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仏壇を小さな物に替えた。
引っ越し業者を頼んで、菜都美のベッドや兄ちゃんと菜々美さんが用意していた物を運んでもらった。
アルバムや思い出になる物も残しておいた。
赤ちゃんの菜都美に、真実を伝える時に寂しく思わない程度の物を箱に詰めた。
なんだかんだと荷物は多い。すぐに必要にならない物は、篤志の家の篤志の部屋に置かせてもらった。
余分な荷物を片付けたら、家の中がスッキリしてしまった。
もうこの家の中に家族の気配も感じられない。
工場長が、俺を探しに来て、家の中を見ると、涙を流した。
「小野田さん、何かありましたか?」
「社長の連絡先を残して置いてください。あと、現在受けている仕事は、数日中に終わりますが、新規の仕事は受けてもいいですか?」
「継続の仕事は受けて構いません。俺も何も聞いていないので、短期の仕事だけを受けるようにしてもらえますか?」
「分かりました」
俺は工場長と電話番号の交換をした。
篤志が社員名簿をコピーして持ってきてくれた。
確かに必要な物だ。
事務は母ちゃんと菜々美さんがしていたので、引き継ぎはないけれど、書類が綺麗に纏められていたので、見れば分かる。
俺は小野田さんを引き連れて、工場に顔を出した。
寂しいが、そろそろ出かける時間だ。
篤志は先に実家に戻って、菜都美の準備に行ってくれた。
「皆さん、急な事故が起きて、これから仕事内容も変わるかもしれませんが、慣れてください。俺もまだ慣れていないので、お互いに前を向いて変化を受け入れましょう。近いうちに、本社から、住み込みの社員が派遣されてくると思いますが、よろしくお願いします」
俺は皆の前で頭を下げた。
社長は俺になったが、きっと兄ちゃんの方が何倍も上手くやっていけるような気がしたが、もう兄ちゃんはいないから仕方がない。
自宅の施錠をして、篤志の家に行く。
歩いて2~3分で到着するほど近所だ。
家の前に到着すると、家の中から笑い声が聞こえた。
(俺の家もみんな仲良しだったんだよ)
心の中で呟きながら、インターフォンを押すと、直ぐに扉が開いた。
「入れよ」
「お邪魔します」
扉を開けたのは篤志だけれど、篤志の後ろには菜都美が叔母さんに抱かれていた。
(母ちゃんも菜都美を抱きたかったよな)
叔母さんの腕の中の菜都美を見て、俺は気持ちを変えるために、両頬を叩いた。
「よし」
もうくよくよしない。
「真くん、菜都美ちゃんを抱かせてくれてありがとうね」
「いいえ、お世話をしていただきありがとうございます」
俺は叔母さんにお礼を言った。
「家の方はもういいのか?」
「鍵も掛けてきた。社員にもお願いしてきた」
「それなら、戻ろう」
「うん」
篤志の車にチャイルドシートが後部座席に着いている。
「荷物は積んであるから」
「ありがとう」
篤志は叔母さんから菜都美を受け取るとチャイルドシートに寝かせた。
「真は、今日から菜都美の隣な」
「うん」
反対側から後部座席に乗る。
「困ったことがあれば、言いなさいね」
「叔母さん、ありがとう」
「いいえ」
「それじゃ、行くわ」
「スピード出しちゃ駄目よ」
「分かっているって」
篤志は叔母さんに手を振って、車を出発させた。
菜都美は眠っている。
「菜都美、寝てるだろう。真も少し眠っておけ。目の下の隈、凄いぞ」
「それじゃ、目を閉じてるよ」
「そうしろ」
篤志はカーステレオの音を下げてくれた。
確かに疲れていた。
引っ越し業者を頼んで、菜都美のベッドや兄ちゃんと菜々美さんが用意していた物を運んでもらった。
アルバムや思い出になる物も残しておいた。
赤ちゃんの菜都美に、真実を伝える時に寂しく思わない程度の物を箱に詰めた。
なんだかんだと荷物は多い。すぐに必要にならない物は、篤志の家の篤志の部屋に置かせてもらった。
余分な荷物を片付けたら、家の中がスッキリしてしまった。
もうこの家の中に家族の気配も感じられない。
工場長が、俺を探しに来て、家の中を見ると、涙を流した。
「小野田さん、何かありましたか?」
「社長の連絡先を残して置いてください。あと、現在受けている仕事は、数日中に終わりますが、新規の仕事は受けてもいいですか?」
「継続の仕事は受けて構いません。俺も何も聞いていないので、短期の仕事だけを受けるようにしてもらえますか?」
「分かりました」
俺は工場長と電話番号の交換をした。
篤志が社員名簿をコピーして持ってきてくれた。
確かに必要な物だ。
事務は母ちゃんと菜々美さんがしていたので、引き継ぎはないけれど、書類が綺麗に纏められていたので、見れば分かる。
俺は小野田さんを引き連れて、工場に顔を出した。
寂しいが、そろそろ出かける時間だ。
篤志は先に実家に戻って、菜都美の準備に行ってくれた。
「皆さん、急な事故が起きて、これから仕事内容も変わるかもしれませんが、慣れてください。俺もまだ慣れていないので、お互いに前を向いて変化を受け入れましょう。近いうちに、本社から、住み込みの社員が派遣されてくると思いますが、よろしくお願いします」
俺は皆の前で頭を下げた。
社長は俺になったが、きっと兄ちゃんの方が何倍も上手くやっていけるような気がしたが、もう兄ちゃんはいないから仕方がない。
自宅の施錠をして、篤志の家に行く。
歩いて2~3分で到着するほど近所だ。
家の前に到着すると、家の中から笑い声が聞こえた。
(俺の家もみんな仲良しだったんだよ)
心の中で呟きながら、インターフォンを押すと、直ぐに扉が開いた。
「入れよ」
「お邪魔します」
扉を開けたのは篤志だけれど、篤志の後ろには菜都美が叔母さんに抱かれていた。
(母ちゃんも菜都美を抱きたかったよな)
叔母さんの腕の中の菜都美を見て、俺は気持ちを変えるために、両頬を叩いた。
「よし」
もうくよくよしない。
「真くん、菜都美ちゃんを抱かせてくれてありがとうね」
「いいえ、お世話をしていただきありがとうございます」
俺は叔母さんにお礼を言った。
「家の方はもういいのか?」
「鍵も掛けてきた。社員にもお願いしてきた」
「それなら、戻ろう」
「うん」
篤志の車にチャイルドシートが後部座席に着いている。
「荷物は積んであるから」
「ありがとう」
篤志は叔母さんから菜都美を受け取るとチャイルドシートに寝かせた。
「真は、今日から菜都美の隣な」
「うん」
反対側から後部座席に乗る。
「困ったことがあれば、言いなさいね」
「叔母さん、ありがとう」
「いいえ」
「それじゃ、行くわ」
「スピード出しちゃ駄目よ」
「分かっているって」
篤志は叔母さんに手を振って、車を出発させた。
菜都美は眠っている。
「菜都美、寝てるだろう。真も少し眠っておけ。目の下の隈、凄いぞ」
「それじゃ、目を閉じてるよ」
「そうしろ」
篤志はカーステレオの音を下げてくれた。
確かに疲れていた。
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