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俺と篤志は会社を退職するために、行きたくはないが、大塚電気株式会社の本社の人事部に直接出向いた。
俺はオマケみたいな者だから、「手続きしておきます」と言われて終わった。
なんと言っても一日も仕事をしていない。会社は休暇として許可を出しているので、給料などが発生するが、給料は要りませんと言ったので、早急に書類を書いて、退職と赤いペンで書かれている。
俺は、内心ニヤッと笑った。さて、次は篤志だ。
ここの事務所に来たのは、社長に会わないと思ったからだ。社長が自分の娘を伴侶にしようとしていることを知る人は、おそらく社員の中にはいないと思ったからだ。
「滝川さんの退職の理由は何ですか?」
「パワハラです」
「パワハラですか?どなたから?」
「社長です。これ以上お話しすると、労働基準監督署が動き出しますが、話しますか?」
「いいえ、お話はされなくてもいいです」
職員は急いで退職と赤いペンで書いた。
「退職金と給料はしっかり払ってください。残りの休暇もちゃんと計算してください。マンションは、今日中に出て行きますから」
篤志は細かく指示を出すと、マンションの鍵を机に置いた。
それから俺の肩を抱いて、部屋から出た。
ニヤッと笑っている顔は、悪戯坊主が悪戯に成功したような顔をしている。
マンションは予め新しく借りて、既に引っ越しも済ませている。
社長に会わなければ、この会社ともおさらばで、お嬢さんとも会うことはないだろう。
菜都美を抱っこしている俺は急いで車に乗った。
「急いで」
「ああ」
篤志は扉を閉めると、さっと車に乗ろうとした。
「篤志さん、お久しぶりです」
篤志は顔を顰めている。
俺は菜都美をチャイルドシートに寝かして、ロックをする。
「OK!」
「やあ、母の具合が悪くてね。じゃ、急いでいるんだ」と言って、篤志はさっさと車に乗り込んだ。直ぐに車を出発させた。
「危ない」
「あのお嬢さんも、ここに務めているらしい。秘書課だと言っていたけれど、どうして分かったんだ?」
「車を見つけたんじゃないかな?この車、目立つし」
「秘書課は人事課と同じ棟だったか?」
「あっちゃん、叔母さんを病気にしちゃ駄目だよ。言霊ってあるじゃない。本当に病気になったら大変だよ」
「落ち着いたら、実家に帰ろう。カミングアウトもしなくちゃならないだろう」
「そうだった。叔母さんに反対されたらどうするんだよ?」
「それこそ、ビックリして寝込んだりして」
篤志はケラケラと笑っている。
「叔母さんを病人にしちゃ駄目だって」
「倒れたりしないよ。俺が真のこと好きなこと知っているから」
それは知らなかった。
「BL本好きだし、一人で悶えるんじゃないかな?」
「本当に?」
「真の母ちゃんと本の貸し借りしていたから」
「母ちゃん、そんな本を読んでいたのか?」
「趣味は自由だよ」
「そうだな」
母ちゃんだって、普通の女性だ。
趣味の一つや二つはあるだろう。
俺はオマケみたいな者だから、「手続きしておきます」と言われて終わった。
なんと言っても一日も仕事をしていない。会社は休暇として許可を出しているので、給料などが発生するが、給料は要りませんと言ったので、早急に書類を書いて、退職と赤いペンで書かれている。
俺は、内心ニヤッと笑った。さて、次は篤志だ。
ここの事務所に来たのは、社長に会わないと思ったからだ。社長が自分の娘を伴侶にしようとしていることを知る人は、おそらく社員の中にはいないと思ったからだ。
「滝川さんの退職の理由は何ですか?」
「パワハラです」
「パワハラですか?どなたから?」
「社長です。これ以上お話しすると、労働基準監督署が動き出しますが、話しますか?」
「いいえ、お話はされなくてもいいです」
職員は急いで退職と赤いペンで書いた。
「退職金と給料はしっかり払ってください。残りの休暇もちゃんと計算してください。マンションは、今日中に出て行きますから」
篤志は細かく指示を出すと、マンションの鍵を机に置いた。
それから俺の肩を抱いて、部屋から出た。
ニヤッと笑っている顔は、悪戯坊主が悪戯に成功したような顔をしている。
マンションは予め新しく借りて、既に引っ越しも済ませている。
社長に会わなければ、この会社ともおさらばで、お嬢さんとも会うことはないだろう。
菜都美を抱っこしている俺は急いで車に乗った。
「急いで」
「ああ」
篤志は扉を閉めると、さっと車に乗ろうとした。
「篤志さん、お久しぶりです」
篤志は顔を顰めている。
俺は菜都美をチャイルドシートに寝かして、ロックをする。
「OK!」
「やあ、母の具合が悪くてね。じゃ、急いでいるんだ」と言って、篤志はさっさと車に乗り込んだ。直ぐに車を出発させた。
「危ない」
「あのお嬢さんも、ここに務めているらしい。秘書課だと言っていたけれど、どうして分かったんだ?」
「車を見つけたんじゃないかな?この車、目立つし」
「秘書課は人事課と同じ棟だったか?」
「あっちゃん、叔母さんを病気にしちゃ駄目だよ。言霊ってあるじゃない。本当に病気になったら大変だよ」
「落ち着いたら、実家に帰ろう。カミングアウトもしなくちゃならないだろう」
「そうだった。叔母さんに反対されたらどうするんだよ?」
「それこそ、ビックリして寝込んだりして」
篤志はケラケラと笑っている。
「叔母さんを病人にしちゃ駄目だって」
「倒れたりしないよ。俺が真のこと好きなこと知っているから」
それは知らなかった。
「BL本好きだし、一人で悶えるんじゃないかな?」
「本当に?」
「真の母ちゃんと本の貸し借りしていたから」
「母ちゃん、そんな本を読んでいたのか?」
「趣味は自由だよ」
「そうだな」
母ちゃんだって、普通の女性だ。
趣味の一つや二つはあるだろう。
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