 48
第二章

1   テールの都へ

しおりを挟む
 朝食を終えると、家の周りにかけていた魔法を全て解除した。

 そうしなければ、迎えが来ないことは分かっていた。

 食器を洗い、布巾で包むと、いつでも帰ってきて、住めるように部屋の中を整えていった。

 ベッドの上にもシーツを掛けた。

 その徹底ぶりを見て、シュワルツは「ここに戻るつもりなのか?」と訊いた。


「分かりません」


 早朝の村に行って、薬の販売を辞めることを告げた。


「割合か?5割はもらいすぎだったかもしれぬ。2割でもいい、薬は置いて欲しい」

「ここを離れることになりました。今ある薬は置いておきます。また戻ることがあれば、またよろしくお願いします」

「出て行くのか?」

「都まで旅に出ます」

「そうかい。気をつけていくんだよ」

「はい」


 フラウムは、売り上げをもらい、新しい薬を置いて店を出た。

 またここに住む日が来たときに、善くしてもらえばいい。

 自宅に戻ると、家の近くに立派な馬車が止まっていた。

 帝国騎士団の制服を着た男性が6人ほどいた。

 皇太子の護衛には、少ないように感じたが、皆、背が高く、帯剣していた。

 家に帰るのが怖くなる。

 馬車の手前で、動けなくなっていると、美しく正装を着たシュワルツが、フラウムを迎えに来た。


「どうした?我が家に入るのも不安になったか?」

「ええ、なんだか怖くて……シュワルツ皇子殿下、別人のようですわ」


 シュワルツは眉を顰めた。


「私に敬称は必要ない。今まで通り、あなたでも、シュワルツとでも呼んでくれ」

「……けれど。不敬で処罰されますよ」


 またシュワルツは眉を顰めた。


「フラウムに何か物申す者があれば、すぐに言うがいい。フラウムは私の命の恩人だ。それに、私の愛する者だ。誰が文句を言うか」


 シュワルツはフラウムを家の中に連れて行った。

 フラウムは旅行鞄に賃金を片付ける。今日は手数料を2割で計算してくれた。

 今日入荷分は、ここに戻ってくるか分からないので、何も言わなかった。

 暖炉の火は消されていた。

 シュワルツが消してくれたのだろう。

 水瓶の水は、転移魔法で小川に流した。シーツで埃が入らないように片付ける。


「荷物は二つで構いませんか?」

「はい」


 騎士が荷物を運び出した。

 後は施錠するだけだ。

 外套を着ると、フラウムは最後に部屋を回って、きちんと施錠を確認して、最後に玄関の扉に鍵をかけた。


「フラウム様、よくご無事で。三年前に行方不明になり、皇妃様はたいそう心を痛めておいででした」

「皇妃様にお詫びをしなくては」

「お顔を見せられたら、皇妃様も喜ばれるでしょう」

「ありがとうございます」

「私どもは、皇太子殿下の従者、エスペル・ノアと申す。隣におるのが、同じく側人のケイネス・リザルドルフと申す」

「よろしくお願いします」


 フラウムは淑女の礼をした。

 平民のワンピース姿では、様にならないけれど……。


「では、馬車にどうぞ」

「フラウム、行くぞ」

 シュワルツはフラウムの手を握ると、馬車まで歩いて行く。

 少し足を引きずるフラウムを見て、村まで一人で行かせた事を悔やんで、華奢な体を抱き上げた。


「足が痛むのであろう」

「これくらいは平気よ。治癒魔法をかけるほどでもないわ」

「甘えればいい」


 頬に頬を寄せられ、フラウムは真っ赤になり硬直した。

 騎士達が拍手をしている。その間を抱きかかえられながら、馬車まで連れて行かれた。

 椅子に座ると、昔を思い出す。

 毎日、この馬車に乗せられ、お妃教育に向かっていたことを……。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【完結】教会で暮らす事になった伯爵令嬢は思いのほか長く滞在するが、幸せを掴みました。

まりぃべる
恋愛
ルクレツィア=コラユータは、伯爵家の一人娘。七歳の時に母にお使いを頼まれて王都の町はずれの教会を訪れ、そのままそこで育った。 理由は、お家騒動のための避難措置である。 八年が経ち、まもなく成人するルクレツィアは運命の岐路に立たされる。 ★違う作品「手の届かない桃色の果実と言われた少女は、廃れた場所を住処とさせられました」での登場人物が出てきます。が、それを読んでいなくても分かる話となっています。 ☆まりぃべるの世界観です。現実世界とは似ていても、違うところが多々あります。 ☆現実世界にも似たような名前や地域名がありますが、全く関係ありません。 ☆植物の効能など、現実世界とは近いけれども異なる場合がありますがまりぃべるの世界観ですので、そこのところご理解いただいた上で読んでいただけると幸いです。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

老伯爵へ嫁ぐことが決まりました。白い結婚ですが。

ルーシャオ
恋愛
グリフィン伯爵家令嬢アルビナは実家の困窮のせいで援助金目当ての結婚に同意させられ、ラポール伯爵へ嫁ぐこととなる。しかし祖父の戦友だったというラポール伯爵とは五十歳も歳が離れ、名目だけの『白い結婚』とはいえ初婚で後妻という微妙な立場に置かれることに。 ぎこちなく暮らす中、アルビナはフィーという女騎士と出会い、友人になったつもりだったが——。

捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~

水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。 彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。 失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった! しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!? 絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。 一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。

処理中です...