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4   青龍様の弟に迫られています

4   私が青龍様を守ります

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 青龍神社の神殿の洞窟に引っ越しをしてからしばらく経った。

 いくつかに別れた洞窟の奥に大きな寝台が置かれた。

 他の洞窟は箪笥などの家具が運ばれた。

 達樹とみのりは、それぞれに部屋を与えられた。

 家具は自分たちで調達してきたようだ。

 少し寒い洞窟の中は、龍之介の霊気で春の気候に暖められている。

 調理場もあり浴室もある。

 お風呂は薪では焚けないので、達樹とみのりが魔力で暖めている。

 唯は処女ではなくなった。

 初めて龍之介を受け止めた時は、その痛みに失神してしまったが、二度目からは意識を保てるようになった。すさまじい快感と霊気に毎回翻弄されるが、龍之介は優しく抱いてくれる。

 唯のお腹は少しふっくらしてきた。そろそろ六ヶ月だ。胎動もある。


「みのり、お散歩に行きたいの」


「すぐに用意いたします」


 ずっと引きこもってきたが、太陽の下を歩きたい。

 龍之介に言ったら、許可が下りた。


「龍之介様、お散歩に行って参ります」

「あまり遠くまで行くな」

「湖を見てきます」

「行っておいで」


 龍之介は青龍の姿で、唯に口づけをする。

 ひげがくすぐったい。

 長い階段は達樹が抱き上げてくれる。

 ゆっくり神社の脇に出ると、慎重に下ろされた。


「達樹、ありがとう」

「いいえ、いつでもおっしゃってください」

「唯様、行きますよ」


 みのりが手を引いてくれる。


「いい天気ね。地下にいると天気もわからないけど」


 季節は冬だ。冬用のコートを着て、ゆったりと着物を着ている。

 湖まで歩いて、ゆっくりと遊歩道のベンチに座る。

 突然、唯の横に龍磨が座った。

 さすがに龍神だ。気配はなかった。


「龍磨様!」

「やっと姿を見せたな。どこに隠れている」

「秘密です」

「龍磨様、唯様は身籠もっておられます。どうぞお引き取りください」


 達樹が跪いて、龍磨に進言したが、龍磨には何も聞こえないらしい。


「唯を連れていく。兄上にはいただいたと申し上げろ」


 唯の体を抱き上げると、龍磨は高く跳躍し姿を消した。



……
…………
………………



 湖の真ん中にある岩の上で、唯は組み敷かれていた。


「お願いします。赤ちゃんがいるの。乱暴はしないで」

「俺に抱かれろ。どうせいつも抱き合っているんだろう?」

「私は龍之介様の妻です」

「二人の関係を引き裂いてやる」


 魔術で着物を脱がされて、唯は裸になってしまった。

 寒さと恐怖で体が震える。


「お願い、乱暴はしないで」

「俺を受け入れろ」


 大きく足を広げられ、いきなり膣に龍神の性器を入れられた。


「ああああ!」」


 いつもは麻酔をかけるように、愛撫されてから入れられる巨大な性器をいきなり突き入れられ、唯は痛みに失神してしまった。


「唯様」

「なんと乱暴な」


 みのりと達樹が瞬間移動で追いかけてきたが、乱暴に抱かれている唯を助けるすべはない。

 龍之介が飛んできた。


「唯を放せ」

「甘美な霊気だ。兄上だけがこの霊気を独り占めするのか?食ったらどんな味がするのだろう?」


 唯の肩に龍磨は歯を立て、肉を引きちぎった。唯の体が衝撃で跳ね上がる。


「なんと甘い。血肉もうまいのか」


 唯の血を口から流しながら、龍磨は唯を突き上げる。


「龍之介様」


 痛みで意識を取り戻したのか、唯が龍之介に手を伸ばす。

 唯の肩は噛みちぎられ、血管から血が噴き出している。

 唯の中に射精して、満足したのか龍磨はにやりと笑う。


「あああ!やめて」


 子宮口が開かれて、龍磨の性器が入ってきた。

 激しい痛みに、唯はお腹を抱える。

 勢いよく龍磨は性器を抜き去った。

 性器に巻き取られるように小さな赤子がついてきた。

 唯はお腹を抱えて、悶え苦しんでいる。

 龍磨は赤子を投げた。

 達樹が瞬間移動をして赤子を受け止めて、みのりが毛布で赤子を包みこむ。


「赤ちゃんを助けて」


 怒った龍之介は龍磨に襲いかかった。龍磨は青龍の姿になり、青龍同士の戦いが始まった。

 黒雲が空を覆い、雷と豪雨で視界が暗くなる。

 みのりは赤子を連れて、瞬間移動した。


「唯様も移動しましょう」

「待って、達樹。私には見守る義務があるの。ここにいるわ」

「それでも唯様は、酷い怪我を負っていらっしゃる」

「私はいいの」


 雨と共に血が振ってくる。


「誰の血かしら?」


 唯は空を見上げて泣いていた。

 お腹の痛みも肩の痛みも辛いけれど、兄弟同士で戦う姿はあまりにも痛ましい。


「私を取り合うなんて、なんて悲しいんでしょう」


 雷が隣の木に落ちて、燃え上がる。


「龍之介様、どうか生きてください」


 弟を殺してしまっても、龍之介には生きていてほしい。


 唯の頬を赤く濡らすのは、誰の血だろう。


「……龍之介様」


 唯のお腹から胎盤が剥がれて流れ落ちてきて、唯はお腹を押さえる。

 血と共に胎盤が、足元に落ちた。

 唯自身も血まみれだ。

 赤ちゃんは無事だろうか?


「お願い、龍之介様」

 勝ってほしい。唯は空を見上げながら、祈り続ける。

 空から、大きな龍神が降ってきた。

 大きな水しぶきをあげて、二頭の龍神が湖に落ちた。

 水しぶきは達樹が遮ってくれた。

 どちらも動かない。


「龍之介様」
 

 すぐに駆けつけたい。


「達樹、龍之介様の元に連れて行って」

「畏まりました」


 瞬間移動で、龍之介の体の上に載せられた。

 噛み合ったのか顔に酷い怪我と全身に酷い裂傷があった。

 唯はまず顔に口づけすると、手を当てた。治れ治れと念じる。

 手と体が熱くなる。

 徐々に傷が塞がっていく。場所を変えて、傷のある場所に霊気を集める。

 赤く染まった唯の体が白く発光している。


「達樹どいて」

「わかりました」


 達樹が龍之介の上から消えた。

 唯はひたすら傷を治していく。

 治癒の力で、龍之介の傷を治していく。


「唯か?力を使ってはならぬ」


 意識を取り戻したのか、龍之介が陸に向かって弱々しく泳いでいる。


「龍之介様をお助けします」


 全身の霊気を注ぎ込んでいく。


「力を使ってはならぬ」

「龍之介様、お慕いしております」

「唯、それ以上は駄目だ」


 唯は手を当てて、霊力を注ぎ込む。

 すべての力を注ぎ込んだ。

 龍之介の体から傷が消えた瞬間、唯は倒れた。


「唯っ」


 すべての木から花が散っていく。


「唯、死ぬな」


 龍之介は人の形に戻り、唯の唇に霊力を注ぎ込もうとしたが、龍之介自身も霊力を消耗していて注ぎ込むほどの霊力は残っていなかった。

 やっと起き上がれる力をくれたのは、唯だ。


「死ぬな、唯」


 黒雲が消えた空は青空だ。

 風が花を散らせていく。散った花が舞い上がる。

 その日、御嵩家の家と周辺に咲いていた花が散った。

 花を散らせないと言われている、万年桜も花を散らせた。

 花咲町からも花は散り、木は花を付けなくなった。

 唯と赤子を亡くして、龍之介は泣き続けた。

 そのあと何ヶ月も、雨が降り続き、地域に災害が起きた。

 雨にのり花びらが流されていく。

 湖に浮かんでいた龍磨の姿は、知らぬ間に消えていた。

 屍になった唯の体は何ヶ月も地下洞窟の寝室に寝かしていたが、父に説得されて火葬した。燃やされて残った骨と灰は、花姫の生る木の根元に撒かれた。

 唯が嫌がっていた方法だったが、龍之介はまた唯に会いたくて、花姫の生る木に「妻を」と願うようになった。


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