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4   兄から離れる覚悟

6   誰かが追いかけてきます

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 蘭々と別れて、自宅に帰ろうと暗い夜道を歩いていると、誰かが前方から走ってくる。
「亜里砂っ!」
「ひっ!」
 深夜なのに、名前を呼ばれてビックリして逃げ出す。
(嫌だよ、もう。今度は何?)
 亜里砂は必死に走り、今来た道を走って戻っていく。
 坂を下って、地下鉄のある通りへ向かって行く。そこなら人がいるだろう。
 息が切れて、亜里砂は路上駐車の車の陰に隠れる。
 暗い夜道の中、男性らしい陰が猛スピードで通り過ぎて行った。
 少し遠回りになるが、道を変えよう。
 左右を確認して、道路を渡って、横道に入る。
 怖いので走って行く。
 また陰が追いかけてくる。
(もういやぁ)
 亜里砂は走るのが遅い。昔からかけっこは苦手だ。
 背後から腕を掴まれて、悲鳴をあげるが、その口を片手で塞がれた。
「頼む。もう逃げないでくれ」
 ゼイゼイと荒い呼吸が耳元で言う。
 亜里砂も息を乱している。
 微かにシトラスのトワレの香りがした。
「お兄ちゃん?」
「なんで逃げるんだよ」
「追いかけられたら怖いよ」
 二人で息を乱し、ゼイゼイ言っている。
「迎えに来たんだ。遅いから」
「せめて電話してよ」
「電話に出ないくせに。メールも着信音変えてるだろう?」
「なんで知ってるの?」
「見てればわかる」
 本当は亜里砂のスマホを弄ったとき、確認したけど、それは秘密だ。
「なんの用?」
「すぐに会わせたい人がいるんだ」
「こんな時間に?」
 深夜の1時過ぎだ。
 さすがにいろいろありすぎて、亜里砂も疲れていたし、二人でいるのも避けたい。
 好きすぎて、憎しみさえ湧いてくる。
(もう放っておいて、さっさと結婚したらいいのに。そうしたら、私も諦めがつく。お兄ちゃんのこと思い出に変えられると思う)
「今日は帰って寝たい」
「すぐに済むから」
 友麻は強引だった。
「どこ行くの?」
「いいから、ついてきて」
 友麻は亜里砂の手を握ったまま離さなかった。

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