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第4章
89 産後
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出産の翌日、王宮に戻った。
レインが抱き上げて運んでくださった。
やはりレインの腕の中は安心する。
私は国王陛下の近衛騎士が私を抱き上げられなかった話をした。
レインが留守にしていた間の王宮でのいろんな事も伝えた。
エイドリック王子の近衛騎士は、レインも親しい友人のはずだ。
レインはショックを受けた顔をした。
「お見舞いに行かれた方がいいかと思うの」
「そうさせてもらう」
「後任の近衛騎士は頼りなくて、今、どこからか攻められたら、国王陛下を守れないと思ったのよ。エイドリック王子とも話した方がいいわ」
「ニナの言うことは正しい。後で、時間をもらおう」
「それがいいわ」
私の部屋のベッドまで運ばれて、私はベッドで身体を休める。
赤ちゃんは、3時間おきに起きて、母乳を欲しがる。
睡眠不足と疲労が溜まっていくが、私は乳母を雇わなかった。
「レイン、いつまでいられるの?」
「ニナと一緒に戻るつもりだ。一ヶ月はこちらに滞在するつもりでいる」
「大丈夫?」
レインはビストリの話を聞かせてくれた。
「謀反者はもういない。俺の近衛が守ってくれている。こちらに来たのは、アルクと二人だ。俺の近衛は友人であり、信頼している。ブリッサ王国の国王陛下とも友好関係を結べている。俺が中央都市に行く事も勧めてくれた」
レインは昔より、王の貫禄が出てきている。
「レイン、名前をつけてあげて。いつまでも赤ちゃんじゃ可哀想よ」
「今考えている。ニナは気になる名前はないのか?」
「そうね、レインの子だから、ウェントゥスとかでもいいかしら?異国語で風を現す言葉なの」
「ウェントゥスか、いい名であるな。普段はウェンと呼ぶのだな」
「そうね?平和な風が吹きますようにって。レインはどんな名前を考えていたの?」
「俺は異国後に詳しくはない。サンシャインの名前をあてた、ニナが決めた方がいい名になりそうだ。名前はウェントゥスにしよう」
「そんなに簡単に決めてしまうの?」
「お披露目もしなくてはならないからね」
ウェントゥス、いい名だ。
レインと同じで名前も長い。
レインと似て、ブルーアイも濃い。
「ねえ、レイン。競売でレインが買った赤ちゃんも連れて行きましょう。出自は分からないけれど、完璧にブルーリングス王国の色を持っていたわ。将来、ウェントゥスの伴侶にしてもいいかもしれない。それまでに、もっといい出会いがあれば、そちらにしてもいいし。保険に」
「辺境区は寒い。では、子の防寒具をアリスに二着作ってもらおう。確かに、ブルーリングス王国の色を完璧に出している姫の存在は貴重だ。ニナの言うとおりにしよう」
「ありがとう」
「春になったら、孤児院の子達も連れて行こう。保母を探さねばならない。こちらにいる間に、探そう。国王陛下に学生の募集もしてもらわなければならない。手に職も付けられる学部も作るつもりだ。今の所、建築部と栄養学部を考えている。腕のいいシェフが揃っているから、腕を伝授してもいいと言ってくれている」
「それは楽しみね。貴族だけじゃなくて、庶民も行ける学校なのね。でも、学費は払えないと思うわ」
「奨学金制度を作ろうと思っている。一人前になってから、少しずつ返済していけばいい」
「いい考えね」
「貴族の者は、発言できる貴族を育てたい。騎士希望者は、辺境区は鍛えられた漢達が揃っているから学べるだろう。医学部、看護学部もできると思うぞ。これから国王陛下に話しに行くが、慢性の病気の治療には時間がかかる。中央都市より自然豊かな土地での療養を希望している者はいるはずだ。気候がよくなったら、医師と看護師と移動をしてもらうつもりだ。ニナが手紙に書いていた食べ物屋もそのうち建てよう」
「とてもいい学校だわ」
「ニナの好きなマフィンも作ってもらおう」
「辺境区が豊かになっていくわ」
「さあ、ニナは今は身体を休めて」
「分かったわ」
私に掛布をしっかり掛けて、レインは私にキスをした。
今まで会えなかった分を埋めるような、優しくて情熱的なキスをくれた。
私は久しぶりの気持ちのいいキスに、身体の力が抜けていく。
「さあ、おやすみ」
「おやすみ」
私はレインの手を繋いだまま、目を閉じた。
+
夫婦の部屋には、ウェントゥスが静かに寝ている。
ウェントゥスが目を覚ますまでの、僅かな睡眠だけれど、ニナは乳母をいらないと言った。
辺境区で、この先、また子を成したとき、自分でできるようにしようとしているのだろう。辺境区は、学校や療養所を造っても田舎であることは変わらない。
ニナの好きなマフィンも売っていない。
綺麗なお店もない。
せめて花でも贈れるように、花も育ててみようか。
温室の専門家に相談をしてみよう。
電気があるので、無理ではないはずだ。
農学部も作れたら、いいだろう。
ニナはすっかり眠り、華奢な手が離れた。
俺はニナを起こさないように、静かに寝室を出て行った。
ニナの侍女に、眠ったことを告げて、国王陛下の元に向かった。
レインが抱き上げて運んでくださった。
やはりレインの腕の中は安心する。
私は国王陛下の近衛騎士が私を抱き上げられなかった話をした。
レインが留守にしていた間の王宮でのいろんな事も伝えた。
エイドリック王子の近衛騎士は、レインも親しい友人のはずだ。
レインはショックを受けた顔をした。
「お見舞いに行かれた方がいいかと思うの」
「そうさせてもらう」
「後任の近衛騎士は頼りなくて、今、どこからか攻められたら、国王陛下を守れないと思ったのよ。エイドリック王子とも話した方がいいわ」
「ニナの言うことは正しい。後で、時間をもらおう」
「それがいいわ」
私の部屋のベッドまで運ばれて、私はベッドで身体を休める。
赤ちゃんは、3時間おきに起きて、母乳を欲しがる。
睡眠不足と疲労が溜まっていくが、私は乳母を雇わなかった。
「レイン、いつまでいられるの?」
「ニナと一緒に戻るつもりだ。一ヶ月はこちらに滞在するつもりでいる」
「大丈夫?」
レインはビストリの話を聞かせてくれた。
「謀反者はもういない。俺の近衛が守ってくれている。こちらに来たのは、アルクと二人だ。俺の近衛は友人であり、信頼している。ブリッサ王国の国王陛下とも友好関係を結べている。俺が中央都市に行く事も勧めてくれた」
レインは昔より、王の貫禄が出てきている。
「レイン、名前をつけてあげて。いつまでも赤ちゃんじゃ可哀想よ」
「今考えている。ニナは気になる名前はないのか?」
「そうね、レインの子だから、ウェントゥスとかでもいいかしら?異国語で風を現す言葉なの」
「ウェントゥスか、いい名であるな。普段はウェンと呼ぶのだな」
「そうね?平和な風が吹きますようにって。レインはどんな名前を考えていたの?」
「俺は異国後に詳しくはない。サンシャインの名前をあてた、ニナが決めた方がいい名になりそうだ。名前はウェントゥスにしよう」
「そんなに簡単に決めてしまうの?」
「お披露目もしなくてはならないからね」
ウェントゥス、いい名だ。
レインと同じで名前も長い。
レインと似て、ブルーアイも濃い。
「ねえ、レイン。競売でレインが買った赤ちゃんも連れて行きましょう。出自は分からないけれど、完璧にブルーリングス王国の色を持っていたわ。将来、ウェントゥスの伴侶にしてもいいかもしれない。それまでに、もっといい出会いがあれば、そちらにしてもいいし。保険に」
「辺境区は寒い。では、子の防寒具をアリスに二着作ってもらおう。確かに、ブルーリングス王国の色を完璧に出している姫の存在は貴重だ。ニナの言うとおりにしよう」
「ありがとう」
「春になったら、孤児院の子達も連れて行こう。保母を探さねばならない。こちらにいる間に、探そう。国王陛下に学生の募集もしてもらわなければならない。手に職も付けられる学部も作るつもりだ。今の所、建築部と栄養学部を考えている。腕のいいシェフが揃っているから、腕を伝授してもいいと言ってくれている」
「それは楽しみね。貴族だけじゃなくて、庶民も行ける学校なのね。でも、学費は払えないと思うわ」
「奨学金制度を作ろうと思っている。一人前になってから、少しずつ返済していけばいい」
「いい考えね」
「貴族の者は、発言できる貴族を育てたい。騎士希望者は、辺境区は鍛えられた漢達が揃っているから学べるだろう。医学部、看護学部もできると思うぞ。これから国王陛下に話しに行くが、慢性の病気の治療には時間がかかる。中央都市より自然豊かな土地での療養を希望している者はいるはずだ。気候がよくなったら、医師と看護師と移動をしてもらうつもりだ。ニナが手紙に書いていた食べ物屋もそのうち建てよう」
「とてもいい学校だわ」
「ニナの好きなマフィンも作ってもらおう」
「辺境区が豊かになっていくわ」
「さあ、ニナは今は身体を休めて」
「分かったわ」
私に掛布をしっかり掛けて、レインは私にキスをした。
今まで会えなかった分を埋めるような、優しくて情熱的なキスをくれた。
私は久しぶりの気持ちのいいキスに、身体の力が抜けていく。
「さあ、おやすみ」
「おやすみ」
私はレインの手を繋いだまま、目を閉じた。
+
夫婦の部屋には、ウェントゥスが静かに寝ている。
ウェントゥスが目を覚ますまでの、僅かな睡眠だけれど、ニナは乳母をいらないと言った。
辺境区で、この先、また子を成したとき、自分でできるようにしようとしているのだろう。辺境区は、学校や療養所を造っても田舎であることは変わらない。
ニナの好きなマフィンも売っていない。
綺麗なお店もない。
せめて花でも贈れるように、花も育ててみようか。
温室の専門家に相談をしてみよう。
電気があるので、無理ではないはずだ。
農学部も作れたら、いいだろう。
ニナはすっかり眠り、華奢な手が離れた。
俺はニナを起こさないように、静かに寝室を出て行った。
ニナの侍女に、眠ったことを告げて、国王陛下の元に向かった。
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