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第六章

4   モモの結婚式

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 チェリーに赤ちゃんが生まれて、チェリーは乳母も付けずに、自分で母乳を与えて育てると言い出した。

 その事により、私の結婚式は想像以上に待たされた。

 プロエレシフ王子が1歳を迎えたが、すぐに卒業式が行われるので、この際、学校を卒業したらどうだとラウ様に言われて、私はちゃんと学校を卒業した。

 もうなんの障害もなく結婚式が迎えられるわ。

 私の結婚式は、街の教会で身内だけでこっそり行われた。

 ラウ様が王宮にいないことで、王宮や王太子の護衛が手薄になるためだ。

 たった1日休むだけでも、騎士団の配置が換わるらしい。

 チェリーが、チェリーの赤ちゃんを連れてきたので、護衛の騎士達がぞろぞろ来ている。

 アスビラシオン様も一緒に来てくれたので、騎士の数も半端ではない。

 久しぶりに見るチェリーは、美しく、すっかりお母さんの顔をしている。

『僕』と呼んでいた呼び名が『わたし』に変わっていることに驚いた。

 私と交代しているときは、『わたし』と自分の事を呼んでいたけれど、自分の意思で『わたし』と呼ぶようになったのは、我が子の母親としての目覚めだろうか?

 洋服も燕尾服ではなくドレスを着ている。

 桜色をしたドレスは豪華で、私はその美しさに目を奪われた。

 子供産んでも、私よりウエストが細くて、白銀の髪は綺麗に結い上げられていた。

 両親は私の結婚式より、チェリーの赤ちゃんに夢中になり、『天使だわ』と声を上げている。

 確かに、少し歩けるようになったプロエレシフ王子は、綺麗な金髪で、瞳までとろけそうな黄金色。まるでアスビラシオン様を小型化した姿をして、片言に、「ママ」「パパ」と二人の事を呼んでいる。その姿は、教会の天井に描かれた天使より愛らしく、ついつい目で追ってしまう。

 けれど、今日の主役は、モモモーニアである私よ。

 今日の為に、美しいウエディングドレスも用意して貰った。

 シンプルだけど、美しいシルエットをしているのよ。

 ラウ様の妹のメアリーは「素敵!」と言って、私に抱きついてきた。

 彼女のお腹もいつの間にか、ふっくらしている。

 コンスルタと仲良く暮らしているのだろう。

 コンスルタは学校に残ったが、メアリーは結婚と同時に学校を退学して、自宅とコンスルタの家を行ったり来たりしていた。

 最近、ラウ様のお宅にお邪魔しても、メアリーの姿がなくて、少し寂しく思っていた。

 きっと私を驚かせようとしたに違いない。

「モモ、そろそろ時間だ。教会に行くぞ」

「はい、ラウ様」

 いよいよ、私の結婚式が行われる。

 ジミ婚だけど、愛さえあれば、そんなこと気にならないわ。

 私とラウ様は、神父の前まで進むと、同時に招待客が教会の質素な椅子に座る。

 アスビラシオン様とチェリーが最前列に座って、チェリーの赤ちゃんのプロエレシフ王子は付き人が抱っこしている。

 その側には騎士達が集まり、教会の入り口や外まで警護している。

 ラウ様は警護の様子に満足したのか、やっと私を見てくれた。

 神父の前で愛を誓って、口づけを交わす。

 触れるだけの優しいキスだが、これでやっと二人は夫婦だ。

 拍手で私達は祝福された。

「あうあう」と喃語が聞こえる。

 プロエレシフ王子には、きっと退屈なのだろう。

 付き人の腕の中から、チェリーに手を伸ばしている。

 チェリーはぐずりだしたプロエレシフ王子を抱き上げて、宥めている。

 私達は皆の前でお辞儀をした。

 教会の外へと歩いて行く。

 参列者が、私達の後から外に出てくる。

 教会の外は庭園になっている。

 これから、ちょっとしたパーティーが開かれる。

 ガーデンパーティーは、ラウ様と我が家のシェフ達が協力をして、小規模のパーティー会場を作っていた。

 招待客に両親達と一緒に頭を下げる。

 立食パーティーになっているので、皆、それぞれに食事を楽しみながら、私達に話かけてくれる。

 まだ教会の出入り口に騎士達が、警護している。

 チェリー達は、まだ教会の中にいるようだ。

 ぐずっていたから、プロエレシフ王子がおねむなのかもしれない。

 ずいぶん経ってから、チェリーとアスビラシオン様が出てきた。

 プロエレシフ王子は付き人に抱かれている。

 やはりおねむの時間だったようだ。

 警護の騎士達もパーティー会場に移動してきた。

 ラウ様は私達の結婚式なのに、まるで警護をしているみたいに、視線は辺りを見ている。

 こういう所は、ゲームとは違うんだよね。

 ゲームの中のラウ様は、私しか見ていなかったから。

 ちょっと嫉妬してしまう。

 チェリーとアスビラシオン様が帰ったら、私だけを見てくれるかしら。

 そう思っていたら、アスビラシオン様がチェリーをエスコートして、私達の前までやって来た。

「今日はおめでとう。しばらく休んで、新婚生活を堪能してくれ」

 アスビラシオン様はラウ様に休暇を与えた。

「ありがとうございます」

 ラウ様は恭しく、お辞儀をする。

 私も急いでお辞儀をする。

「モモ、おめでとう。やっとラウ様と一緒になれるんだね。幸せにね」

 チェリーは私とそっくりな顔で、眩しいほど爽やかに言葉を発する。

「ありがとう。チェリー。殿下も、今日は参列ありがとうございます」

「どうぞ、お幸せに」

 アスビラシオン様は、こちらも眩しいほど爽やかに言葉を発する。

「ラウ、我々は先に王宮に戻ることにする。どうか楽しんでくれ」

「はい。お気を付けて」

 ラウ様は騎士の礼をした。

 部下への配慮だろうか?

 チェリーは昔と変わらず、私に手を振って、パーティー会場から出て行く。

 大勢の騎士達も警護して移動していく。

 アスビラシオン様とチェリーとプロエレシフ王子を抱いた付き人は、馬車に乗り込んだ。

 馬車が走り出すと、馬に乗った騎士達が馬車を護衛しながら立ち去っていく。

 無事に馬車を見送ったラウ様は、やっと私を見てくれた。

「殿下が気を遣ってくれたのだろう」

 私は頷く。

 アスビラシオン様は、ラウ様を大切にしている。

 自分たちが側にいる限り、ラウ様は仕事意識から離れられないと思ったのだろう。

「お休みがもらえて、良かったですわ」

「そうだな?だがしかし、俺はアスビラシオン様の側人だ。俺が留守にしている間に、他の誰かに奪われるのかと思うと心配でならない」

 どこまでも、忠実な付き人のようだ。

「心配しすぎですわ」

 アスビラシオン様の付き人は、いつもラウ様だった。

 それはどんなストーリーを進めても変わらなかった。

 だから、この先も変わらないだろう。

「今日くらいは忘れて、私だけ見ていてくださいな」

「そうだな」

 アスビラシオン様が帰った事で、招待客達がリラックスしているのが分かる。

「ご配慮、ありがいたい」

 ラウ様は、私を連れて、私を紹介するために歩き出した。
 
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