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1 二度目の家族
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「亜里砂、ねえ、これどうしよう」
学校に着くと親友の水木蘭々が走ってきた。
「どうかしたの?」
「下駄箱にいっぱい何かが入っているの」
手を引かれて、蘭々の下駄箱の中を見ると、封筒がたくさん入っていた。
「果たし状?」
亜里砂は一枚を抜くと、手紙を開いた。
「あー、ラブレターみたいよ」
「下駄箱に入れるなんて、汚いわ」
お嬢様で潔癖症の蘭々は、下駄箱の中のラブレターがすべて汚物に見えるらしい。
「あー、じゃ捨てちゃう?」
「うんうんお願い」
亜里砂は蘭々の下駄箱から封筒を取り出していく、軽く30通くらいある手紙をいったん下に置いて、蘭々を見上げる。
「誰からか知りたくない?」
「私、俊くんしか興味ないの」
「あっ、そう。焼却場に直行しちゃうよ」
「いいよ」
亜里砂は鞄を肩に掛けて、封筒を両手で持ち校舎裏に歩いて行く。
蘭々もついてくる。
「ごめんね、亜里砂」
「いいよ。蘭々の潔癖症を知らないこの人たちが悪いんだからさ」
焼却場まで来ると、さすがに生徒はいない。
カタンと蓋を開けて、手紙を中に放り込んでいく。
「暁の矢よ、この汚らわしいき紙を浄化せよ」
ついでに振りまでつけて、最後にパタンと蓋を閉める。
「さあ、終わった。さあ姫よ。教室までいざ参ろう」
亜里砂はおどけて、蘭々に言って、下駄箱まで戻っていく。
「亜里砂って面白い」
「それほどでもないよ」
途中の水道で汚れた手を洗って、ハンカチで手を拭う。
「亜里砂って勇ましくってかっこいい」
「私、勇ましくなんかないよ。ただ蘭々を守ってあげたかっただけ」
「亜里砂がピンチな時は、いつでも守ってあげる」
「ありがとう」
靴を履き替えて、教室に向かう途中で蘭々の思い人を見つける。
「蘭々、木下俊、あそこにいるよ」
「わぁ、ほんとだ。お話したいな」
「話しかけてみなよ」
「だって異性に話しかけるなんて、はしたない」
「はしたない?」
(大正時代のお嬢様ですか?)
確かに蘭々はお嬢様だけど。
蘭々の父は、外資系IT企業の社長だ。
高校の入学式の時、亜里砂の両親と盛り上がって話していたけれど、家柄はきっと亜里砂と変わらないはずだ。
亜里砂の父は引き手あまたのプロジェクトマネージャーで母は人気ブランドのデザイナー兼社長。新しい家族になり、亜里砂は生活水準が一気に上がった。
(本物のお嬢様だから、なのかな?純金のお嬢様と金箔のお嬢様。やっぱり重さが違うや)
亜里砂は大きく息を吸うと、「俊」と叫んで屈み込んだ。
おっとりしている蘭々は、俊と目が合い。頬を赤らめて手を振っている。
「もう亜里砂ったら、はしたないからって言ったでしょう」
「でも、手を振ってくれたでしょ?」
「そうだけど」
「良かったね。次は自分で声をかけてね」
亜里砂は屈んだ体を起こすと、教室に向かって歩き出した。
目の前から、木下俊が走ってきた。
「亜里砂ちゃんだろう?声をかけたの」
「うん、まあ、そうだけど」
「ねえ、僕と付き合わない?」
「はぁ?」
背後から蘭々の視線が突き刺さる。
「無理」
亜里砂は、蘭々を置いて俊の前から走り出した。
「亜里砂、ねえ、これどうしよう」
学校に着くと親友の水木蘭々が走ってきた。
「どうかしたの?」
「下駄箱にいっぱい何かが入っているの」
手を引かれて、蘭々の下駄箱の中を見ると、封筒がたくさん入っていた。
「果たし状?」
亜里砂は一枚を抜くと、手紙を開いた。
「あー、ラブレターみたいよ」
「下駄箱に入れるなんて、汚いわ」
お嬢様で潔癖症の蘭々は、下駄箱の中のラブレターがすべて汚物に見えるらしい。
「あー、じゃ捨てちゃう?」
「うんうんお願い」
亜里砂は蘭々の下駄箱から封筒を取り出していく、軽く30通くらいある手紙をいったん下に置いて、蘭々を見上げる。
「誰からか知りたくない?」
「私、俊くんしか興味ないの」
「あっ、そう。焼却場に直行しちゃうよ」
「いいよ」
亜里砂は鞄を肩に掛けて、封筒を両手で持ち校舎裏に歩いて行く。
蘭々もついてくる。
「ごめんね、亜里砂」
「いいよ。蘭々の潔癖症を知らないこの人たちが悪いんだからさ」
焼却場まで来ると、さすがに生徒はいない。
カタンと蓋を開けて、手紙を中に放り込んでいく。
「暁の矢よ、この汚らわしいき紙を浄化せよ」
ついでに振りまでつけて、最後にパタンと蓋を閉める。
「さあ、終わった。さあ姫よ。教室までいざ参ろう」
亜里砂はおどけて、蘭々に言って、下駄箱まで戻っていく。
「亜里砂って面白い」
「それほどでもないよ」
途中の水道で汚れた手を洗って、ハンカチで手を拭う。
「亜里砂って勇ましくってかっこいい」
「私、勇ましくなんかないよ。ただ蘭々を守ってあげたかっただけ」
「亜里砂がピンチな時は、いつでも守ってあげる」
「ありがとう」
靴を履き替えて、教室に向かう途中で蘭々の思い人を見つける。
「蘭々、木下俊、あそこにいるよ」
「わぁ、ほんとだ。お話したいな」
「話しかけてみなよ」
「だって異性に話しかけるなんて、はしたない」
「はしたない?」
(大正時代のお嬢様ですか?)
確かに蘭々はお嬢様だけど。
蘭々の父は、外資系IT企業の社長だ。
高校の入学式の時、亜里砂の両親と盛り上がって話していたけれど、家柄はきっと亜里砂と変わらないはずだ。
亜里砂の父は引き手あまたのプロジェクトマネージャーで母は人気ブランドのデザイナー兼社長。新しい家族になり、亜里砂は生活水準が一気に上がった。
(本物のお嬢様だから、なのかな?純金のお嬢様と金箔のお嬢様。やっぱり重さが違うや)
亜里砂は大きく息を吸うと、「俊」と叫んで屈み込んだ。
おっとりしている蘭々は、俊と目が合い。頬を赤らめて手を振っている。
「もう亜里砂ったら、はしたないからって言ったでしょう」
「でも、手を振ってくれたでしょ?」
「そうだけど」
「良かったね。次は自分で声をかけてね」
亜里砂は屈んだ体を起こすと、教室に向かって歩き出した。
目の前から、木下俊が走ってきた。
「亜里砂ちゃんだろう?声をかけたの」
「うん、まあ、そうだけど」
「ねえ、僕と付き合わない?」
「はぁ?」
背後から蘭々の視線が突き刺さる。
「無理」
亜里砂は、蘭々を置いて俊の前から走り出した。
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