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しおりを挟む自宅に戻って、俺は朝霧さんに電話をしてお礼をした。
朝霧さん達は、毎日、我が家に来て、夕食パーティーをしてくれたようだった。
落ち込む篤志に、俺の洋服を買ってやれと軍資金も出してくれたようだ。
毎日、篤志と菜都美はデパートに出かけて、俺の服選びをして、帰宅したら早速、風呂に二人で入って、夕食は皆でわいわい騒ぎながら食べて、遊んで、菜都美は俺のいなかった間、ぬいぐるみに触れる時間もないほど遊んでもらって、寝落ちしていたらしい。
篤志は寂しかったと言ってくれた。
夜は俺と同じで、写真を見て過ごしていたと言った。
俺と篤志は似たもの同士なのだと思った。例えるならば比翼の鳥だと思った。
一人では飛べない。二人揃って、初めて幸せだと思えるのだ。
だから、篤志は円城寺先生にお願いしたと話してくれた。
父には母がいる。どんなに考え方が違っていても、二人で兄の自慢話をしていればいいと言っていた。
篤志は会社の中枢を作り出すことができるプロのプログラマーだ。
俺と一緒に研究をしていた時は、ワクワクするほどの経験をさせてもらった。
篤志が卒業した俺には、篤志と一緒にやって来た分野を一人で開拓することが難しくなった。だから、真新しいわんこの研究を始めた。
賞の数では勝ったけれど、篤志と研究をしていたときのような神秘的な研究は少なかった。
年内に届くと言われていたぬいぐるみは、菜都美の1才の誕生日まで隠しておくことにしたと篤志に聞いた。
それでいいかと確認されたが、このゴタゴタしたときに、菜都美に渡しても喜ばないと俺も思った。
大きなぬいぐるみは、それとは分からないように包装されていたようだったので、俺の部屋に置いたと聞かされた。
篤志の判断は間違っていないので、篤志が考えた通りにすることにした。
俺は正月休みの間、寝正月で過ごした。
明日から仕事だという日に、病院に行って検査をしてもらった。
結果は再出血はないことがわかり、頭の抜糸もしてもらった。今度は具合が悪くなった時に受診してくださいと言われて、病院の鎖は外れた。
病院の帰りに初詣に行って、一年を祈願してもらった。
菜都美は9ヶ月になった。
ちょっとお姉さんになったけれど、まだ9ヶ月だ。
泣くときは、「んぱんぱふえん」と泣くけれど、俺のことはパパと呼ぶ。
あっちゃんもパパだよと教えると、あっちゃんパパと呼ぶようになった。
9ヶ月の菜都美に、今は俺の名前を教えた。
簡単な名前だから、直ぐに覚えた。「しんぱぱ」と菜都美は呼ぶ。
菜都美にはパパが二人もいるんだよと、教えている。
素直な菜都美は、それで納得している。
いつか母親がどうしていないのかと疑問に思う日が来ると思うが、その時は嘘の話ではなく、真実を話そうと二人で相談した。
その時は悲しむかもしれないけれど、俺も篤志も全力で菜都美を愛してる。
菜都美には愛してくれていたママがいて、もう一人本当のパパもいた。
おじいちゃんもおばあちゃんもいたことを、話して、写真を見せようと思った。
菜都美の心が不安定になっても、俺達が必ず支えると誓い合った。
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