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9   二度目の転生

2   高校生活(1)

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 幼稚園の頃から小学生まで水泳を習っていた唯は、中学に入ってから水泳を辞めて、テニス部に入った。運動神経の良かった唯は、高校生に入ると新人戦に出ることができた。

 優勝はできなかったが、個人競技で3位に入ることができた。

 唯はテニスが好きだ。

 ピンクのラケットにテニスウエアーも白とピンクの合わさったワンピース型だ。

 部活が終わると、唯は茶道や華道を習いに行く。小学生の頃から始めたので、なかなかの腕前だ。

 習い事が終わる時間に、父親が迎えに来てくれる。テニスラケットを持って、車に乗り込む。


「ただいま。お父さん」

「おかえり、唯」

「お腹減った」

「お母さんが、唯の好物を作って待ってるよ」

「今日はなんだろう?」

「唯は、そろそろ華道と茶道を辞めて、お母さんに料理を習った方がいいぞ」

「両立は無理かな?」

「夜ご飯が遅くなるよ。勉強もしないといけないだろう?」

「華道も茶道も好きなんだけどな」

「それならテニスを辞めるか?」

「それと比べちゃうの?」


 唯は文武両道で有名な私学の学校に中学から入って、テニスをしている。唯は高校一年生だ。


「お母さんと相談する」

「そうしなさい」

 父親は唯を家に送ると、唯を連れて家に入る。

 家は立派な豪邸だ。

 三人で暮らすには贅沢な建物だ。

 唯の部屋も広く、大きなベッドが置かれている。

 レースの天蓋がついて、まるでお姫様のようだ。

 家に帰ると、唯はお風呂に入って、テニスで汗をかいた体を洗う。

 お風呂の中で、手首に巻かれた白銀のお守りを触る。

 物心がついた頃から、手首には、白銀の美しく編んだブレスレットがついている。

 年齢を重ねて、手首が大きくなってもしっかり手首についている。体の成長と共にブレスレットも成長しているように見える。

 両親には『唯が生まれたときに、神様が巻かれたお守りだから、外しては駄目よ』と何度も言われ続けている。

 不思議とこのブレスレットをはめていると、心が落ち着く。

 外したことがないので、外したらどんな気持ちになるのかはわからないけれど……。

 このブレスレットには、不思議な力が備わっている。危険がある時にブレスレットが手首を締め付ける。とても不思議なブレスレットだ。

 お風呂から上がると、唯はパジャマ姿でダイニングに入って行った。

「食事にしましょう。唯、手伝って」

「はーい」

 唯は母の横に立って、お皿を順に運んでいく。

 できたての料理に、お腹が鳴った。


「唯、お行儀が悪いわ」

「ごめんなさい。お腹が空いていたの」

「まずは食べましょう」

 三人で「いただきます」と手を合わせて、食事を食べ始める。

 母の料理は薄味だ。

 家族で外食はしない。友人と出かけるとき以外は、母の手料理だ。

 この味に慣れているので、外食の食事は味が濃く感じる。

 旅行に出かける時は、豪華な物を食べさせてくれる。

 両親は京都が好きなのか、よく古い神社やお寺に連れて行ってくれる。

 一般人立ち入り禁止区域にも入れてもらえる。政治家の父のお陰だ。

 今では見たこのない畳の部屋や趣のある襖を見学できる。枯山水はとても不思議だ。

 文化財に指定された建物を訪ねて、その庭や屋敷を見て回る。

 普段、テニスラケットを持ってグランドを走り回っている唯は、そんな時は着物を着せられる。今では皇族でも祭事の時しか着ないのに……。

「そろそろお料理の練習をしましょう。もっと早く始めたかったのだけど、唯がなかなか習い事を辞めてくれないから。お母さんの料理が嫌なら、お料理教室でもいいのよ」

「お母さんの料理、美味しいから、お母さんに教えてもらう。テニスと華道と茶道を比べられたら、テニスを選ぶ。テニスはしてもいい?」

「いいわよ。部活が終わったら、真っ直ぐ帰っていらっしゃい。お料理とお菓子の作り方を教えてあげるわ」

「お菓子も教えてくれるの?」

「もちろんよ。本も買ってきてあるのよ。どれが食べたいか、選びましょう」

「なんだか楽しみ。お母さんのお菓子、美味しいから」

 父が食後の紅茶を淹れている。

 毎日の光景だ。

「ほら、お茶だよ」

 母が手早く食器を台所に運ぶと、その後に、お茶が並ぶ。


「お母さんの手作りのアップルパイだよ」

「わぁ」

 父は政治家らしくない。

 唯が家にいる時間は、必ず家にいる。

 母の家事の手伝いをして、こうして紅茶も淹れてくれる。

「唯に美味しい紅茶の淹れ方も教えてあげないといけないね」

「お父さんの紅茶、美味しいから教えて」

 唯の家庭は温かく、時間が少しゆっくり過ぎていくような気がしていた。


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