54 / 67
54
しおりを挟む
ガラスの交換はお昼過ぎにしてもらって、菜都美に昼食を食べさせてから帰宅をする。
菜都美は車に乗ると、ご機嫌になった。
わんこのぬいぐるみを持って「んぱんぱんぱんぱ」と歌っているのか?曲は犬のお巡りさんで、「わうわうわうわう」と犬の真似はなかなかだ。
俺と篤志は、菜都美の歌声を聞きながら、自然に笑顔になっていた。
さすがに一日中わんこを持って歌を聴いているので、音程も赤ちゃんなのになかなか上手い。
菜都美に専用のわんこをプレゼントしたら、どれほど喜んでくれるのか想像をすると楽しみで仕方がない。
大きな熊はクリスマスには届かないらしい。
それでも、今年中に届くらしい。
大きな熊はお年玉にしてもいい。
大きな熊を見たら、どんな顔をするだろう。
自分より大きいので、最初は怖がる様な気がする。
それでも、どんなリアクションをするのか楽しみで仕方ない。
「あっちゃん、菜都美をわんこに乗せても大丈夫だよね?」
「大丈夫だとは思うけれど、さすがに外に出かけるのは寒いと思うよ。まずは部屋の中がいいと思うよ」
「そうだね、外は寒いよね。寒波も来ているから、雪が降るかもしれない」
天気予報は、毎日変更されている。
今週は雪マークが付いていたので、雪が降ったら、菜都美に触らせてあげよう。
一面の雪景色も、そんなに見られないから、記憶の欠片にしてもいいと思う。
「クリスマスまでまだあるが、先に見せてやるのか?」
「そうだよね、クリスマスまで10日もあるのに、俺が待ち遠しい。早くクリスマス来ないかな」
「真が子供みたいだな」
「俺が子供なの?」
「俺は真の小さい頃を良く覚えているよ。先に産まれて、これだけは良かったって思う」
「あっちゃんは、俺のお兄ちゃんみたいだったよね。本当の兄貴より、お兄ちゃんみたいで、ずっと小さな時から好きだったな。クリスマスやバレンタインデーとか誕生日に、女の人が出待ちしているのを見るのは嫌だったな」
「プレゼントは真からしかもらってないよ。みんなには『気持ちに応えられないから、ごめん』って返していた。
俺へのプレゼントがゴミ箱に捨てられていたのを見たこともある。
断るのが誠意だと思ったけれど、怒って捨てられたプレゼントは、誠意に応えなかったから八つ当たりされたのだろうと思った。わざわざ俺の目に付くところに捨てるって、嫌がらせに思えて気分が悪かったな」
「そんなプレゼントもあったのか。見える場所に捨てるなんて、くそ意地が悪いよな」
篤志は笑った。
「俺はあっちゃんからしかもらってないよ。モテないからラッキーだったね」
「俺が牽制してたんだよ」
「それだったら、あっちゃんが卒業したあとももらってないよ?二年もあったのに」
「真の友達に、やたらと背が高くて目つきの悪い奴がいただろう?」
「山田君のこと?」
「あいつに真の番犬になってくれって頼んでいたんだ。あいつと真は仲がよかっただろう?」
「山田君は優しいのに、見栄えが怖いから友達できなくて、放っておけなかったんだ」
「その山田君に、真のこと守って欲しいと頼んだんだ」
「山田君、同じ工学部に入ったけど、院生にならずに卒業しちゃったんだ。誘ったけど、これ以上は学費を出してもらえそうもないって。院生になるにもお金がかかって、全ての人が上がれるわけでも無いんだ。山田君は確か大阪の方の会社に就職したんだよ。友達がいなくなって寂しくなったけど、新しく鈴木君ってあっちゃんみたいに背が高くて、体格のいい友達ができて、話し相手になってくれたんだ。鈴木君はまだ卒業してないけど」
「きちんと卒業まで見守ってくれたんだな。山田が卒業するときに後釜を連れてきてくれたんだろう」
「後釜?俺、本当にモテてなかったんだよ。女の子に声をかけられたこともなかったし。せいぜい工学部の男達だったな。みんな鈴木君の友達でたのしかったな」
昔の話をしていたら、なんだか大学時代の楽しいことを思い出して、胸の奥が温かくなる。
篤志は俺を置いて大学を去るときに、俺を守る手段を考えていてくれたようだ。
話を聞くまで知らなかったが、何はともあれ、俺も大学を無事に卒業して、今は篤志と同じ職場に勤めている。
菜都美は車に乗ると、ご機嫌になった。
わんこのぬいぐるみを持って「んぱんぱんぱんぱ」と歌っているのか?曲は犬のお巡りさんで、「わうわうわうわう」と犬の真似はなかなかだ。
俺と篤志は、菜都美の歌声を聞きながら、自然に笑顔になっていた。
さすがに一日中わんこを持って歌を聴いているので、音程も赤ちゃんなのになかなか上手い。
菜都美に専用のわんこをプレゼントしたら、どれほど喜んでくれるのか想像をすると楽しみで仕方がない。
大きな熊はクリスマスには届かないらしい。
それでも、今年中に届くらしい。
大きな熊はお年玉にしてもいい。
大きな熊を見たら、どんな顔をするだろう。
自分より大きいので、最初は怖がる様な気がする。
それでも、どんなリアクションをするのか楽しみで仕方ない。
「あっちゃん、菜都美をわんこに乗せても大丈夫だよね?」
「大丈夫だとは思うけれど、さすがに外に出かけるのは寒いと思うよ。まずは部屋の中がいいと思うよ」
「そうだね、外は寒いよね。寒波も来ているから、雪が降るかもしれない」
天気予報は、毎日変更されている。
今週は雪マークが付いていたので、雪が降ったら、菜都美に触らせてあげよう。
一面の雪景色も、そんなに見られないから、記憶の欠片にしてもいいと思う。
「クリスマスまでまだあるが、先に見せてやるのか?」
「そうだよね、クリスマスまで10日もあるのに、俺が待ち遠しい。早くクリスマス来ないかな」
「真が子供みたいだな」
「俺が子供なの?」
「俺は真の小さい頃を良く覚えているよ。先に産まれて、これだけは良かったって思う」
「あっちゃんは、俺のお兄ちゃんみたいだったよね。本当の兄貴より、お兄ちゃんみたいで、ずっと小さな時から好きだったな。クリスマスやバレンタインデーとか誕生日に、女の人が出待ちしているのを見るのは嫌だったな」
「プレゼントは真からしかもらってないよ。みんなには『気持ちに応えられないから、ごめん』って返していた。
俺へのプレゼントがゴミ箱に捨てられていたのを見たこともある。
断るのが誠意だと思ったけれど、怒って捨てられたプレゼントは、誠意に応えなかったから八つ当たりされたのだろうと思った。わざわざ俺の目に付くところに捨てるって、嫌がらせに思えて気分が悪かったな」
「そんなプレゼントもあったのか。見える場所に捨てるなんて、くそ意地が悪いよな」
篤志は笑った。
「俺はあっちゃんからしかもらってないよ。モテないからラッキーだったね」
「俺が牽制してたんだよ」
「それだったら、あっちゃんが卒業したあとももらってないよ?二年もあったのに」
「真の友達に、やたらと背が高くて目つきの悪い奴がいただろう?」
「山田君のこと?」
「あいつに真の番犬になってくれって頼んでいたんだ。あいつと真は仲がよかっただろう?」
「山田君は優しいのに、見栄えが怖いから友達できなくて、放っておけなかったんだ」
「その山田君に、真のこと守って欲しいと頼んだんだ」
「山田君、同じ工学部に入ったけど、院生にならずに卒業しちゃったんだ。誘ったけど、これ以上は学費を出してもらえそうもないって。院生になるにもお金がかかって、全ての人が上がれるわけでも無いんだ。山田君は確か大阪の方の会社に就職したんだよ。友達がいなくなって寂しくなったけど、新しく鈴木君ってあっちゃんみたいに背が高くて、体格のいい友達ができて、話し相手になってくれたんだ。鈴木君はまだ卒業してないけど」
「きちんと卒業まで見守ってくれたんだな。山田が卒業するときに後釜を連れてきてくれたんだろう」
「後釜?俺、本当にモテてなかったんだよ。女の子に声をかけられたこともなかったし。せいぜい工学部の男達だったな。みんな鈴木君の友達でたのしかったな」
昔の話をしていたら、なんだか大学時代の楽しいことを思い出して、胸の奥が温かくなる。
篤志は俺を置いて大学を去るときに、俺を守る手段を考えていてくれたようだ。
話を聞くまで知らなかったが、何はともあれ、俺も大学を無事に卒業して、今は篤志と同じ職場に勤めている。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。


好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。

黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる