52 / 67
52
しおりを挟む
翌朝、扉を叩く音がした。
俺と篤志はカメラを見る。
扉をノックしているのは、篤志の母親だった。
「開ける?」
「放っておけばいい。どうせ真に父親を許して欲しいって言いに来たんだよ」
「許さなくていいの?」
「許さなくてもいい。静かになって、両親は冷静になれるんじゃないかな?」
「あっちゃんが、そう言うなら、放っておくけど。俺、あっちゃんが望めば、窓を割って家に入った事許してもいいよ。あっちゃんの父親だから」
「真は甘いな。でも、ありがとう」
篤志が俺を抱きしめてくれる。
菜都美はまだ寝ている。
布団の中がぬくぬくで、気持ちがいいのだろう。
一晩中、ストーブを焚いていたから、灯油を買いに行かないと、部屋の中はかなり冷えるだろう。
「早く帰ってくれないかな?」と篤志はカメラを見て溜息をついた。
「灯油が切れると菜都美が風邪を引く。ちょっと行ってくるけど、母親を入れては駄目だよ」と言って、篤志は灯油を入れるブルーの容器を二つ持ってきた。
運がいいと巡回の灯油屋さんが来るけれど、ずっと家を空けていたので、何曜日の何時頃か分からない。
篤志は容器を持って、玄関を出た。鍵は篤志が持って行った。
玄関で親子喧嘩をしている。
篤志の家庭は、空中分解しているようだ。
男と男が結婚することはそんなに悪いことなのか?
男だって人間だし、人間が集まれば、愛が芽生えることもあると思う。
それがたまたま男だったってことだと思う。
薄い玄関を通して、二人の会話が聞こえる。
なんだか切ないな。
叔母さんは、篤志の頬を叩いた。
叩かれた篤志は、何のリアクションもしないで、車に容器を入れている。
叔母さんの言葉は、全て無視している。
叔母さんは、また玄関を叩いている。
「んぱんぱふえん」と菜都美が起きて泣き出した。
いつもは機嫌良く起きるのに、扉の音で昨日の怖い事を思い出したのかもしれない。
「菜都美、おはよう」
「んぱんぱふえん」
「どうした?」
おしめを替えないと、たくさん着ているから、脱がすのも大変だ。
昨日はお風呂に入っていないので、少しかぶれている。
お尻ふきで、丁寧に拭いて、おしめを着ける。
菜都美の泣き声のお陰で、扉の音は消されている。
叔母さんも諦めて帰ってくれるといいのだけれど。
俺と篤志はカメラを見る。
扉をノックしているのは、篤志の母親だった。
「開ける?」
「放っておけばいい。どうせ真に父親を許して欲しいって言いに来たんだよ」
「許さなくていいの?」
「許さなくてもいい。静かになって、両親は冷静になれるんじゃないかな?」
「あっちゃんが、そう言うなら、放っておくけど。俺、あっちゃんが望めば、窓を割って家に入った事許してもいいよ。あっちゃんの父親だから」
「真は甘いな。でも、ありがとう」
篤志が俺を抱きしめてくれる。
菜都美はまだ寝ている。
布団の中がぬくぬくで、気持ちがいいのだろう。
一晩中、ストーブを焚いていたから、灯油を買いに行かないと、部屋の中はかなり冷えるだろう。
「早く帰ってくれないかな?」と篤志はカメラを見て溜息をついた。
「灯油が切れると菜都美が風邪を引く。ちょっと行ってくるけど、母親を入れては駄目だよ」と言って、篤志は灯油を入れるブルーの容器を二つ持ってきた。
運がいいと巡回の灯油屋さんが来るけれど、ずっと家を空けていたので、何曜日の何時頃か分からない。
篤志は容器を持って、玄関を出た。鍵は篤志が持って行った。
玄関で親子喧嘩をしている。
篤志の家庭は、空中分解しているようだ。
男と男が結婚することはそんなに悪いことなのか?
男だって人間だし、人間が集まれば、愛が芽生えることもあると思う。
それがたまたま男だったってことだと思う。
薄い玄関を通して、二人の会話が聞こえる。
なんだか切ないな。
叔母さんは、篤志の頬を叩いた。
叩かれた篤志は、何のリアクションもしないで、車に容器を入れている。
叔母さんの言葉は、全て無視している。
叔母さんは、また玄関を叩いている。
「んぱんぱふえん」と菜都美が起きて泣き出した。
いつもは機嫌良く起きるのに、扉の音で昨日の怖い事を思い出したのかもしれない。
「菜都美、おはよう」
「んぱんぱふえん」
「どうした?」
おしめを替えないと、たくさん着ているから、脱がすのも大変だ。
昨日はお風呂に入っていないので、少しかぶれている。
お尻ふきで、丁寧に拭いて、おしめを着ける。
菜都美の泣き声のお陰で、扉の音は消されている。
叔母さんも諦めて帰ってくれるといいのだけれど。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。


好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。

黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる