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5 ダンジョンへの攻撃
10 騎士団解散
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翌朝、狩りから帰ると、団長がマイクを持って集合と言った。
食事を取る前に、椅子に座り、次の言葉を待つ。
「ダンジョンへの攻撃は成功したようだ。魔物は出なかったと報告で聞いたがどうだ?」
「出ませんでした」
パーティーリーダーが答えた。
「この地区の魔物退治は、終了とする。このメンバーは一度解散する。まだこの国では魔物が出る地区がある。そちらの応援に向かってくれると助かるが、一度、ゆっくり休むのはいいだろう。退寮は1週間以内だ。今日までの賃金は事務所でもらってくれ。連絡先を登録してくれると助かる。北の森の魔物退治の要請をお願いしたい。皆、今日まで、よく頑張った。感謝する」
拍手が湧き上がる。リリーも拍手をした。
「解散」
リリーは杖を置きに行きたかった。
「お姉様、一度お部屋に戻って、杖を置いてきます」
「私も武器を置いてくるわ」
男性諸君も杖を置きに行くようだ。
「お嬢様達、またパーティーを組まないか?」
「少し休憩してから考えるわ」
アトミスが答えた。
「リリーへの連絡は、アトミスの家で通じるのか?」
「……はい」
リリーは答えたが、今回は笛を吹こうと思っている。
アトミスの家は居心地がいいが、だからといって、ずっと世話になるわけにはいかない。
杖を片付け、手を洗い、うがいをして顔も洗う。
さっぱりして眠気が少し去った。
「リリー、またうちに来るでしょう?」
「一度、ビエント様に連絡をしてから決めてもいいですか?」
「いいわよ」
「……笛を吹いてみたいの」
「まあ」
アトミスは微笑んだ。
「……私も吹いてみたいわ」
「お姉様、吹いたことはないのですか?」
「ないですわ。シオン様は、まだ学生ですもの」
二人で食堂に向かうと、アハトたちがいた。料理をお皿に載せて、オレンジジュースを最後に載せる。
アハト達の前に座る。
「アハト達はいつ帰るの?」
リリーはアハト達に聞く。
「まずは寝る。その後、片付けと掃除をして馬車を待つ」
「家はどちらなの?」
「この山の反対側だ」
「三人ともですか?」
「俺たち幼なじみだからさ、家も近所なんだ」
「送りましょうか?乗り物もありますし」
「リリーったら」
アトミスは呆れたという顔をしている。
けれど、せっかく身につけた魔術があるなら、手伝う事は当然のような気がする……リリーであった。
「本当か?」
「ええ、いろんな場所を見てみたいの」
「それなら帰り支度を早めにするよ」
彼らは嬉しそうだ。
「リリーはお人好しね」
今日もご飯が美味しい。
部屋の掃除をして、荷物を纏める。
かなりの荷物がある。
旅行鞄にドレスを入れて、洋服や下着を入れていく。フラーグルム王国の紙幣と金貨を入れて、魔物が落とした魔力のある宝石を入れると、最後に子供の頃から使っているポシェットを入れて、鍵をかける。杖とロットをシーツで包み、背負えるようにした。大きな鞄に靴や化粧品や色々増えた物を入れていっぱいになった。外に出ているのは、一枚のワンピースと靴と斜めかけの鞄だけだ。
「リリーは準備できたみたいね」
「はい。お姉様も一緒に行きますか?」
「そうね。楽しそうだから行こうかしら」
アハト達の部屋をノックすると、アハトが出てきた。
「準備はいかがかしら?」
「もちろんOKだけど、金貨が重くて……」
「たくさん稼いだのね」
「ここに3年もいたらさすがに貯まるし」
「貯めたのは、この間のボス戦でしょ?」
アトミスが、うふふと笑いながら、アハト達の部屋を覗き込んだ。
「うん、まあ、そうだけどさ」
「ワポルもフィジも?」
リリーはアトミスの横で、幼馴染み達を見る。
「同じような感じだよ」
「いいよ、家まで送るわ」
「助かる」
彼らがリリーをに拝んでくる。
「どれを運べばいいの?」
「これだけどさ、運べるかな?」
シーツの上に三つの袋が置いてあった。
「任せて下さいな」
リリーはシーツごと荷物を運ぶ。
建物にぶつけないように、ゆっくり廊下を歩いて、階段も降りていく。
リリーの後から、アハト達がついてくる。
出しておいた乗り物に、丁寧に荷物を置いた。
アハト達が乗り込むと、「これ、どこまで行くの?」と寄宿舎の中から出てきた戦士が聞いてきた。アハトが場所を言うと、「ついでにお願い」と声がかかった。
「もちろん、いいですわよ」
アトミスも乗り込んで、乗り物は高くまで上がった。
「どこに行けばいいの?」
アハトが指を指す。
「この方向に真っ直ぐ飛んでくれる?」
「街が見えるけど、あそこですの?」
「そう。あの街のはずれ」
「僕たちはあの街に降ろして欲しい」
「わかったわ」
リリーはスピードをあげて、飛んで行く。
みんなの嬉しそうな声が上がる。
街にある公園の真ん中に降りて、便乗の二人が降りていった。
「ありがとう。すごく助かったよ」
「ありがとう。また会えるといいね」
「そうね。お疲れ様でした」
「お疲れさま。さようなら」
リリーは手を振ると、そのまま上空に上がっていった。
今度は高い山を上がって行く。空気が冷えてくる。
「アハトの家は?」
「ごめん、先に俺の家だ」
フィジが言った。
「そこの黄色い屋根の家」
「わかったわ」
乗り物を降ろして、フィジの荷物を運んでいく。
「ただいま」
「フィジ」
「お兄ちゃん」
「リリー、ありがとう。どこでもいいから」
「わかったわ」
荷物を丁寧に降ろす。
「お嫁さんかい?」
「いや、違う。リリーありがとう。元気でな」
「フィジも元気でね」
リリーは家族にお辞儀をして、駆けていった。
「俺んちは、もうちょっと上なんだ」
「歩いた方がいい?」
「移動した方がいいと思う」
「わかったわ」
リリーはまた乗り物を上空に上げる。
「青い屋根が俺のところで、黄色い屋根の家がワポルの家」
「わかったわ」
リリーはちょうど中間地点に降りて、ワボルの家に荷物を運んで、戻るとアハトの家に荷物を運んだ。
「助かった。ありがとう」
「いいえ。こちらこそありがとう」
「元気でな」
「アハトもね」
手を振り、アトミスの待つ乗り物まで戻ると、アトミスは気を溜める練習をしていた。
「お待たせしましたわ」
「いいえ」
「景色のいい場所ね」
「買い物は大変そうだけど」
一気に上空まで上がり、勢いよく飛び寄宿舎の前に降りると、アトミスが飛び降りた。
そのまま乗り物を元の場所に戻す。
制服から私服に着替えて、事務所に制服を返して鍵を返すと、騎士団長が労ってくれた。
「リリー嬢、無理をさせたな」
「ええ、大変でしたけれど、新しい技を身につけられました。団長、ありがとうございました」
「アトミス嬢もよく頑張ってくれた。感謝する」
「いいえ、魔術を扱える者として当然のことをいたしただけですわ」
「さあ、二人とも、ゆっくり休むといい」
団長は見送りに出てきてくれた。
「では、団長、さようなら。お世話になりました」
「さようなら、元気でな」
リリーとアトミスは荷物を持って外に出た。大きな旅行鞄を持ったアトミスは意外と持ち物は少なかった。武器は楽器型の丸い物だったから、かさばらないらしい。
アトミスと手を握り、飛び立つ。
団長が手を振っている。リリーとアトミスは手を振り返し、山から下るように飛び立った。背中に背負った杖が落ちそうで、そこに気を集中させる。
あっという間に、アトミスの家の前に降り立った。
アトミスは握っていたリリーの手を放すと、リリーから少し離れた。
「ビエント様に笛を吹きます」
「寂しくなるわ」
「お姉様とはいつでも会えるわ」
「リリー、もうお姉様と呼んでは駄目よ」
「はい。ありがとうございました」
「私こそ、ありがとうございました」
リリーはアトミスに抱きついた。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
リリーは上空に上がっていった。
食事を取る前に、椅子に座り、次の言葉を待つ。
「ダンジョンへの攻撃は成功したようだ。魔物は出なかったと報告で聞いたがどうだ?」
「出ませんでした」
パーティーリーダーが答えた。
「この地区の魔物退治は、終了とする。このメンバーは一度解散する。まだこの国では魔物が出る地区がある。そちらの応援に向かってくれると助かるが、一度、ゆっくり休むのはいいだろう。退寮は1週間以内だ。今日までの賃金は事務所でもらってくれ。連絡先を登録してくれると助かる。北の森の魔物退治の要請をお願いしたい。皆、今日まで、よく頑張った。感謝する」
拍手が湧き上がる。リリーも拍手をした。
「解散」
リリーは杖を置きに行きたかった。
「お姉様、一度お部屋に戻って、杖を置いてきます」
「私も武器を置いてくるわ」
男性諸君も杖を置きに行くようだ。
「お嬢様達、またパーティーを組まないか?」
「少し休憩してから考えるわ」
アトミスが答えた。
「リリーへの連絡は、アトミスの家で通じるのか?」
「……はい」
リリーは答えたが、今回は笛を吹こうと思っている。
アトミスの家は居心地がいいが、だからといって、ずっと世話になるわけにはいかない。
杖を片付け、手を洗い、うがいをして顔も洗う。
さっぱりして眠気が少し去った。
「リリー、またうちに来るでしょう?」
「一度、ビエント様に連絡をしてから決めてもいいですか?」
「いいわよ」
「……笛を吹いてみたいの」
「まあ」
アトミスは微笑んだ。
「……私も吹いてみたいわ」
「お姉様、吹いたことはないのですか?」
「ないですわ。シオン様は、まだ学生ですもの」
二人で食堂に向かうと、アハトたちがいた。料理をお皿に載せて、オレンジジュースを最後に載せる。
アハト達の前に座る。
「アハト達はいつ帰るの?」
リリーはアハト達に聞く。
「まずは寝る。その後、片付けと掃除をして馬車を待つ」
「家はどちらなの?」
「この山の反対側だ」
「三人ともですか?」
「俺たち幼なじみだからさ、家も近所なんだ」
「送りましょうか?乗り物もありますし」
「リリーったら」
アトミスは呆れたという顔をしている。
けれど、せっかく身につけた魔術があるなら、手伝う事は当然のような気がする……リリーであった。
「本当か?」
「ええ、いろんな場所を見てみたいの」
「それなら帰り支度を早めにするよ」
彼らは嬉しそうだ。
「リリーはお人好しね」
今日もご飯が美味しい。
部屋の掃除をして、荷物を纏める。
かなりの荷物がある。
旅行鞄にドレスを入れて、洋服や下着を入れていく。フラーグルム王国の紙幣と金貨を入れて、魔物が落とした魔力のある宝石を入れると、最後に子供の頃から使っているポシェットを入れて、鍵をかける。杖とロットをシーツで包み、背負えるようにした。大きな鞄に靴や化粧品や色々増えた物を入れていっぱいになった。外に出ているのは、一枚のワンピースと靴と斜めかけの鞄だけだ。
「リリーは準備できたみたいね」
「はい。お姉様も一緒に行きますか?」
「そうね。楽しそうだから行こうかしら」
アハト達の部屋をノックすると、アハトが出てきた。
「準備はいかがかしら?」
「もちろんOKだけど、金貨が重くて……」
「たくさん稼いだのね」
「ここに3年もいたらさすがに貯まるし」
「貯めたのは、この間のボス戦でしょ?」
アトミスが、うふふと笑いながら、アハト達の部屋を覗き込んだ。
「うん、まあ、そうだけどさ」
「ワポルもフィジも?」
リリーはアトミスの横で、幼馴染み達を見る。
「同じような感じだよ」
「いいよ、家まで送るわ」
「助かる」
彼らがリリーをに拝んでくる。
「どれを運べばいいの?」
「これだけどさ、運べるかな?」
シーツの上に三つの袋が置いてあった。
「任せて下さいな」
リリーはシーツごと荷物を運ぶ。
建物にぶつけないように、ゆっくり廊下を歩いて、階段も降りていく。
リリーの後から、アハト達がついてくる。
出しておいた乗り物に、丁寧に荷物を置いた。
アハト達が乗り込むと、「これ、どこまで行くの?」と寄宿舎の中から出てきた戦士が聞いてきた。アハトが場所を言うと、「ついでにお願い」と声がかかった。
「もちろん、いいですわよ」
アトミスも乗り込んで、乗り物は高くまで上がった。
「どこに行けばいいの?」
アハトが指を指す。
「この方向に真っ直ぐ飛んでくれる?」
「街が見えるけど、あそこですの?」
「そう。あの街のはずれ」
「僕たちはあの街に降ろして欲しい」
「わかったわ」
リリーはスピードをあげて、飛んで行く。
みんなの嬉しそうな声が上がる。
街にある公園の真ん中に降りて、便乗の二人が降りていった。
「ありがとう。すごく助かったよ」
「ありがとう。また会えるといいね」
「そうね。お疲れ様でした」
「お疲れさま。さようなら」
リリーは手を振ると、そのまま上空に上がっていった。
今度は高い山を上がって行く。空気が冷えてくる。
「アハトの家は?」
「ごめん、先に俺の家だ」
フィジが言った。
「そこの黄色い屋根の家」
「わかったわ」
乗り物を降ろして、フィジの荷物を運んでいく。
「ただいま」
「フィジ」
「お兄ちゃん」
「リリー、ありがとう。どこでもいいから」
「わかったわ」
荷物を丁寧に降ろす。
「お嫁さんかい?」
「いや、違う。リリーありがとう。元気でな」
「フィジも元気でね」
リリーは家族にお辞儀をして、駆けていった。
「俺んちは、もうちょっと上なんだ」
「歩いた方がいい?」
「移動した方がいいと思う」
「わかったわ」
リリーはまた乗り物を上空に上げる。
「青い屋根が俺のところで、黄色い屋根の家がワポルの家」
「わかったわ」
リリーはちょうど中間地点に降りて、ワボルの家に荷物を運んで、戻るとアハトの家に荷物を運んだ。
「助かった。ありがとう」
「いいえ。こちらこそありがとう」
「元気でな」
「アハトもね」
手を振り、アトミスの待つ乗り物まで戻ると、アトミスは気を溜める練習をしていた。
「お待たせしましたわ」
「いいえ」
「景色のいい場所ね」
「買い物は大変そうだけど」
一気に上空まで上がり、勢いよく飛び寄宿舎の前に降りると、アトミスが飛び降りた。
そのまま乗り物を元の場所に戻す。
制服から私服に着替えて、事務所に制服を返して鍵を返すと、騎士団長が労ってくれた。
「リリー嬢、無理をさせたな」
「ええ、大変でしたけれど、新しい技を身につけられました。団長、ありがとうございました」
「アトミス嬢もよく頑張ってくれた。感謝する」
「いいえ、魔術を扱える者として当然のことをいたしただけですわ」
「さあ、二人とも、ゆっくり休むといい」
団長は見送りに出てきてくれた。
「では、団長、さようなら。お世話になりました」
「さようなら、元気でな」
リリーとアトミスは荷物を持って外に出た。大きな旅行鞄を持ったアトミスは意外と持ち物は少なかった。武器は楽器型の丸い物だったから、かさばらないらしい。
アトミスと手を握り、飛び立つ。
団長が手を振っている。リリーとアトミスは手を振り返し、山から下るように飛び立った。背中に背負った杖が落ちそうで、そこに気を集中させる。
あっという間に、アトミスの家の前に降り立った。
アトミスは握っていたリリーの手を放すと、リリーから少し離れた。
「ビエント様に笛を吹きます」
「寂しくなるわ」
「お姉様とはいつでも会えるわ」
「リリー、もうお姉様と呼んでは駄目よ」
「はい。ありがとうございました」
「私こそ、ありがとうございました」
リリーはアトミスに抱きついた。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
リリーは上空に上がっていった。
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