おとこの娘の恋愛事情

第三章

9 宮殿では

☆

　ラクイナミューネ様が宮殿を出て行かれて、そろそろ1ヶ月が経つ。

　おれは毎日の日課で、早朝に窓から私服騎士団が、街に出かけていくのを見ている。

　ラクイナミューネ様の行方は、まだ見つからない。

　身につけていたワンピースが、街の市場で売り出されているのを発見されたけれど、情報はそれだけみたいです。

　ワンピースはずいぶん高額な値段が付けられていたようです。

　そのワンピースの売り手を調べたら、街の酒場の奥方さんに行き着き、事情を聞き取ったらしいです。

　たった1日、酒場で働いた……そう言ったそうです。

『よくしてやったのに、夜に逃げるように出て行きました』と答えたと報告された。

　なんだか悪い予感がする。

　見た目は女の子のように見えるようになってしまうから……。

　すっと自分の姿を見下ろす。

　俺は見た目は女の子に見える。

　ラクイナミューネ様の姿を見たことがないから、なんとも言いようがないけれど、きっと美しい姿をしているじゃないかと思う。

　もしかしたら、酒場で襲われてしまったとか？

　夜に逃げるように出て行ったことが異常に思えてならない。

　市民が住むエリアは、日が暮れると真っ暗になってしまう。夜会の後に街を通ったことがあるけれど、暗闇が続いていた。

　そんな暗闇の中を逃げ出さなければならなくなった状態に遭ってしまうなんて……。

　おれならきっと、逃げ出すこともできなくて、襲われてしまうような気がする。

　男の陰茎を受け入れると、女性器が溶けてしまう呪いのような膣に、挿入した者はいなかったようなので、最悪な事態は起きていないと願わずにいられない。

「チェリー、お風呂に入るよ」

「うん」

　おれは毎夜、アスビラシオン様に愛されて、濃厚なミルクを大量に注ぎ込まれている。

　作られた女性器とおれのお尻に。

　同じくらい愛さなければならないと、おれを愛しているか疑われてしまうと言って、アスビラシオン様は初夜と同じように、おれの体を翻弄してくる。

　誠実なアスビラシオン様に愛されているおれには、きっとラクイナミューネ様の苦悩を全て分かることはできないと思うけれど、同じ体にされた身としては、ラクイナミューネ様と話がしてみたい。

　早く発見されるといいと思う。