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篤志が仕事に行ってから、まず部屋を掃除して、菜都美の布団を敷いて、ベビーラックに座らせていた菜都美を布団の上に寝かすと、直ぐに寝返りをして、俺を探している。
俺はガーゼのハンカチでカーテンを作ると、「いないいないばー」をして、ハンカチを手の中に隠した。
菜都美がきゃきゃっと笑う。
「いないいないばー」を繰り返して、飽きる前に止めておく。
今度は俺が姿を消して、菜都美に俺を探してもらう。
菜都美はハイハイを覚えた。どこでも行ってしまう。
「菜都美」
「んぱ」
「どこだ?」
「んぱんぱんぱんぱ」
菜都美がハイハイして近づいてくる。
俺がいつもいる作業場に到着したけど、俺は今日は菜都美の後ろにいる。
「菜都美」
声を聞いて振り向いた菜都美が、にぱーっと笑う。
「んぱ」
菜都美を抱っこして、昨日買ってきた犬のぬいぐるみを見せて、隠す。
「わうわう」
「わんわんどーこだ?」
「わうわう」
俺はチラッと菜都美にぬいぐるみを見せると、菜都美がぬいぐるみを掴んだ。
小さめなぬいぐるみは、菜都美が手に持てる大きさで、かみかみしても洗える物だ。
菜都美は、ぬいぐるみと遊び始めた。
布団を片手で引き寄せると、菜都美を布団に転がした。
いい具合に、菜都美が遊び始めたので、俺は作業を始める。
ネジを使う本職の方は、菜都美が寝てくれないと危ないから、昨日作業をしていた菜都美のオモチャ作りだ。
もう一つ買ったぬいぐるみのお腹を開けて、綿を少し抜いておく。
俺はヘッドフォンをすると昨日学習させていた音を確認する。
小さなAIに子供の歌を入れて、菜都美という名前を音声化させていた。会話ロボットだ。犬が菜都美の言葉を聞いて、会話をしてくれる。基本の可愛い。いい子、大好き、パパ、あっちゃんは必ず出てくる。AIがお話を作って話してくれる。本軸になる子供向けの歌や本を学習させていたのだ。
声は俺の声と篤志の声を入れておいた。どこまで本物と似ているか確かめてみたが、合格点だ。
菜都美がどこまで興味を持つかお試しだ。
AIを保護する小さな箱に入れて、乾電池と繋げる
それをお腹を裂いたぬいぐるみに入れて、もう一度綿を詰めてもふもふにすると、糸と針でチクチク縫っていく。ON、OFFは右手を握るようになっている。綺麗にお片付けをして菜都美を見ると、菜都美はぬいぐるみに興味は失せて、俺のヘッドフォンに噛みついていた。
涎でベタベタになったヘッドフォンは、大学在学中に研究費で買った50万のヘッドフォンだ。
後で綺麗に拭いて置かないと。
放置されたぬいぐるみを回収して、交換しておいた。
「菜都美、それはまんまじゃないよ」
「んぱ」
顔を上げた菜都美は、顔中涎だらけになっている。
菜都美を抱き上げて、洗面所に行くとタオルを濡らして、顔を拭く。
菜都美を足下に下ろすと、タオルを濯いで、しっかり絞って、また菜都美を抱き上げる。
「あれは、ヘッドフォンだよ。まんまじゃないから食べたら駄目」
「んぱんぱふえん」
叱られたのが分かったのか、抱きついて泣いている。
「怒ってないから、泣かなくてもいい」
菜都美の頭を撫でると、俺にしがみついてくる。
作業場に戻ると、菜都美を布団に座らせて、改造したぬいぐるみを持たせた。
『菜都美、いい子いい子』と俺の声が聞こえる。
菜都美は驚いて、ぬいぐるみをポイとしてしまった。
『菜都美、いい子いい子』と篤志の声がすると、「あー、あー、あー」と言って、篤志の姿を探す。
俺はヘッドフォンを持つと、菜都美を観察しながら、ヘッドフォンを綺麗に拭いていく。
『あっちゃん』
「あー、あー、あー」
歌が流れて、菜都美は俺の方を見て、手を伸ばした。
俺は菜都美を抱き上げると、ぬいぐるみを持って、部屋の中を歩く。
俺はたぶん音痴だけれど、ぬいぐるみの俺は歌のお兄さんみたいに歌がうまい。
「んぱんぱんぱんぱ」
「菜都美、いい子いい子」と頭を撫でると、菜都美は安心した顔をした。
やっぱり本物とAIの声は、同じように聞こえてもどこか違うんだよな。
菜都美が戸惑っている。
菜都美をベビーラックに座らせると、俺は冷蔵庫からリンゴを取り出して、菜都美のすりおろしリンゴを作っていく。ついでに俺の分も切って、菜都美と食べる。
「リンゴ美味しい?」
「まんま」
「リンゴ、ゆっくり食べて」
『リンゴ美味しい?ゆっくり食べて』
自動学習するから、犬からも声がする。
「んぱ」
「パパ」
『パパ』
菜都美は犬のぬいぐるみをポイッと捨てた。
これは失敗かな。
暢気な俺の声が、童謡を歌っている。
本物に勝るものはないのかな。
俺はガーゼのハンカチでカーテンを作ると、「いないいないばー」をして、ハンカチを手の中に隠した。
菜都美がきゃきゃっと笑う。
「いないいないばー」を繰り返して、飽きる前に止めておく。
今度は俺が姿を消して、菜都美に俺を探してもらう。
菜都美はハイハイを覚えた。どこでも行ってしまう。
「菜都美」
「んぱ」
「どこだ?」
「んぱんぱんぱんぱ」
菜都美がハイハイして近づいてくる。
俺がいつもいる作業場に到着したけど、俺は今日は菜都美の後ろにいる。
「菜都美」
声を聞いて振り向いた菜都美が、にぱーっと笑う。
「んぱ」
菜都美を抱っこして、昨日買ってきた犬のぬいぐるみを見せて、隠す。
「わうわう」
「わんわんどーこだ?」
「わうわう」
俺はチラッと菜都美にぬいぐるみを見せると、菜都美がぬいぐるみを掴んだ。
小さめなぬいぐるみは、菜都美が手に持てる大きさで、かみかみしても洗える物だ。
菜都美は、ぬいぐるみと遊び始めた。
布団を片手で引き寄せると、菜都美を布団に転がした。
いい具合に、菜都美が遊び始めたので、俺は作業を始める。
ネジを使う本職の方は、菜都美が寝てくれないと危ないから、昨日作業をしていた菜都美のオモチャ作りだ。
もう一つ買ったぬいぐるみのお腹を開けて、綿を少し抜いておく。
俺はヘッドフォンをすると昨日学習させていた音を確認する。
小さなAIに子供の歌を入れて、菜都美という名前を音声化させていた。会話ロボットだ。犬が菜都美の言葉を聞いて、会話をしてくれる。基本の可愛い。いい子、大好き、パパ、あっちゃんは必ず出てくる。AIがお話を作って話してくれる。本軸になる子供向けの歌や本を学習させていたのだ。
声は俺の声と篤志の声を入れておいた。どこまで本物と似ているか確かめてみたが、合格点だ。
菜都美がどこまで興味を持つかお試しだ。
AIを保護する小さな箱に入れて、乾電池と繋げる
それをお腹を裂いたぬいぐるみに入れて、もう一度綿を詰めてもふもふにすると、糸と針でチクチク縫っていく。ON、OFFは右手を握るようになっている。綺麗にお片付けをして菜都美を見ると、菜都美はぬいぐるみに興味は失せて、俺のヘッドフォンに噛みついていた。
涎でベタベタになったヘッドフォンは、大学在学中に研究費で買った50万のヘッドフォンだ。
後で綺麗に拭いて置かないと。
放置されたぬいぐるみを回収して、交換しておいた。
「菜都美、それはまんまじゃないよ」
「んぱ」
顔を上げた菜都美は、顔中涎だらけになっている。
菜都美を抱き上げて、洗面所に行くとタオルを濡らして、顔を拭く。
菜都美を足下に下ろすと、タオルを濯いで、しっかり絞って、また菜都美を抱き上げる。
「あれは、ヘッドフォンだよ。まんまじゃないから食べたら駄目」
「んぱんぱふえん」
叱られたのが分かったのか、抱きついて泣いている。
「怒ってないから、泣かなくてもいい」
菜都美の頭を撫でると、俺にしがみついてくる。
作業場に戻ると、菜都美を布団に座らせて、改造したぬいぐるみを持たせた。
『菜都美、いい子いい子』と俺の声が聞こえる。
菜都美は驚いて、ぬいぐるみをポイとしてしまった。
『菜都美、いい子いい子』と篤志の声がすると、「あー、あー、あー」と言って、篤志の姿を探す。
俺はヘッドフォンを持つと、菜都美を観察しながら、ヘッドフォンを綺麗に拭いていく。
『あっちゃん』
「あー、あー、あー」
歌が流れて、菜都美は俺の方を見て、手を伸ばした。
俺は菜都美を抱き上げると、ぬいぐるみを持って、部屋の中を歩く。
俺はたぶん音痴だけれど、ぬいぐるみの俺は歌のお兄さんみたいに歌がうまい。
「んぱんぱんぱんぱ」
「菜都美、いい子いい子」と頭を撫でると、菜都美は安心した顔をした。
やっぱり本物とAIの声は、同じように聞こえてもどこか違うんだよな。
菜都美が戸惑っている。
菜都美をベビーラックに座らせると、俺は冷蔵庫からリンゴを取り出して、菜都美のすりおろしリンゴを作っていく。ついでに俺の分も切って、菜都美と食べる。
「リンゴ美味しい?」
「まんま」
「リンゴ、ゆっくり食べて」
『リンゴ美味しい?ゆっくり食べて』
自動学習するから、犬からも声がする。
「んぱ」
「パパ」
『パパ』
菜都美は犬のぬいぐるみをポイッと捨てた。
これは失敗かな。
暢気な俺の声が、童謡を歌っている。
本物に勝るものはないのかな。
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