90 / 117
10 結婚について
7 ビエント
しおりを挟む
ビエントはリリーの持ち物がなくなった部屋で膝をついた。
リリーの魔力を初めて目にした。
最初に教えたのは風魔法だった。
今では魔力を自在に操れるほどの魔力を手に入れていた。
この国でも、リリーほどの魔力を持った者はいないだろう。
「ビエント、リリー嬢を止められなくてすまない。あれほどの魔力を初めて目にした」
父王がビエントの横に膝をついた。
「アリアが、どうしても幼いリリーでは物足りないと言って聞かなかったのだ。嫁と姑の問題は我々、男には分からぬ。リリー嬢が戻ってから、アリアがリリーを避けて虐めているのに気付いていた。シオンの事もあり、シオンが危険な事をしたのを、年下のリリーが告げ口したことも気に入らなかったようだ」
「そんな些細なことで、私は婚約者をなくしたのですか?2年間以上、二人で愛を育んできた。初めは幼いと思ったが、リリーは賢かった。覚えも良く、よく懐いでくれた。連れて帰りたくなって笛を渡した。リリーはいつも笛を付けていてくれた。愛されていると思えた。私を追ってアストラべー王国にやって来たのだ。魔物の森で魔物に襲われ落下したと聞いた。それから自分の力を磨いていったのだ。ただ私に会うために。そんなに想われて私は幸せだった。やっと戻って来たと思ったらシオンの事で、もっと危険な北の魔物の森へ旅立たせてしまった。北の魔物に森には人食いコウモリがいて、羽音がアストラべー王国の国民には拷問のような音になり殉死者も多く出た。リリーが耳栓を思いついたのだ。ダンジョンの視察にも怯まず出向いた。作戦を立てたのはリリーだ。耳栓に毒マスクを用意して、毎日の狩りで慣れていった。運搬はリリーしかできなかったそうだ。シオンが無理させた時は、4往復、180人以上を運んだそうだ。私は騎士団長と連絡を取っていたから、リリーの様子をいつも聞いていた。リリーは会う度に新しい魔術を使えるようになっていた。倒れる寸前まで練習をするほど努力家で、誇りに思っていた。帰って来たら、いっぱい褒めて、いっぱい甘やかしてやろうと思っていたのに。仕事を入れたのは母上ですね?」
「自分の子が可愛いのは、どこの家庭でも同じです」
「その可愛い娘を、母上にリリーの母上は預けたのですよ。きっと自宅では寂しくて泣かれたでしょう」
母は黙った。
「リリーは13歳で家を出て、苦労をしながら旅に出たのです。シオンがもし13歳で家を出たら、どんなに心配になったか想像できますか?リリーはしかも女の子です」
「私が全部、悪かったのね」
母がヒステリーな声を上げた。
「その通りです。もう議会にも出ている息子の婚約者への嫌がらせは、私に対しての嫌がらせと同じです。おわかりですか?」
「わかったわ。ビエントの好きにすればいいわ」
「その言葉を、もっと早く聞きたかった」
ビエントは雑然と散らかった部屋の中で立ち上がると、開きっぱなしの宝石箱の蓋を閉めた。
「私は連れ戻しにいきますけど、リリーが嫌がったら、フラーグルム王国で過ごすかもしれません。アストラべー王国の王族は酷い仕打ちをすると、家にも入れてもらえないかもしれません。リリーの父親は厳格な方だ。王室とも近い存在ですので、恥をかくかもしれませんね」
ビエントはリリーの部屋から出て行った。
自分の部屋に戻り、荷造りをする。
「ビエント」
父が声をかけてきた。
「すまなかった」
「もう遅いです。私はこの国を捨てるつもりで出て行きます」
「必ず、戻って来い」
「約束はできません」
父はいつまでもビエントの背中を見ていた。
リリーの魔力を初めて目にした。
最初に教えたのは風魔法だった。
今では魔力を自在に操れるほどの魔力を手に入れていた。
この国でも、リリーほどの魔力を持った者はいないだろう。
「ビエント、リリー嬢を止められなくてすまない。あれほどの魔力を初めて目にした」
父王がビエントの横に膝をついた。
「アリアが、どうしても幼いリリーでは物足りないと言って聞かなかったのだ。嫁と姑の問題は我々、男には分からぬ。リリー嬢が戻ってから、アリアがリリーを避けて虐めているのに気付いていた。シオンの事もあり、シオンが危険な事をしたのを、年下のリリーが告げ口したことも気に入らなかったようだ」
「そんな些細なことで、私は婚約者をなくしたのですか?2年間以上、二人で愛を育んできた。初めは幼いと思ったが、リリーは賢かった。覚えも良く、よく懐いでくれた。連れて帰りたくなって笛を渡した。リリーはいつも笛を付けていてくれた。愛されていると思えた。私を追ってアストラべー王国にやって来たのだ。魔物の森で魔物に襲われ落下したと聞いた。それから自分の力を磨いていったのだ。ただ私に会うために。そんなに想われて私は幸せだった。やっと戻って来たと思ったらシオンの事で、もっと危険な北の魔物の森へ旅立たせてしまった。北の魔物に森には人食いコウモリがいて、羽音がアストラべー王国の国民には拷問のような音になり殉死者も多く出た。リリーが耳栓を思いついたのだ。ダンジョンの視察にも怯まず出向いた。作戦を立てたのはリリーだ。耳栓に毒マスクを用意して、毎日の狩りで慣れていった。運搬はリリーしかできなかったそうだ。シオンが無理させた時は、4往復、180人以上を運んだそうだ。私は騎士団長と連絡を取っていたから、リリーの様子をいつも聞いていた。リリーは会う度に新しい魔術を使えるようになっていた。倒れる寸前まで練習をするほど努力家で、誇りに思っていた。帰って来たら、いっぱい褒めて、いっぱい甘やかしてやろうと思っていたのに。仕事を入れたのは母上ですね?」
「自分の子が可愛いのは、どこの家庭でも同じです」
「その可愛い娘を、母上にリリーの母上は預けたのですよ。きっと自宅では寂しくて泣かれたでしょう」
母は黙った。
「リリーは13歳で家を出て、苦労をしながら旅に出たのです。シオンがもし13歳で家を出たら、どんなに心配になったか想像できますか?リリーはしかも女の子です」
「私が全部、悪かったのね」
母がヒステリーな声を上げた。
「その通りです。もう議会にも出ている息子の婚約者への嫌がらせは、私に対しての嫌がらせと同じです。おわかりですか?」
「わかったわ。ビエントの好きにすればいいわ」
「その言葉を、もっと早く聞きたかった」
ビエントは雑然と散らかった部屋の中で立ち上がると、開きっぱなしの宝石箱の蓋を閉めた。
「私は連れ戻しにいきますけど、リリーが嫌がったら、フラーグルム王国で過ごすかもしれません。アストラべー王国の王族は酷い仕打ちをすると、家にも入れてもらえないかもしれません。リリーの父親は厳格な方だ。王室とも近い存在ですので、恥をかくかもしれませんね」
ビエントはリリーの部屋から出て行った。
自分の部屋に戻り、荷造りをする。
「ビエント」
父が声をかけてきた。
「すまなかった」
「もう遅いです。私はこの国を捨てるつもりで出て行きます」
「必ず、戻って来い」
「約束はできません」
父はいつまでもビエントの背中を見ていた。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
1,289
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる