幼馴染みの彼と彼

綾月百花   

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 発注から二週間が経った。

 プログラムの方は順調に学習して、基礎の部分はできた。

 俺達は実家の工場に仕上がったボディーを取りに行った。

 ボディーはバイクのモデルで作ったが、そこから腹を付けて、稼働する足を付けて、尻尾を付けるのは、初めてのはずだ。

 小野田さんは、「どうですか?」と俺の顔をじっと見る。

 三色のカラーも美しいけれど、しなやかなボディーも美しい。

 背中の部分、腹の部分、足の部分。顔はないが、尻尾はわずかにある。尻尾はただの飾りだ。なくてもいい。

 俺が「素晴らしい」と言うと、工場の皆が、大喜びした。

 篤志が「これで皆で食べ物でも食べてくれ」と言って、封筒を小野田さんに渡した。

 小野田さんは封筒を受け取り、工場の皆は頭を下げた。

 俺はこういった細かいことに気が回らない。

 後で篤志に、お金を返さなくては。


「皆さん、ありがとうございます。早速、このわんこに学習させていくよ。成功したら、大量の発注をするかもしれない。そうなるように、俺も頑張る」


 皆さんは拍手をしてくれた。

 たくさんの拍手を見た菜都美は、篤志に抱っこされて、頭をポンポン叩いている。

 これは菜都美の拍手なのだ。

 まだ手が短いから、手が前まで届かない。だから、「いいこいいこ」される頭で拍手をしているのだ。

 菜都美用のわんこのボディーもできている。

 完全に改良して、椅子形にしてみた。付け外しができるタイプにしたので、お座りができるようになれば、菜都美も乗れる。

 ボディーの重さは、小学生2年生の体重まではいけるだろう。

 椅子を外しても乗れるようにしたので、たぶん、一番、手が込んで作るのが大変だったはずだ。


「今日は泊まられますか?」

「今日は、帰宅します。帰って、早速ボディーを付けてみたいので」

「そうですか」

「結果は、連絡します」


 俺は頭を下げた。

 皆さんも頭を下げてくれる。

 俺達は、いったん家の中に入ると、菜都美のおしめを替えて、ミルクを飲ます」

 もう暑くなってきた。

 熱中症にならないように、気をつけなくてはならない。

 気温の差もあるから、風邪を引かせないように気をつけなくてはいけない。

 俺達もペットボトルのお茶を飲むと、帰る支度をする。

 篤志は、実家に戻るとは言わなかった。

 篤志の家から、我が家が見えると思うけど、叔父さんも叔母さんも来なかった。


「さて、帰ろう」

「いいの?」

「何か問題があるのか?」

「何もないよ、あ、そうだ。みんなに払ったお金は俺が払うよ」

「この仕事は、わんこの制作の方だから、経費から出すよ」

「そうなのか?俺、どこからどこまで会社の仕事かよく分かってないや」

「その為に、俺がいる。まあ任せておけ」

「助かる」


 工場から持ってきたわんこのボディーに傷が付かないように、段ボールの箱に入れて、篤志の車のトランクに二つと、助手席に二つ置いた。

 篤志の車は、真っ赤なスポーツカーだから、後部のトランクもあるだけで、あまり使えない。

 わんこが飛び出しているので、ロープで縛った。


「次から、車をレンタカーにするか、車をファミリーカーに替えるか?」

「このままでいい大量発注させたときは、トラックで運んでもらってもいいし」


 菜都美はチャイルドシートに収まっている。

 菜都美は四ヶ月になった。

 時間が経つのは早い。

 三ヶ月検診も異常なしで、すくすく育っていると言われて、ホッとした。


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