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7 北の魔物の森
6 戦死者
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お腹はすごく空いていた。またアトミスと同じ物を取り、リリーはアトミスよりたくさんお皿に盛った。
アトミスは音に疲弊して食欲が落ちているのか、前より盛り付けが少ない。
美味しそうなパンとバターをもらって、最後にオレンジジュースをトレーに載せる。
アトミスに付いて、アハト達の前に座る。
アハト達もいつもより食欲がないのか、いつもよりも盛り方が少ない。
「いただきます」
リリーは普段と変わらない。
静かに食事を食べて、おかわりにもう一個パンを貰って、オレンジジュースも持ってくる。
「リリーは元気だな」
「ええ、元気よ」
「あの音に悩まされるのかと思うと苦痛だな」
珍しくアハトが弱気な声を出した。
「あんな音は初めてだ」
「志願したことを悔やんでいるよ」
ワポルとフィジも弱気な声を出した。
「そんなに辛いんですの?」
「聞こえないとは羨ましい」
リリーは婚約の笛に触れた。
ビエント様が笛を吹いても聞こえないのは寂しい。
食べ終えて、トレーを片付ける。
「アトミス大丈夫?あんまり食べてなかったみたいよ」
「……食欲も落ちるわよ」
毎日支給される金貨を貰いに、事務所に行くと寄宿舎の前に戦士が四人並び、団長と副団長が外に出ていた。
アハトが団長を呼びに扉を開けると、地面に箱が置かれていた。
リリーは何気なく、箱の中を覗き込んだ。生々しい骨が入っている。
並んでいる四人が泣いている。
「助けることができなくて申し訳ございません」
パーティーリーダーなのだろうか、泣きながら頭を下げていた。
「続けられそうか?」
「少し考えさせてください」
「ミハイルは英雄として、見舞い金と共に故郷へ送り届ける」
「よろしくお願いします」
四人が頭を下げた。
声をかけられず、いったん、寄宿舎の中に戻る。
しばらくして団長は箱を胸に抱き、寄宿舎の中に入ってきた。
「おまえ達、何だ?」
「金貨を貰いに寄りました」アハトが代表で答えた。
「ああ、少し待ってくれ」
団長は箱を机の奥へと置いて、布をかけた。
「コウモリみたいなのにやられたんですか?」
「ああ、あいつらは獰猛だ。おまえ達も気をつけろ」
団長は金庫から金貨を出して、一人二枚ずつ金貨を渡して、署名をするノートを差し出した。
「見舞い金っていくらもらえるのですか?」
「金貨100枚だ。大金になるだろうが、生きていればもっともらえる額だ。生きろよ」
団長は「行きなさいと」とアハトに言った。
外では仲間だった四人が泣きながら副団長と話している。
「行こう、みんな」
アハトは、アトミスの肩に触れて、歩いて行く。アトミスは蒼白な顔色になっている。
「アトミス、戻りましょう」
「……ええ、そうね」
アトミスは胸の前で十字を切って神に祈った。
リリーもその箱に十字を切り神に祈った。
「行きましょう、リリー」
「はい」
リリーはアトミスの後ろを付いていく。
「リリーを危険な場所に連れて来てしまたったわ」
「いいえ、私はアトミスの方が心配よ。食事も食べられないほど、心を傷めている姿を見るのは辛いですわ」
階段を上ると、リリーはアトミスの手を握った。
「私が必ずアトミスを守るわ」
「リリー」
アトミスはリリーを抱きしめた。
「怖いの。あんな姿になってしまうのかと思うと」
「アトミスをあんな姿に絶対にさせません。アハトもワポルもフィジも」
アトミスが何度も頷いている。
「リリーがいてくれて、心強いわ」
「あのコウモリみたいな魔物は、私がやっつけます」
アハトもワポルもフィジも部屋の扉の前に立っていた。
「リリーがいるんだ。俺たちは大丈夫だ。アトミス」
「……そうね」
アトミスは涙を拭って、リリーと手を繋いだ。
「おやすみ、お嬢様達」
「おやすみ、男性諸君」
アハト達は部屋に入っていった。
リリーとアトミスも部屋に入った。
アトミスは音に疲弊して食欲が落ちているのか、前より盛り付けが少ない。
美味しそうなパンとバターをもらって、最後にオレンジジュースをトレーに載せる。
アトミスに付いて、アハト達の前に座る。
アハト達もいつもより食欲がないのか、いつもよりも盛り方が少ない。
「いただきます」
リリーは普段と変わらない。
静かに食事を食べて、おかわりにもう一個パンを貰って、オレンジジュースも持ってくる。
「リリーは元気だな」
「ええ、元気よ」
「あの音に悩まされるのかと思うと苦痛だな」
珍しくアハトが弱気な声を出した。
「あんな音は初めてだ」
「志願したことを悔やんでいるよ」
ワポルとフィジも弱気な声を出した。
「そんなに辛いんですの?」
「聞こえないとは羨ましい」
リリーは婚約の笛に触れた。
ビエント様が笛を吹いても聞こえないのは寂しい。
食べ終えて、トレーを片付ける。
「アトミス大丈夫?あんまり食べてなかったみたいよ」
「……食欲も落ちるわよ」
毎日支給される金貨を貰いに、事務所に行くと寄宿舎の前に戦士が四人並び、団長と副団長が外に出ていた。
アハトが団長を呼びに扉を開けると、地面に箱が置かれていた。
リリーは何気なく、箱の中を覗き込んだ。生々しい骨が入っている。
並んでいる四人が泣いている。
「助けることができなくて申し訳ございません」
パーティーリーダーなのだろうか、泣きながら頭を下げていた。
「続けられそうか?」
「少し考えさせてください」
「ミハイルは英雄として、見舞い金と共に故郷へ送り届ける」
「よろしくお願いします」
四人が頭を下げた。
声をかけられず、いったん、寄宿舎の中に戻る。
しばらくして団長は箱を胸に抱き、寄宿舎の中に入ってきた。
「おまえ達、何だ?」
「金貨を貰いに寄りました」アハトが代表で答えた。
「ああ、少し待ってくれ」
団長は箱を机の奥へと置いて、布をかけた。
「コウモリみたいなのにやられたんですか?」
「ああ、あいつらは獰猛だ。おまえ達も気をつけろ」
団長は金庫から金貨を出して、一人二枚ずつ金貨を渡して、署名をするノートを差し出した。
「見舞い金っていくらもらえるのですか?」
「金貨100枚だ。大金になるだろうが、生きていればもっともらえる額だ。生きろよ」
団長は「行きなさいと」とアハトに言った。
外では仲間だった四人が泣きながら副団長と話している。
「行こう、みんな」
アハトは、アトミスの肩に触れて、歩いて行く。アトミスは蒼白な顔色になっている。
「アトミス、戻りましょう」
「……ええ、そうね」
アトミスは胸の前で十字を切って神に祈った。
リリーもその箱に十字を切り神に祈った。
「行きましょう、リリー」
「はい」
リリーはアトミスの後ろを付いていく。
「リリーを危険な場所に連れて来てしまたったわ」
「いいえ、私はアトミスの方が心配よ。食事も食べられないほど、心を傷めている姿を見るのは辛いですわ」
階段を上ると、リリーはアトミスの手を握った。
「私が必ずアトミスを守るわ」
「リリー」
アトミスはリリーを抱きしめた。
「怖いの。あんな姿になってしまうのかと思うと」
「アトミスをあんな姿に絶対にさせません。アハトもワポルもフィジも」
アトミスが何度も頷いている。
「リリーがいてくれて、心強いわ」
「あのコウモリみたいな魔物は、私がやっつけます」
アハトもワポルもフィジも部屋の扉の前に立っていた。
「リリーがいるんだ。俺たちは大丈夫だ。アトミス」
「……そうね」
アトミスは涙を拭って、リリーと手を繋いだ。
「おやすみ、お嬢様達」
「おやすみ、男性諸君」
アハト達は部屋に入っていった。
リリーとアトミスも部屋に入った。
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