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8   北のダンジョン攻略

3   ダンジョンへの攻略(2)

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「しっかりマスクをしろよ」
「できましたわ」
「私もできましたわ」
「俺も大丈夫だ」
「俺も」

 ガスマスクはパーティーごとできちんとはめられているか確かめられる。

「よし、OK!」

 パーティーリーダーのアハトが、パーティーの仲間のガスマスクの状態を確認した。
 準備ができたグループから洞窟の中に入っていく。
 騎士団組は完璧に準備はできたが、魔法学校の生徒達は、まだはめられず、もたもたしている。
 目の前でダンジョンの扉が閉まりかけて、マスクもはめずに飛び込んできたバカが数人。
 花のボスは黄色いガスを吐き出しながら歩いている。

「早くマスクをはめないと危険よ。魔物に気付かれたら、大変な事になるのよ」
 
 リリーは、口うるさく言うが、シオン王子はまだマスクがはめられていない。

「死ぬわよ」
「うるさい」
「早くはめろ、攻撃できないだろう?」

 騎士団の連中は苛々している。

「シオン様、はめましょうか?」

 アトミスが近づいてシオンの手にあるマスクに触れる。

「おまえは、俺の奴隷だからな」

 アトミスの手が止まった。

「ここで死んでみたら如何かしら?」

 リリーの中で理性の塊がプツリとキレる。

「なんだと?」
「お黙りなさい」

 リリーはアトミスの手からマスクを取ると、乱暴にシオンにマスクを付けてやった。ついでに装着できてない残りの連中のも素早く付ける。
 リリーの機嫌は途端に悪くなった。
 アトミスのことを奴隷というシオン王子は、まったく婚約者として相応しくない。
 威張ることしかできないクズだ。

「リリー嬢、ファーストアタックだ」
「了解ですわ」

 リリーは空中に浮かんで杖を構える。

「では、始めますわよ。ラウガン、サンダーストーム、ウォールウイング」
「フレイム。イクスプロージョン」

 リリーが戦闘を始めると、アハトが続いた。
 ここは風魔法と火魔法がいいだろうと話し合っていたから、風魔法がトルネードで生まれてきた花を巻き上げて、火魔法のイクスプロージョンで爆破する。
 始まってみれば、あっという間に終わる。
 また金貨がポケットに入れられた。

「お姫様。結婚してもたまには遊ぼうぜ」

 今度はアハトだった。ワポルとフィジも胸のポケットに金貨を入れてくれる。

「ありがとう。帰りはまた家まで送るわ」
「すごく助かる」

 ボスドロップのブローチを見つけた。手に持つだけでわかる。これは敏捷性だ。早さが強いものだった。それを取って、他を物色する。このボスは早さの指輪やイヤリングを落としている。アトミスの好きそうな青い指輪を見つけて、アトミスの指にはめると、アトミスは微笑しただけだった。

 リリーも金貨を1枚ずつ拾うようにした。ポシェットにしまっていく。ここを攻略したら、魔法のアクセサリーはいなくなるから、そんなにアクセサリーはいらない。いい物だけを持っていこう。後は金貨を拾おう。ビエント様の横に立っても、恥ずかしくないドレスを買えるように……。

 ガスマスクを外して、腰に付けられたフックに引っかけて、洞窟に出るとまだ負傷者がたくさんいて、団長と副団長が運んでいる。

「次は毒蜘蛛よ。前より大きいから刺されたら、その場で死ぬかもしれないわよ」

 リリーはシオンに忠告した。
 まだ一度もシオンが攻撃をしている姿を見ていない。
 リリーは拾いたてのブローチをはめると、杖を回して体を解した。
 ずいぶん、早く動かせる。

「まず風と水で目覚ましの強力なのをかましてやって、出てきた奴は火で焼いて、土で潰していこうか」

 ガースが指示を確認する。

「リリー嬢ファーストアタック頼むワポルとペアで」
「任せてくださいな」
「了解」

 リリーは浮き上がると、高い位置から、「サンダーストーム」をおくった。
 ワポルとはペアでよくやるので、息が合う。魔物がいい感じに痺れてくれている。

 雄叫びが上がり、次の風魔法の術者がトルネードで巻き上げて、サンダーストームで焼き殺している。リリーも負けずと、ライトニング・ウインドを連発する。

 リリーの攻撃は高い位置から、魔物の目と口を狙う。毒蜘蛛が落とした杖で連続攻撃していく。雄叫びを上げるタイミングで、また口の中めがけてライトニング・ウインドを入れると、魔物がパンと弾けた。

「リリー、今回もナイスタイミングだ」
「偶然ですわ」

 赤い腕輪が四つあった。赤色で揃ったネックレスやイヤリングがたくさん出ている。綺麗なので、お揃いで、揃えてみた。金貨も一枚に拾って、鞄にしまう

「アトミスも拾いましょう」
「私はもういらないわ」
「……そうなの?」

 ここの攻略が終われば、戦う事は確かにないかもしれないけれど、普段着でも着けられる。どのお店にも売っていないものだ。 
 金貨をもう一枚入れて、重さの確認をする。子供の鞄は頑丈だから、よほど大丈夫だと思う。残ったアクセサリーを拾って、鞄に入れる。後でアトミスにあげてもいい。
 今日のアトミスは様子がおかしい。

「ラストだ。気を引き締めて行けよ。こいつは人を食う。纏わり付かれたら、振り払う魔法をかけろ」

 ガースが声をあげた。
 部屋に入るとリリーはアトミスの手を握った。

「近くにいらしてね。取り囲まれたら、トルネードかけますわよ」

 アトミスは頷いた。
 シオンは魔法学校の仲間と固まっている。



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