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6   王宮での暮らし

7   ご挨拶

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 実家に帰って、一週間ほど経った頃から、リリーはいい乗り物はないか探して歩いた。
 両親をアストラべー王国に連れて行きたい。
 馬車だと何ヶ月もかかってしまうが、リリーならゆっくり飛んでも3時間はかからない。
 落ちると危険だから、柵があった方が安全だ。魔物の森の寄宿舎に行って乗り物を持ってこようかと思い始めていた時、柵が高い乗り物を見つけた。
 野犬や動物を捕まえた後に、載せる檻だ。
 リリーは父に言って、その檻を買ってもらった。

「これに入るのか?」
「ええ、落ちたら大変ですもの」

 リリーは檻の中に入って、中を磨く。綺麗にして、床にマットを敷いた。

「まるで野犬になるような気分だな」
「柔らかなマットを敷いたので、お尻は痛くはないと思うわ」
「手土産を買ってこなくては」
「何がいいかしら?」
「マフィンは有名ね」
「私が買ってくるから準備をしていてくださる?」

 リリーは空を飛んで、フラーグルムで有名なマフィンのお店に行ってマフィンとクッキーを買った。空を飛んで家に戻ると、両親と兄はよそ行きの服を着ていた。
 着替えの入った鞄と、リリーの洋服の入った大きなバックと赤いバックが準備されていた。リリーのドレスももちろんドレスカバーに入れられて、箱詰めされていた。
 モリーとメリーも荷造りして待っていた。

「モリーとメリーも来てくれるの?」
「お嬢様が生まれたときからお世話をしています。どうぞお連れください」
「お父様、いいのですか?」
「話し相手もいないのなら、モリーとメリーもつれて行くといい」
「ありがとう。モリーとメリー」

 二人は微笑んだ。
 リリーは赤いバックをかけると、黒い大きなバックも背負った。

「座っていた方が安定すると思います。興奮して暴れないでください」
「わかったわ」

 一番興奮しそうな母が答えた。
 家には執事と使用人が残っている。

「行きます」
「行ってらっしゃいませ」

 リリーは檻を持ち上げて、ゆっくり上空に上がって行く。

「怖かったらおっしゃって」

 リリーは飛び始めた。軽くストームをかけていく。

「空から、下を見たのは初めてだ」
「リリー、すごいわ」
「街が小さくなっている」

 モリーとメリーも微笑みながら喜んでいる。
 少しずつスピードを上げていく。

「魔物の森がこれか」
「アストラべー王国が見えるぞ」
「王都ですよ」

 リリーはゆっくり空を飛び出した。いろんな建物はフラーグルム王国とは違う。珍しいだろう。

「王宮の中に入ってしまいますね」
「勝手に入っていいのか?」
「安全な場所がないもの」

 ゆっくり着陸して、檻を開ける。
 両親達が出てくる。

「ずいぶん早かったな」
「今日はゆっくり飛んで来たのよ」
「そうなのか?」

 兄が驚いている。

「少し、待っていただけますか?」

 リリーは飛び立つと二階の自分の部屋の窓が開いていることに気付いた。
 そっと覗くと、ビエントが机に伏せて、眠っていた。

「ビエント様」

 金髪の髪を撫でると、ビエントは目を覚ました。

「リリー、帰って来てくれたんだね」
「両親を連れて来ました。外に出て来てくださいますか?」
「ああ、わかった」

 リリーは下に降りて、玄関の方へと歩いて行く。
 ビエントが走って出てきた。

「リリー」

 ビエントに抱きしめられ、リリーは微笑む。

「リリーが家出をしたのか、心配で……。ずっとリリーの部屋で待っていた」
「お手紙を書いたのに……」

 ビエントは苦笑する。

「こちらよ」

 そっと胸を押して、リリーは歩いて行く。

「乗り物はどこに置いたらいいかしら?」
「どんな乗り物を使ったんだい」
「猛獣を載せる檻よ」
「なんだと!」
「大きくて、柵も上まであって、安全だわ」
「見えなさそうな場所に置いたのだけど。マットを敷いてきたの。雨が降ったらマットが濡れてしまうわ」
「使用人にマットを片付けるように言おう」
「ありがとうございます」

 両親達が正面に出てきた。

「お父様、お母様、ビエント様よ」

 リリーはビエントの手を繋ぐと走り出した。

「突然、お邪魔してすみません。娘が連れて行きたいと聞かなくて」
「遠くまでようこそ。両親を紹介いたします」

 ビエントは恭しくお辞儀をした。






「リリーの父、スパーダ・ニネ・アコラサード伯爵と申します。娘に良縁を戴きありがとうございます」
「ビエントの父、アルジェント・カルコス・アストラべーと申す。隣にいるのが妻の、アリア・ロゼ・アストラべーと申す。リリーさんは我が国の英雄である。息子の婚約者になってもらえて光栄だ」
「英雄でございますか?」
「その通りだ。魔物の森のダンジョン攻略では、一番の功績を残しておる」
「リリー、偉いな」
「えへへ・・・」

 父は嬉しそうに微笑んだ。
 リリーも嬉しそうに微笑んでいる。

「娘は奔放に育ててきたので、ご迷惑をかけていないか心配しております」
「お行儀のよいお嬢様ですよ」

 王妃が微笑んでいる。
 扉がノックされて、「シオン様をお連れしました」と声がした。

「初めまして、第二王子のシオン・ニクス・アストラべーでございます」

 今日のシオン様はよそ行きの顔をしているわ。

「凜々しい息子が二人いると心強いですな」
「まだまだ若輩者だがな」

 国王様は、謙遜しているのだろうか?

「せっかくいらしたので、ゆっくり滞在していってくれ。婚約披露のパーティーを開きたいが、ドレスは間に合いそうか?」
「ドレスなら持って参りました。娘にこれくらいしかできず。準備させてもらいました」
「それでは、パーティーを開こう」

「国王様にお願いがあります。我が娘の侍女ですが、生まれた頃から世話をしてきた者がおりまして、どうしてもリリーの世話を続けたいと申しております。如何でしょうか?」
「慣れ親しんだ者が側におれば、異国にいても寂しくはないだろう」
「お許しくださいますか?」
「滞在を許そう」

 リリーが嬉しそうに微笑む。

「モリーとメリーと言います。よろしくお願いします」

 リリーは侍女を紹介した。

「では、ゆっくり家族水入らず過ごしてくれ」

 執事が出てきて、両親と兄、侍女を連れて客間に案内する。





 モリーとメリーはリリーの部屋に行くと、リリーのドレスをかけて、ワンピースも2着かけた。
 あまりにも少なすぎる。
 購入したバックや靴の片付けは終わってしまった。
 ノックがして、メリーが出ると、この屋敷の侍女長だった。

「屋敷を案内いたします」
「よろしくお願いします」

 モリーとメリーは怯むこともなく、侍女長の後を付いて歩いた。


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