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8 花姫たちが襲われています
9 お慕いしております
しおりを挟む寝室の机の引き出しの中から、唯の遺書が見つかった。
龍之介様、とても愛しています。17歳で龍之介様の子供が産めました。前世ではせっかく授かった赤ちゃんが産めなかったので、とても嬉しいのです。名付けも私にさせてくれて、ありがとうございました。
龍星、いい名前でしょう?
龍神様の中で一番強くなれそうな名前でしょう?
今、とても幸せすぎて怖くて、遺書をしたためています。
前世でも幸せでした。今も幸せです。龍之介様が愛してくださったお陰です。
もし、万が一、また私が死んでしまったら、どうかまた木の肥やしにしてください。
昔は、木の肥やしになることが、とても怖かった。本当は今も怖いけれど、木の肥やしになることで、生まれ変われるなら、木の肥やしにしてください。そして、また唯をと願ってください。龍之介様に会いたくて、転生できるかもしれません。次に生まれ変わったら、龍之介様のことを忘れているかもしれません。それでもまた龍之介様を好きになると思います。花姫の力がなくても妻に迎えてください。
死なないことを祈りながら、書いていますけど。私はやはり不安なのです。
龍之介様、幸せですけど、ずっと不安で怖いのです。
もし来征で会えるなら、平和な世の中でなんの不安もなく過ごせるように願っています。
龍之介様の妻、唯
何度も手紙を読んで龍之介は唯を想う。
「唯を殺してしまった一番の原因は、俺にある。すまない唯」
毎日、花姫の結界を何重にもかけていたのに、唯と抱き合った後、唯に結界を張るのを忘れて、唯から離れたのは龍之介だ。
花姫が狙われているのに、力の強い花姫の霊力を解放したまま、唯から離れた。
龍磨を追いながら、屋敷と屋敷の周りの山々に花が咲き乱れていた。
神々が龍磨を撃っている間に、唯の元に戻るべきだった。
亡骸は遺書の通りに木の肥やしにして、花姫の生る木に撒いた。その後に、花姫の生る木に「唯を」と願った。
付けた花は唯の霊気とは違った。
龍磨と子鬼の亡骸は燃やして灰にまで崩して山に封印した。
二度と転生はしないだろう。
母は龍之介のいない場所で泣いたが、龍之介は龍磨が許せなかった。
目の色が違うだけの同じ顔をしていた兄弟だったが、弟の亡骸は幽鬼に変わっていた。
花姫が食べられなくなり、人間界で花姫の末裔を食べて暮らしている間に、鬼から幽鬼へ変わり、神の姿は微塵もなくなっていた。
花姫の屋敷を襲われた現場で、一人の花姫が出産したような形跡が見つかっていた。
花姫の亡骸を集めるとき、不思議に感じていたことが繋がった。
子鬼は花姫の体内で、霊気を当てて短時間で育てたのだろう。
出来損ないの顔をした子鬼だった。
その子鬼に唯と同じ名前を付けた龍磨は唯に一目惚れをしたのかもしれないが、龍磨に会わせた日に頭を下げて『唯を譲って欲しい』と頼まれても譲るつもりは微塵もなかった。
龍太郎に、また謝られたが、どうしても許すことができなかった。
「唯はもういない」
忘れ形見の龍星はすくすくと育ち、青龍になれるほど霊力を付けている。
唯の霊気を授かり、幼い体に霊気をたっぷり溜め込んでいる。
最近では、一緒に夜空を飛ぶことも増えてきた。
龍星と飛んでいると、唯を乗せて飛んだ日を思い出す。
大喜びで鬣を掴んでいた唯は、愛らしかった。
また会いたい。
また会いたい。
会いたくて、毎年、唯をと願っている。
もしかしたら、また100年後に再会できるかもしれない。
花姫たちを亡くした神には、花姫を見せるようにしている。
今のところ、同じ霊気の子は生まれていないようだ。
100年経った後も、龍之介が青龍神社の神である限り、祈り続けるつもりだ。
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