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3   魔物の森

4   魔物中の宿(1)

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 森の中に土色の建物が建っている。

「この建物は、土魔法で作られた物なんだ。頑丈で魔物が襲ってきてもびくともしないから安全なんだ」

 土魔術を扱うフィジが教えてくれた。

「土魔術でできているのは外壁だけで、中は木造よ。とても温かみのお部屋なのよ」

 アトミスは、自分より年下で背の低いリリーの手を繋いでいる。アトミスは妹ができたようで、世話を焼くことが楽しくて仕方ない。

「リリーさえ良かったら、私と同室にならない?」
「いいのですか?」
「この騎士団の女性は今のところ私一人なのよ。これから入ってくる見知らぬ子と同室になるより、リリーと一緒がいいわ」
「まあ、心強いですわ。それに私、学校では寄宿舎じゃなかったので、誰かと一緒に眠ったことはないのです」
「私はずっと妹が欲しかったから、なんでも頼ってほしいわ」
「はい、それではお願いします、アトミスお姉様」

 リリーの腰には、ストールが巻かれている。
 空から落下したとき、魔物に裂かれてしまったスカートを隠しているのよ。
 だって女の子ですもの。
 建物の内側は、アトミスさんが言ったように木造作りだ。涼しくて気持ちがいい。

「アトミス、リリーの受付を頼んでもいいか?」
「お任せくださいな」
「じゃあ、アトミスよろしくな。リリー、またな」とリーダーのアハトは、私達と別れて幼なじみ達と自分達の部屋に向かった。
「じゃあ、事務所に寄りましょう」
「はい、お願いします」




 事務所では国籍と名前を登録してくださいと言われ、リリーは迷う。家出をした身で本名や身元を登録していいのかと。そうしたら、アトミスが「本名よ」と言った。

「私達がしていることは、とても危険が伴う仕事なのよ。もし偽名の誰かが亡くなった時には遺体が残っていても、生家の墓に埋葬してもらえないし、最悪、遺族の方々に報せることさえできなくなるわ」

 確かに少なからず危険を伴う仕事だ。魔物との戦いで傷ついて死んだ姿を両親や兄、親族に見せるのは、大変申し訳ない気がするが……。

「身寄りが無く帰る場所が無い人の場合には、この国の共同墓地に一人寂しく葬られるの」
「わかったわ、アトミスお姉様」

 リリーは母国名と本名を書いて、住所も記入登録した。
 誰知らず一人で寂しく、異国の共同墓地に入れられるのはとても寂しいと思う。やはり死んだあとからでも母国の愛する家族の元に帰りたい。
 名簿に記入すると、入隊日は昨日の日付にしてもらえた。リリーはストールを外して、魔物との戦闘で汚れ裂けたスカートを見せた。
 制服が支給されて、ドッグタグを渡された。
 リリーはネックレスを二つはめることになった。

「アトミス様、お部屋はアトミス様と同じでよろしいでしょうか?」
「ええ、お願いします。私のベッドの横にリリーのベッドを並べて入れて貰えるかしら?」
「わかりました。あと、ここから手紙を出せるますので、リリー様はご家族には必ず知らせてくださいね」
「家族に手紙をですか?」
「そうだったわ。リリーはたぶん家出をしてきたのでしょう?でも家族にはきちんと居場所と連絡先を教えてあげなさいね」
「是非、そうしてください。あとでリリー様のご家族に訴えられても困りますので。実際、過去には何件か揉め事が……」

 私の家族から訴えられ……る? 

 ……そういえば改めに父の性格を思い返してみたら、ん~、ん~!なんとなくしそうな気がしますね、あの人は。

「わかりましたわ」
「これで手続きは終わりです。お疲れ様でした」

 リリーはアトミスに連れられて、部屋に向かった。


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