幼馴染みの彼と彼

綾月百花   

文字の大きさ
上 下
64 / 67

64

しおりを挟む
 
 自宅に戻って、俺は朝霧さんに電話をしてお礼をした。
 朝霧さん達は、毎日、我が家に来て、夕食パーティーをしてくれたようだった。
 落ち込む篤志に、俺の洋服を買ってやれと軍資金も出してくれたようだ。
 毎日、篤志と菜都美はデパートに出かけて、俺の服選びをして、帰宅したら早速、風呂に二人で入って、夕食は皆でわいわい騒ぎながら食べて、遊んで、菜都美は俺のいなかった間、ぬいぐるみに触れる時間もないほど遊んでもらって、寝落ちしていたらしい。
 篤志は寂しかったと言ってくれた。
 夜は俺と同じで、写真を見て過ごしていたと言った。
 俺と篤志は似たもの同士なのだと思った。例えるならば比翼の鳥だと思った。
 一人では飛べない。二人揃って、初めて幸せだと思えるのだ。
 だから、篤志は円城寺先生にお願いしたと話してくれた。
 父には母がいる。どんなに考え方が違っていても、二人で兄の自慢話をしていればいいと言っていた。
 篤志は会社の中枢を作り出すことができるプロのプログラマーだ。
 俺と一緒に研究をしていた時は、ワクワクするほどの経験をさせてもらった。
 篤志が卒業した俺には、篤志と一緒にやって来た分野を一人で開拓することが難しくなった。だから、真新しいわんこの研究を始めた。
 賞の数では勝ったけれど、篤志と研究をしていたときのような神秘的な研究は少なかった。
 年内に届くと言われていたぬいぐるみは、菜都美の1才の誕生日まで隠しておくことにしたと篤志に聞いた。
 それでいいかと確認されたが、このゴタゴタしたときに、菜都美に渡しても喜ばないと俺も思った。
 大きなぬいぐるみは、それとは分からないように包装されていたようだったので、俺の部屋に置いたと聞かされた。
 篤志の判断は間違っていないので、篤志が考えた通りにすることにした。
 俺は正月休みの間、寝正月で過ごした。
 明日から仕事だという日に、病院に行って検査をしてもらった。
 結果は再出血はないことがわかり、頭の抜糸もしてもらった。今度は具合が悪くなった時に受診してくださいと言われて、病院の鎖は外れた。
 病院の帰りに初詣に行って、一年を祈願してもらった。
 菜都美は9ヶ月になった。
 ちょっとお姉さんになったけれど、まだ9ヶ月だ。
 泣くときは、「んぱんぱふえん」と泣くけれど、俺のことはパパと呼ぶ。
 あっちゃんもパパだよと教えると、あっちゃんパパと呼ぶようになった。
 9ヶ月の菜都美に、今は俺の名前を教えた。
 簡単な名前だから、直ぐに覚えた。「しんぱぱ」と菜都美は呼ぶ。
 菜都美にはパパが二人もいるんだよと、教えている。
 素直な菜都美は、それで納得している。
 いつか母親がどうしていないのかと疑問に思う日が来ると思うが、その時は嘘の話ではなく、真実を話そうと二人で相談した。
 その時は悲しむかもしれないけれど、俺も篤志も全力で菜都美を愛してる。
 菜都美には愛してくれていたママがいて、もう一人本当のパパもいた。
 おじいちゃんもおばあちゃんもいたことを、話して、写真を見せようと思った。
 菜都美の心が不安定になっても、俺達が必ず支えると誓い合った。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

処理中です...