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3 魔物の森
12 初めての麻痺
しおりを挟む目覚まし時計が鳴って、リリーは目を擦る
「……眠いわ」
顔を洗っても目覚めなかったので、シャワーを浴びた。
季節は冬だが、少し冷たいお湯で浴びて、やっと目が覚めた。
急いで新しい制服に着替えて、ポーションをポケットに入れていく。
洗濯は施設がしてくれる。アトミスが洗濯機を持ち込んでいるので、下着やネグリジェは部屋で洗っている。
「リリー起きているか?」
アハトが扉をノックしてきた。
「今、準備をしています」
「いつもより遅いよ」
「すみません」
ブーツをきちんと履き、部屋を出ると、アハトがリリーの濡れた髪を見て、頬を染めた。
「眠くてシャワーを浴びたの」
「いつ帰ってきたんだ」
「お昼頃くらいですわ」
「あまり眠れてないな」
「……でも起きましたわ」
「食事に行くぞ」
「はい」
ワポルとフィジも待っていてくれた。
「遅くなってすみません」
「いいよ。アトミスを送っていったんだろう?どうせ王都まで飛んで」
「……はい」
「俺も空を飛んでみたいな」
「俺もだ」
「俺も」
三人ともリリーを見つめる。
「いつか時間があったら……」
「本当か?」
三人に迫られ、リリーは苦笑を浮かべて頷いた。
食事を取るとき、どれにしたらいいのかわからなくなった。いつもアトミスと同じ物を取っていたので、味がわからない。少しずつ、いろんな物を取ってみた。オレンジジュースをもらって、席に着く。
彼らはもう食べている。
「いただきます」
リリーにとっては今日の食事はロシアンルーレットのような感じだ。口に合わない物があったらどうしよう。ビクビクしながら、口に運ぶ。まずいと思ったときは、オレンジジュースで流し込んだ。今日のパンは小さなバケットだった。バターをつけて、温かいパンを食べて、オレンジジュースを飲んで。ごちそうさまをした。
「リリー。今日はアトミスがいないから、ポーションをしっかり持って行けよ」
「五本は入っていますわ」
「余分にもらってもいいんだぜ」
「俺は十本持っている」
「わかったわ。追加でもらってきますわ」
「急げよ。今日はいつもより遅い」
「……はい」
食器の載ったトレーを戻して、ポーションをもらいに行くと、残りが1本しかなかった。
「ポーションありませんか?」
「倉庫から出してこないとないんだ。10分待ってくれるか?」
「リリー行くぞ」
「……はい」
リリーは仕方なく、最後の一本のポーションをスカートのポケットに入れた。
フィジが地ならししている間に、魔物が湧き出した。
「間に合わなかったな」
「足下気をつけろよ」
「リリーは目の前の魔物残骸を、爆風でどかした」
「リリー、こっちもどけてくれ」
「わかりました」
アハトのエリアを掃除する。
「ラウガン」
爆風で魔物の残骸が飛ばされていく。四方向ラウガンを撃って、見晴らしを良くしたが、自分の担当する場所を振り向いたら、目の前に魔物がいた。腕を引っ掻かれて、「うっ」と痛みを堪えると、隣にいたフィジが魔物を飛ばして倒した。
「すまない。掃除させておいて、背後の警戒してなかった」
「苦しいです」
リリーは膝をついた。
「ポーションを飲め。まず1本。3分待ってまだ苦しかったら2本目。3分ごとだ」
リリーは初めてポーションを飲んだ。
苦くてまずい。
三人はリリーを囲むようにして立ち、攻撃をしている。
「リリー、まだ苦しいか?」
「はい。2本目飲みます」
頭がぼんやりして、体が動かない。
「3本目を飲め」
「はい」
まずくて苦いポーションを飲んでも体が動かない。
「4本目飲め」
「はい」
腕がうまく上がらなくて、蓋が開けられない。
「リリー飲んだか?」
「腕が動きません」
「まずいぞ」
「撤退できるか?」
「土壁を作ろう」
フィジが3方向に土壁を立てると、アハトはリリーを抱き上げた。
「援護頼む」
ワボルが水魔法で魔物を流し出す。アハトとワポルとフィジは走った。
リリーは意識を失った。
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