上 下
9 / 38
1   二度目の家族

しおりを挟む


「お父さん、ごめんなさい」
「怪我はないか?」
「すみません」
 校長と担任、その場に居合わせた教師が頭を下げた。
「お昼休みに水を掛けられたらしいです。先ほど下校時に石を投げられ、背中に痣ができています。病院で診断書をもらってきてください。怪我をさせた生徒のリストです。警察に届けてください」
「わかりました」
「警察に届けるんですか?」
「そういう規則になっています。こちらでは退学処分をします。水をかけた生徒は、防犯カメラと聞き取り調査で探し出します」
「水をかけた生徒は謹慎処分にします。二度目は退学です」
 あまりに厳しい規則に、亜里砂は言葉が出なかった。
 タクシーに乗せられて、やっと謝罪ができた。
「お父さん、ごめんなさい。お仕事の邪魔をして」
「そんなことはいい」
「お母さんにも早く帰ってきてって言われていたのに」
「連絡はしておいた」
「ごめんなさい」
 病院に連れてこられて、写真も撮られた。
 その足で警察に被害届を出した。
 亜里砂を家にいったん送ると、父親の祐輔は学校に行き診断書を叩きつけるように置いた。
「うちの亜里砂にこれ以上何かあったら、学校も訴えますから」
 顔を引きつらせる教師を置いて、祐輔は急いで家に戻った。
しおりを挟む

処理中です...