幼馴染みの彼と彼

綾月百花   

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  部屋にはクリスマスのイルミネーションがキラキラ光っている。

 安井さんによく遊んでもらったのか、菜都美は風呂と離乳食とミルクを飲んだら、眠ってしまった。

 キラキラ光るイルミネーションの灯火を消して、俺は菜都美の布団の横にダブルの布団を敷いた。

 食事中も口数の少なかった篤志が心配だった。


「お熱はないかな?」と、窓辺でボンヤリしている篤志の額に額を合わせて、「どうしたの?」と篤志の手を握る。

「あっちゃん、俺と菜都美を守ろうとしてくれていたんだね?いっぱい我慢させてごめんね」


 俺はまず篤志にお礼を言うのを忘れていたことに気づいた。

 してもらって当然だとは思っていないけれど、あの時は篤志の存在に助けられた。

 それなのに、帰ってこない篤志に怒って、喧嘩もした。


「もっといい方法があったはずだったのに、どうしたらいいのか分からなかったんだ」

「俺も考えたんだけど、社長が家に娘と訪ねてきたら、両親は期待してしまう。俺の両親が生きていたとしたら、あっちゃんの両親と同じように反対されたような気がする。両親は俺に期待をしていた。母ちゃんは孫を見せてくれと言っていた。俺とあっちゃんが一緒にいる為には、俺は両親に二人の関係を黙り続けるしか無理だったと最近考えるようになった。今ある幸せは両親の死があったからだとね。何かを手に入れるためには、大切な物を捨てる覚悟がいるのかもしれない。弁護士さんが両親と距離を置かなくてはいけないかもしれないと言っていたけど、あっちゃんが嫌だったら、恋人関係を辞めるのも手だよ。あっちゃん、苦しいんだろ?恋人同士でなくなっても、俺の気持ちは変わらない。やっぱりあっちゃんが好きだから想い続けると思う。だから安心して、俺を捨ててもいいよ。寂しいけど、そう言う選択肢もあるって言うこと」


 俺は思っていることを口に出して伝えた。


「別れるなんて、選択肢の一つになったりしない。真、俺を捨てるのか?」

「あっちゃん、カナダに行ってて、日本語忘れたのか?俺はあっちゃんを好きだから、俺を」

「二度と捨ててもいいなんて言うな。俺は真がいるから毎日が楽しんだ。真のいなかった二年の間、俺はすごく寂しかった。真は研究をしているから邪魔をしてはいけないと自分を戒めて、日付が過ぎることしか頭になかった。ただ仕事に没頭して、真と会話ができる時間が待ち遠しくて」


 篤志は俺をギュッと抱きしめてきた。


「好きだから、愛しているから、もう二度と離れることを考えるのは辞めてくれ」

「うん、ごめん。あっちゃんが苦しそうだったから、どうしたら楽になれるのか色々考えていたんだ」

「俺はきちんと自立してると思う。両親の言いなりなんて絶対に嫌だ。真のことも今の仕事も手放したくない」

「うん、ずっと一緒にいよう。死ぬまで、死んでも一緒だよ」


 誓い合うようにキスをした。

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