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10 結婚について
11 婚約の申し込み(3)
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ハスタは扉をノックして、扉を開いた。
ビエントはソファーから立ち上がった。
ハスタの後から、リリーの両親が入ってきた。
「お待たせしたようで」
ハスタはそう言うと、「どうぞおかけください」と椅子を勧めた。
ハスタと両親が目の前に座った。
「リリーは会いたくないとおっしゃったのですか?」
ビエントはそこにリリーの姿がないことに、ショックを受けた。
「リリーは買い物の途中で熱を出して倒れた。今は眠っています」
「……熱を?」
「真冬に春の装いだったと侍女から聞いています」
父は低い声で言った。怒りが滲み出ている。
「すみませんでした。一番にリリーの事を考えなければいけなかったのに、母の策略でリリーから遠ざけられ、洋服すら買いに行かせてもらえず、国のために騎士団で戦って来たリリーに対しても、国王も王妃も労いもせず。とても恥ずかしい両親です。私は国を捨てるつもりで、リリーの元に来ました」
「王太子なのに、国を捨てられるのですか?」
ハスタはビエントの顔をじっと見た。
ハスタも怒りが滲み出ている。
大切な妹を傷つけられて、許せないのだろう。
ビエントは誠実であろうと心に誓った。
「我が国のために、忠誠を誓い働いてきましたが、好きな女性すら守れず、母の嫌がらせと子供っぽい虐めで、リリーを悲しめ、孤独に追いやった。両親には嫌気が差しております。リリーとこのまま婚約を継続させていただきたく、国を出てきました」
「リリーはなんと言うだろうか?」
父は一言告げた。
「リリーに会わせていただけませんか?」
「病床で伏せておる」
「近くにいられるだけでいいのです」
ビエントは見るからに怒っているリリーの父に、頭を下げる。
ここで許してもらわなくては、リリーと二度と会えなくなるかもしれない。
「あなた、会わせてあげましょう。リリーはあの晩、冷たい体で、泣いて帰って来ました。本当は婚約破棄をしたくはなかったのでしょう」
リリーの母が、宥めてくれた。
リリーの心情を考えて、会わせてくれると言ってくれた。
「よかろう。部屋は客間を使うといい。使用人に案内させよう」
「ありがとうございます」
ビエントは深く頭を下げた。
客間に案内されたビエントは荷物を置き、コートを脱ぐと、リリーの部屋に案内された。
「ビエント様」
モリーとメリーが驚いた顔をしてビエントを出迎えた。
椅子をベッドの近くに置くと、「どうぞ」とビエントに勧める。
「ありがとう」
ビエントは婚約のネックレスをリリーにはめた。
リリーの手を握り、苦しそうなリリーを見つめる。蒼白な顔をして頬だけがピンク色に染まっている。手を握っただけで、高熱だと分かる。
「疲れが出たんだね。労ってあげられなくてごめんね」
騎士団から帰った日、お店が閉まる時間でも、ビエントなら店を開けてもらうことはできた。暖かい洋服をその日のうちに着せてあげれば良かった。寒い姿で何日も放っておかれたら、実家に帰りたくなっても仕方がない。アストラべー王国で、既に体調を崩していたのかもしれない。
ビエントはソファーから立ち上がった。
ハスタの後から、リリーの両親が入ってきた。
「お待たせしたようで」
ハスタはそう言うと、「どうぞおかけください」と椅子を勧めた。
ハスタと両親が目の前に座った。
「リリーは会いたくないとおっしゃったのですか?」
ビエントはそこにリリーの姿がないことに、ショックを受けた。
「リリーは買い物の途中で熱を出して倒れた。今は眠っています」
「……熱を?」
「真冬に春の装いだったと侍女から聞いています」
父は低い声で言った。怒りが滲み出ている。
「すみませんでした。一番にリリーの事を考えなければいけなかったのに、母の策略でリリーから遠ざけられ、洋服すら買いに行かせてもらえず、国のために騎士団で戦って来たリリーに対しても、国王も王妃も労いもせず。とても恥ずかしい両親です。私は国を捨てるつもりで、リリーの元に来ました」
「王太子なのに、国を捨てられるのですか?」
ハスタはビエントの顔をじっと見た。
ハスタも怒りが滲み出ている。
大切な妹を傷つけられて、許せないのだろう。
ビエントは誠実であろうと心に誓った。
「我が国のために、忠誠を誓い働いてきましたが、好きな女性すら守れず、母の嫌がらせと子供っぽい虐めで、リリーを悲しめ、孤独に追いやった。両親には嫌気が差しております。リリーとこのまま婚約を継続させていただきたく、国を出てきました」
「リリーはなんと言うだろうか?」
父は一言告げた。
「リリーに会わせていただけませんか?」
「病床で伏せておる」
「近くにいられるだけでいいのです」
ビエントは見るからに怒っているリリーの父に、頭を下げる。
ここで許してもらわなくては、リリーと二度と会えなくなるかもしれない。
「あなた、会わせてあげましょう。リリーはあの晩、冷たい体で、泣いて帰って来ました。本当は婚約破棄をしたくはなかったのでしょう」
リリーの母が、宥めてくれた。
リリーの心情を考えて、会わせてくれると言ってくれた。
「よかろう。部屋は客間を使うといい。使用人に案内させよう」
「ありがとうございます」
ビエントは深く頭を下げた。
客間に案内されたビエントは荷物を置き、コートを脱ぐと、リリーの部屋に案内された。
「ビエント様」
モリーとメリーが驚いた顔をしてビエントを出迎えた。
椅子をベッドの近くに置くと、「どうぞ」とビエントに勧める。
「ありがとう」
ビエントは婚約のネックレスをリリーにはめた。
リリーの手を握り、苦しそうなリリーを見つめる。蒼白な顔をして頬だけがピンク色に染まっている。手を握っただけで、高熱だと分かる。
「疲れが出たんだね。労ってあげられなくてごめんね」
騎士団から帰った日、お店が閉まる時間でも、ビエントなら店を開けてもらうことはできた。暖かい洋服をその日のうちに着せてあげれば良かった。寒い姿で何日も放っておかれたら、実家に帰りたくなっても仕方がない。アストラべー王国で、既に体調を崩していたのかもしれない。
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