16 / 67
16
しおりを挟む
小野田さんに電話をしてみた。
実家の工場の工場長の小野田さんは、俺の電話に直ぐ出てくれた。
話を聞いてみると、大塚電気株式会社から電話はないらしい。
誰も訪ねてこないらしい。
思った通りで、「今から戻ります」と告げた。
社長は俺だと言っていた。
あの時はショックで、いろんな事を調べる心の余裕はなかったけど、今はあの時より冷静に考えられる。
事務処理の事も調べたい。
俺は自分の夜の弁当を買って、自宅に戻っていった。
会社の社員は待っててくれた。
もう夕方だけれど、全員集まっていてくれた。
「真坊ちゃん、お帰りなさい」
「小野田さん、坊ちゃんはもう止めてください。俺には娘もいるんですから」
「では、社長と?」
「照れるね、でも、俺が社長だから、社長って呼んでください」
俺の力強い声で、社員のみんなの顔に覇気が戻って来た。
「兄ちゃんの娘は、菜都美と名付けました」
菜都美は機嫌がよく、「ウックン、ウックン」と言いながら、指を吸っている。
新生児の時より大きくなっているので、ちょっとぷっくりしてきて可愛くなっている。
医師の話では、あと一ヶ月経つと、もっと皮下脂肪が付いてくるらしい。
菜都美は、事故の影響で、頭を打っている可能性があるので、定期的に医師に診てもらっている。
この間の診察の時の話では、多分、大丈夫だろうと言っていた。
でも、頭を打っていた場合、癲癇を起こす可能性があるから気をつけて見ていてくださいと言われている。
会社の社員は菜都美の姿を見て、頬を緩めている。
「小野田さん、大塚電気から連絡は一度もないのですか?」
「ありません」
「では、今はどんな仕事をなさっていますか?」
「社長に言われたとおり、短期の仕事を中心にしております」
「長期の仕事も受けてください。父ちゃんがいた時と同じくらい受けてもいいです。たぶん、大塚電気からは連絡は来ないと思います。来ても、俺が断ります。俺、あの会社を辞めるつもりです。どこの会社に就職するか、まだ決めていませんけど、どこの会社に就職しても、経理などの仕事は俺がしますので、溜めておいてください」
「今も溜まっております」
「ありがとうございます。俺は皆さんを信頼しておりますので、よろしくお願いします。今まで受けた事のない仕事が来たときは、俺に電話をください。ちゃんと社長の仕事もしますので。あと、俺の仕事のやり方で不満があるとか、心配だと思った時は、俺に連絡してください。よく考えてみますので」
「クビにするとか?」と若い社員がおどおどと口にした。
「横領などしたとき以外はクビにしたりしません。お給料は同じだと思ってください。煽てても増えることはないと思います。仕事が取れないとかなったら、減るかもしれないですが」
「今の所、変化はありません」と小野田さんは言った。
「俺、暫く、ここに住む予定なので、菜都美がギャン泣きするかもしれませんけど、驚かないでください」
「ギャン泣きですか?」
「最近は、ご機嫌ですけれど、お腹が空いたときとか、凄く泣いたりしますので」
社員の皆さんは、ほのぼのと微笑んだ。
「話は終わりです。解散していいですよ。っていうか、菜都美をお風呂に入れたいので解散です。また明日、お待ちしています」
笑顔で手を振ると、社員の皆さんは微笑んで頭を下げた。
「おやすみなさい」
「お疲れ様です」
菜都美を抱いて、菜都美の手で手を振ると、皆さんの顔がクチャクチャになって悶えてる?
菜都美は可愛いから、当然だろう。
最後は小野田さんだけ残った。
「社長が戻ってきてくださって、感謝します。みんな不安で。大塚電気からも連絡がないので、この会社は倒産かと話が出ていたのです」
「倒産はさせたくないな。俺が会社で仕事をしなくてもいい方法で維持できたら、いいな。ちょっと考えますね。経理の仕事は、どこかに就職しても俺がします。大丈夫ですよ。どうにかします」
小野田さんは、お辞儀をすると帰って行った。
会社の戸締まりはお願いしているので、俺は家の鍵を掛けると、取り敢えず菜都美とお風呂に入る準備をする。
お風呂を洗って、お湯の温度は38度にしておく。
少し冷たいと感じるけれど、お湯の40度で、赤ちゃんは火傷をしてしまうらしい。
色白な美人の菜都美の肌に、傷一つ付けるわけにはいかない。
季節も五月に入る。
ゴールデンウィークを避けて、教授に頼み込んだ。
大学は、大学独自のカレンダーがあって、休日でも授業があったりするから。
篤志には、今日は会っていない。
食事は要らないと言われたので、わざわざ顔を見せに行くこともない。
出かける前に、菜都美の荷物と俺の荷物を纏めて、箱に入れてきた。
拠点が決まったら、送ってもらえばいいと思って、大きなリュックとベビーカーに持てるだけの荷物を持ってきた。
残りの一ヶ月、この家に住んでもいいと思っている。
実家の工場の工場長の小野田さんは、俺の電話に直ぐ出てくれた。
話を聞いてみると、大塚電気株式会社から電話はないらしい。
誰も訪ねてこないらしい。
思った通りで、「今から戻ります」と告げた。
社長は俺だと言っていた。
あの時はショックで、いろんな事を調べる心の余裕はなかったけど、今はあの時より冷静に考えられる。
事務処理の事も調べたい。
俺は自分の夜の弁当を買って、自宅に戻っていった。
会社の社員は待っててくれた。
もう夕方だけれど、全員集まっていてくれた。
「真坊ちゃん、お帰りなさい」
「小野田さん、坊ちゃんはもう止めてください。俺には娘もいるんですから」
「では、社長と?」
「照れるね、でも、俺が社長だから、社長って呼んでください」
俺の力強い声で、社員のみんなの顔に覇気が戻って来た。
「兄ちゃんの娘は、菜都美と名付けました」
菜都美は機嫌がよく、「ウックン、ウックン」と言いながら、指を吸っている。
新生児の時より大きくなっているので、ちょっとぷっくりしてきて可愛くなっている。
医師の話では、あと一ヶ月経つと、もっと皮下脂肪が付いてくるらしい。
菜都美は、事故の影響で、頭を打っている可能性があるので、定期的に医師に診てもらっている。
この間の診察の時の話では、多分、大丈夫だろうと言っていた。
でも、頭を打っていた場合、癲癇を起こす可能性があるから気をつけて見ていてくださいと言われている。
会社の社員は菜都美の姿を見て、頬を緩めている。
「小野田さん、大塚電気から連絡は一度もないのですか?」
「ありません」
「では、今はどんな仕事をなさっていますか?」
「社長に言われたとおり、短期の仕事を中心にしております」
「長期の仕事も受けてください。父ちゃんがいた時と同じくらい受けてもいいです。たぶん、大塚電気からは連絡は来ないと思います。来ても、俺が断ります。俺、あの会社を辞めるつもりです。どこの会社に就職するか、まだ決めていませんけど、どこの会社に就職しても、経理などの仕事は俺がしますので、溜めておいてください」
「今も溜まっております」
「ありがとうございます。俺は皆さんを信頼しておりますので、よろしくお願いします。今まで受けた事のない仕事が来たときは、俺に電話をください。ちゃんと社長の仕事もしますので。あと、俺の仕事のやり方で不満があるとか、心配だと思った時は、俺に連絡してください。よく考えてみますので」
「クビにするとか?」と若い社員がおどおどと口にした。
「横領などしたとき以外はクビにしたりしません。お給料は同じだと思ってください。煽てても増えることはないと思います。仕事が取れないとかなったら、減るかもしれないですが」
「今の所、変化はありません」と小野田さんは言った。
「俺、暫く、ここに住む予定なので、菜都美がギャン泣きするかもしれませんけど、驚かないでください」
「ギャン泣きですか?」
「最近は、ご機嫌ですけれど、お腹が空いたときとか、凄く泣いたりしますので」
社員の皆さんは、ほのぼのと微笑んだ。
「話は終わりです。解散していいですよ。っていうか、菜都美をお風呂に入れたいので解散です。また明日、お待ちしています」
笑顔で手を振ると、社員の皆さんは微笑んで頭を下げた。
「おやすみなさい」
「お疲れ様です」
菜都美を抱いて、菜都美の手で手を振ると、皆さんの顔がクチャクチャになって悶えてる?
菜都美は可愛いから、当然だろう。
最後は小野田さんだけ残った。
「社長が戻ってきてくださって、感謝します。みんな不安で。大塚電気からも連絡がないので、この会社は倒産かと話が出ていたのです」
「倒産はさせたくないな。俺が会社で仕事をしなくてもいい方法で維持できたら、いいな。ちょっと考えますね。経理の仕事は、どこかに就職しても俺がします。大丈夫ですよ。どうにかします」
小野田さんは、お辞儀をすると帰って行った。
会社の戸締まりはお願いしているので、俺は家の鍵を掛けると、取り敢えず菜都美とお風呂に入る準備をする。
お風呂を洗って、お湯の温度は38度にしておく。
少し冷たいと感じるけれど、お湯の40度で、赤ちゃんは火傷をしてしまうらしい。
色白な美人の菜都美の肌に、傷一つ付けるわけにはいかない。
季節も五月に入る。
ゴールデンウィークを避けて、教授に頼み込んだ。
大学は、大学独自のカレンダーがあって、休日でも授業があったりするから。
篤志には、今日は会っていない。
食事は要らないと言われたので、わざわざ顔を見せに行くこともない。
出かける前に、菜都美の荷物と俺の荷物を纏めて、箱に入れてきた。
拠点が決まったら、送ってもらえばいいと思って、大きなリュックとベビーカーに持てるだけの荷物を持ってきた。
残りの一ヶ月、この家に住んでもいいと思っている。
2
あなたにおすすめの小説
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる