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プロローグ
プロローグ
しおりを挟む【アプリのデーターを消去しますか?】
【YES】【NO】
【YES】
【アインストールしますか?】
【YES】【NO】
【YES】
【アプリをダウンロードしますか?】
【YES】【NO】
【YES】
「亜里砂何してるんだ?」
「あ、うん。ゲームうまくいかなかったから、最初からやり直したくて、アインストールしたの」
紅葉亜里砂はスマホの操作に夢中になっていた。その画面を父親の紅葉祐輔が覗き込んで、亜里砂の頭をくちゃくちゃと撫でた。
「亜里砂、うまくいかなかったら、最後まで最善を尽くしてごらん。ゲームでも人生でも途中で投げ出したら駄目だろう?」
「たかがゲームでしょう?この子くじ運悪いし。ステフリ間違えたし、髪型も気に入らなかったから、最初から作り直すの」
「アインストールしたら消えてしまうんだろう?」
「うん」
12歳の亜里砂は、プロジェクトマネージャーの父にじっと見つめられる。
「いいのか?」
「もう押しちゃった」
父以上にかっこいい男性はいないと思っている亜里砂は、父が大好きだ。
母は、亜里砂が小学校に入る前に、児童虐待と傷害の容疑で逮捕されている。
児童虐待を受けていたのは亜里砂だ。
腕にはまだたばこを押しつけられた火傷の痕や熱湯をかけられた痕が残っている。
父は昔、家に帰って来ないほど仕事に追われていた。そんなとき、母が育児に疲れ、他に男を作り亜里砂に虐待を始めた。
幼い亜里砂は、その虐待で死にかけた。
父は亜里砂の痩せこけて傷ついた体を見て、多忙な仕事を辞めてフリーランスの仕事に変えた。
それ以来、父は亜里砂から目を離さなくなった。
一時期は心を病んでいた亜里砂も、父の優しさに心は癒えていった。
「紅葉亜里砂さん」
「はーい」
「お父さん、スマホ持っていて」
今は腕に残った火傷痕の治療を受けている。
幼い頃、保護された時に治療は受けているが、父は亜里砂の体から痕跡も残さないほど綺麗にしてくれている。
治療は高額だが、父は生活を質素にしてもそれを辞めなかった。
「お父様もご一緒に」
亜里砂の後から。祐輔も診察室入って行く。
「お父さん、ありがとう。亜里砂の体、リセットされた」
「おめでとう。頑張ったな、亜里砂」
小さなマンショに戻って、二人で小さなケーキでお祝いした。
「亜里砂、お父さん、話があるんだ」
「なに?」
「お父さん、再婚したいんだ」
「え?」
「新しいお母さん、いらないか?」
「新しいお母さん?」
「亜里砂も中学生になるだろう?体の治療も終わったし、いい区切りだろ?」
「私、お父さんがいればいい」
急に怖くなって、席を立つと祐輔にしがみついた。
「今度のお母さんは優しいよ」
「お父さんは、結婚したいの?」
「亜里砂は可愛いが、結婚もしたい」
亜里砂は祐輔にしがみつきながら、考える。
警察に保護されたから、父は仕事を辞め、ずっと亜里砂のために時間もお金も使ってくれた。愛情もいっぱい注がれて、心も癒えた。
「ゲームクリアーなんだね?」
「まだ全クリはしてないけど、これからは新しい家族を作っていかないか?」
「わかった。亜里砂を虐めないお母さんにしてね」
祐輔は嬉しそうに微笑んで亜里砂を抱きしめた。
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