22 / 67
22
しおりを挟む
「話しを聞いてやれなくて、すまない」
「いいや、真は菜都美を抱えて、それどころじゃないだろう。俺一人で解決してしまうつもりだった。情けないよな?」
「情けないとは思わないよ。あっちゃんは俺と菜都美を守ろうとしたんだから」
篤志は教授に事細かく聞かれて、パワハラの書類を作成した。
俺の大学は卒業生が、理不尽な目に遭った会社には、今後、生徒を送り出さない。生徒を求められても、断固断る規律があるみたいだ。
今後、大塚電気株式会社に我が校の生徒は就職しないだろう。
我が校の生徒は、偏差値も高く、学ぶ勉学も一流だと言われている。
教授のレベルも高く、授業に付いていけない者は、知らぬ間にいなくなっている。
自主退学をして、別の大学に移っている事が多いらしい。
世界に名前を残す大学であるから、在学中も卒業後も実績を見守っている。
あっちゃんは、性格も穏やかで、顔面偏差値も高い。背も高いので、あっちゃんの周りには人が集まる。
俺は背が低いので、皆の影になって目立たない。
俺は自分のペースを乱されると、かなり苛立つ。精神的に未熟なのだ。
虚弱体質ではないが、食が細くなり、嘔吐もしてしまう。
これは、俺の欠点だ。
それ以外は、あっちゃんと並べる実力はあるが、やはり人は見栄えを第一にする。
俺の顔面偏差値は、低いので、女子にはモテない。
それは助かっている。
女子にモテないが、男子が周りを固めている。
便利屋なのか?
勉強を教えてと言ってくる者は多かった。そのお礼に、食べ物の差し入れをよくもらった。
俺は研究室から出ないから。
「仕事のことだが、先に卒業した先輩が、仲間内で企業をしているらしい。先生に名刺をもらった。一度、聞いてみないか?」
「うん、でも、俺は無理かも。菜都美を連れて仕事に出ることを許してくれるとは思わない。菜都美は少しずつ成長している。あと数ヶ月で、自力で動けるようになるんだよ。それこそ、一番手のかかる時期が来るって言うのに」
食後の菜都美は、ぐっすりと眠っている。
「はー」と、溜息をすると、篤志が微笑んだ。
「なんか、一人だけスッキリした顔をしているな?」
「全部、吐き出したら、スッキリした。カミングアウトしたしね」
「あー、俺も、カミングアウトしちゃった」
カミングアウトしたけど、怖くはなかった。
「なぁ、結婚しようよ。今は他人だから、俺や真が病気になったときに、保証人にもなれないんだ。急を要した時にでも。手術の保証人になれないんだよ?直ぐに処置もしてもらえないなんて、辛くなるだけだぞ」
「そうか、そう言う事もあるのか」
「俺も菜都美の親になれるから、急に何かあったときにも、絶対にあったら助かる事も増えると思うよ」
「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」と俺が言うと、篤志は車を脇に止めて、後ろを振り返った。
「真、今の言葉は嘘じゃないな?」
「嘘なんてついてないよ?俺と結婚するのは嫌なの?」
「今から役所に行って、直ぐに結婚の証明書をもらってこよう」
俺は笑った。
どんだけ結婚したいんだよ?
「叔母さんにカミングアウトしてないんだろう?」
「うちの親は、兄貴のできがいいから、俺の事はどちらかというと放置なんだよ」
「それで、役所は間に合うの?」
「結婚届けは、夜間でもしているんだよ。でも、余裕で間に合うと思うよ」
「あっちゃんが行くところに、俺も行くから」
「じゃ、出発だな」
篤志は身を乗り出すと、俺の手を引っ張って、俺を抱きしめた。
「好きだ」
「俺も好きだよ」
「ロボットじゃないな?」
「ロボットも好きだけど、あっちゃんも好きだよ」
「俺だけ好きだと言え」
俺は笑って誤魔化した。
いつまでロボットネタを引っ張るの?
もういい加減、その話はなかったことにしてくれればいいのに。
篤志は俺にキスをして、格好いい笑顔を見せた。
「今から行くから」
篤志は車を走らせた。
俺は幸せだった。
叔母さんにカミングアウトするときは、ちょっと怖いけれど、篤志がいるから、きっと大丈夫だ。
「いいや、真は菜都美を抱えて、それどころじゃないだろう。俺一人で解決してしまうつもりだった。情けないよな?」
「情けないとは思わないよ。あっちゃんは俺と菜都美を守ろうとしたんだから」
篤志は教授に事細かく聞かれて、パワハラの書類を作成した。
俺の大学は卒業生が、理不尽な目に遭った会社には、今後、生徒を送り出さない。生徒を求められても、断固断る規律があるみたいだ。
今後、大塚電気株式会社に我が校の生徒は就職しないだろう。
我が校の生徒は、偏差値も高く、学ぶ勉学も一流だと言われている。
教授のレベルも高く、授業に付いていけない者は、知らぬ間にいなくなっている。
自主退学をして、別の大学に移っている事が多いらしい。
世界に名前を残す大学であるから、在学中も卒業後も実績を見守っている。
あっちゃんは、性格も穏やかで、顔面偏差値も高い。背も高いので、あっちゃんの周りには人が集まる。
俺は背が低いので、皆の影になって目立たない。
俺は自分のペースを乱されると、かなり苛立つ。精神的に未熟なのだ。
虚弱体質ではないが、食が細くなり、嘔吐もしてしまう。
これは、俺の欠点だ。
それ以外は、あっちゃんと並べる実力はあるが、やはり人は見栄えを第一にする。
俺の顔面偏差値は、低いので、女子にはモテない。
それは助かっている。
女子にモテないが、男子が周りを固めている。
便利屋なのか?
勉強を教えてと言ってくる者は多かった。そのお礼に、食べ物の差し入れをよくもらった。
俺は研究室から出ないから。
「仕事のことだが、先に卒業した先輩が、仲間内で企業をしているらしい。先生に名刺をもらった。一度、聞いてみないか?」
「うん、でも、俺は無理かも。菜都美を連れて仕事に出ることを許してくれるとは思わない。菜都美は少しずつ成長している。あと数ヶ月で、自力で動けるようになるんだよ。それこそ、一番手のかかる時期が来るって言うのに」
食後の菜都美は、ぐっすりと眠っている。
「はー」と、溜息をすると、篤志が微笑んだ。
「なんか、一人だけスッキリした顔をしているな?」
「全部、吐き出したら、スッキリした。カミングアウトしたしね」
「あー、俺も、カミングアウトしちゃった」
カミングアウトしたけど、怖くはなかった。
「なぁ、結婚しようよ。今は他人だから、俺や真が病気になったときに、保証人にもなれないんだ。急を要した時にでも。手術の保証人になれないんだよ?直ぐに処置もしてもらえないなんて、辛くなるだけだぞ」
「そうか、そう言う事もあるのか」
「俺も菜都美の親になれるから、急に何かあったときにも、絶対にあったら助かる事も増えると思うよ」
「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」と俺が言うと、篤志は車を脇に止めて、後ろを振り返った。
「真、今の言葉は嘘じゃないな?」
「嘘なんてついてないよ?俺と結婚するのは嫌なの?」
「今から役所に行って、直ぐに結婚の証明書をもらってこよう」
俺は笑った。
どんだけ結婚したいんだよ?
「叔母さんにカミングアウトしてないんだろう?」
「うちの親は、兄貴のできがいいから、俺の事はどちらかというと放置なんだよ」
「それで、役所は間に合うの?」
「結婚届けは、夜間でもしているんだよ。でも、余裕で間に合うと思うよ」
「あっちゃんが行くところに、俺も行くから」
「じゃ、出発だな」
篤志は身を乗り出すと、俺の手を引っ張って、俺を抱きしめた。
「好きだ」
「俺も好きだよ」
「ロボットじゃないな?」
「ロボットも好きだけど、あっちゃんも好きだよ」
「俺だけ好きだと言え」
俺は笑って誤魔化した。
いつまでロボットネタを引っ張るの?
もういい加減、その話はなかったことにしてくれればいいのに。
篤志は俺にキスをして、格好いい笑顔を見せた。
「今から行くから」
篤志は車を走らせた。
俺は幸せだった。
叔母さんにカミングアウトするときは、ちょっと怖いけれど、篤志がいるから、きっと大丈夫だ。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる