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第4章
85 いざ出陣ですわ!
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総勢50名ほどの騎士が王宮の前に馬を引き集まった。
国王陛下は馬車に、私と一緒に乗っています。エイドリック王子は、馬にて移動しますので、騎士の中に紛れています。
私には剣がありませんので、王宮の掃除道具入れから箒を一本持ってきました。
その行為が面白いようで、国王陛下はずっとケラケラと笑っております。
笑顔が出て嬉しいですが、そんなに楽しいでしょうか?
箒は掃除もできますが、戦うこともできます。
馬車の中から、国王陛下がサインを送ると、騎士達は馬に跨がり、エイドリック王子が先頭を走り出した。
いざ出陣ですわ!
今日はクローネの住んでいた邸を隅から隅までしっかり見てきます。
双子の弟はどんな男か気になる。
奥様はどんな奥様でしょう?
8年も放置されていても怒らない奥様が、気になります。
大麻が群がる畑の中にある道を通って行きます。
花の時期も収穫の時期も終えている大麻草から、麻薬を作っているのでしょうか?
人手が足りなくて、放置をしているのかもしれないですね。
それとも作り過ぎてしまったのでしょうか?
領民はどうしているのでしょう?
まだ空が白み始めた明け方は、特に冷える。
コートと襟巻きとタイツをはいた厚着をしていても、冷える。
外の騎士団達は、もっと寒いだろう。
クローネの邸に到着したのは、人が動き出す時間だ。寝坊なら起きられない。
国王陛下と私は、一番、後ろに付いた。
先頭のエイドリック王子は、扉を静かに開けた。
鍵はどうやら施錠されていなかったようだ。
そうして、その後から、大勢の騎士が邸の中に入り、邸の住人を、まず確保する。
まだ眠っていたようで、素早い制圧だった。
邸の中は、殺風景だった。
家具も少なく、人の気配はない。
女性が一人、男性が二人いた。
三人は一階のリビングに強制的に連れてこられて、縄で縛られている。
メイドやシェフの姿もない。
ここは侯爵家だと思ったが、あまりにも人がいなさすぎる。
「名を名乗れ」とエイドリック王子は命令した。
「クローネの妻、エミュと申します。子はおりません。この者達はクローネの双子の弟、クローニとクローニの愛妾ビオニスです」
クローネの奥様は、美しい夫人だった。年齢はおそらく30代だと思う。
エミュさんは、家族を紹介をした。
愛妾という聞き慣れない言葉が出たが、クローニとビオニスは同性愛者なのだろう。
クローニは髪が白銀で、瞳は薄いブラウンだが、ビオニスは完璧なブルーリングス王国の色を持っていた。髪は男性なのに長い。その長い髪を結んではいない。小柄な身体なので、よく見なければ女性に見える。年齢は不詳だ。
「使用人はいないのか?」
「クローネと共に処罰されて、この家の者は私達だけです」
「畑に生えているのは、大麻草だと思うが、これをどうするつもりだ?」
「クローネの部下が刈りに来て、少しずつ売りに行っていたようです。こんな草にどんな価値があるのか?結婚する前からクローネは、畑に草を植えていたね。食費は、毎月、クローネから送られてきたから、困ってはいなかった。私は表面上、妻となっているが、クローニの世話をするための家政婦ですよ。元々、貴族でもありませんし、閨を供にしたこともありません」
「それでは、草を刈りに来ていた者に会いたいが、名前は分かりますか?」
「何も知りません。クローネが死んだなら、金はもらえなくなるのか?クローニの世話もしなくていいのでしょうか?」
エミュさんは、眉間に皺を寄せて、これから自分はどうしたらいいのか分からないようだった。
「エミュ、出て行くなよ。ご飯はエミュが作ってくれると兄ちゃんが言っていたぞ」とクローニが口をとがらす。
身体は大人のようだが、口調は子供のようだった。
「父上、如何なさいますか?」
「エミュ殿、今言った事に間違いはないか?」
「ありません。クローネが死んだのなら、金は送られてこない。それなら、私はここから出て行きたい」
「縄を解いてもよかろう」と国王陛下は、おっしゃった。
「領民はどうした?」
「私は何もしてないね。だから知らない」
「外の草は、有害な草であるから、燃やしてもいいだろうか?」
「私はいりませんので、どうぞ燃やしてください。持ち主のクローネもいなくなったなら、文句を言う者もいないでしょう」
「では、有害な草は、騎士の手で処分する。エミュ殿が出て行かれたら、クローニは二人で生活できるだろうか?」
「クローニは、見て分かるように、知恵が遅れている。クローニの世話を見るために、ビオニスを連れてきたと聞いた。私がこの邸に来たときからいたので、詳しいことは知らない」
どうやら、エミュさんは嘘をついている感じはしない。
「では、クローニとビオニスは、教会で見てもらおう。エミュ殿は、いつ出て行く?出て行くときに、保護に来よう」
「それなら明日、この邸から出て行くよ。二人のことは、国が世話を見てくれるなら、助かる」
「了承した。エミュ殿は明日出て行くといい。昼頃、二人を保護に来る」
「それなら、私も昼頃までいるよ」
「すまないね」と国王陛下がエミュさんに言った。
「エイドリック、今日は戻ろう」
「了解しました」
騎士達は邸から出て行った。
どうやら、大きな問題はなさそうだ。
結局、クローネに妻はいなかった。
翌日は、私は留守番していた。
一日で旅支度をしたエミュさんは、中央都市で仕事と住処を探すと言っていた。
クローニとビオニスの着替えや持ち物も纏めておいてくれたので、それを馬車に載せて、教会が運営している修道院に連れて行ったと聞いた。
そこは、病気などで自立できない者を保護する施設です。
貴族の寄付で運営されています。
今までのように自由ではないかもしれませんが、食事も出ます。
男性と女性に別れて、できる作業や簡単な仕事をさせているようです。
枯れた大麻草は、騎士が、畑の周りの雑草を刈って、飛び火がないように気をつけて、燃やしたそうです。
クローネは侯爵家の嫡男でしたが、領民から税金も取ってなかったようで、よい領主様だと、言われていたようです。
補填していたお金は、麻薬や人身売買などから手に入れたお金だったので、決してよい領主ではないが、領民からは好かれていたようでした。
これで中央都市の麻薬事件は、落ち着きを取り戻したようです。
私はあっという間に9ヶ月になりました。
お腹がはち切れそうに大きくなってきました。
月日が、王女の心を癒やしたのか、ナターシャ王女とエリーゼ王女が、ローズ王女を誘って、王妃様とお茶会を始めました。
今度は私も仲間に入れてもらえるようになりました。
王妃様が私の武勇伝を面白おかしく話すので、頬が熱くなります。
ヴィオレ王女は、エイドリック王子と温室でお茶を飲んだり、庭園を散歩したりできるようになってきたそうです。
心に受けた傷は消えないけれど、少しずつ時間が癒やしてくれます。
少しずつ、自分を受け入れて、考え、解決策を探っていくのです。
エイドリック王子の猛烈なプロポーズも助けになったと思います。
そんな時、辺境区から手紙が届きました。
国王陛下は馬車に、私と一緒に乗っています。エイドリック王子は、馬にて移動しますので、騎士の中に紛れています。
私には剣がありませんので、王宮の掃除道具入れから箒を一本持ってきました。
その行為が面白いようで、国王陛下はずっとケラケラと笑っております。
笑顔が出て嬉しいですが、そんなに楽しいでしょうか?
箒は掃除もできますが、戦うこともできます。
馬車の中から、国王陛下がサインを送ると、騎士達は馬に跨がり、エイドリック王子が先頭を走り出した。
いざ出陣ですわ!
今日はクローネの住んでいた邸を隅から隅までしっかり見てきます。
双子の弟はどんな男か気になる。
奥様はどんな奥様でしょう?
8年も放置されていても怒らない奥様が、気になります。
大麻が群がる畑の中にある道を通って行きます。
花の時期も収穫の時期も終えている大麻草から、麻薬を作っているのでしょうか?
人手が足りなくて、放置をしているのかもしれないですね。
それとも作り過ぎてしまったのでしょうか?
領民はどうしているのでしょう?
まだ空が白み始めた明け方は、特に冷える。
コートと襟巻きとタイツをはいた厚着をしていても、冷える。
外の騎士団達は、もっと寒いだろう。
クローネの邸に到着したのは、人が動き出す時間だ。寝坊なら起きられない。
国王陛下と私は、一番、後ろに付いた。
先頭のエイドリック王子は、扉を静かに開けた。
鍵はどうやら施錠されていなかったようだ。
そうして、その後から、大勢の騎士が邸の中に入り、邸の住人を、まず確保する。
まだ眠っていたようで、素早い制圧だった。
邸の中は、殺風景だった。
家具も少なく、人の気配はない。
女性が一人、男性が二人いた。
三人は一階のリビングに強制的に連れてこられて、縄で縛られている。
メイドやシェフの姿もない。
ここは侯爵家だと思ったが、あまりにも人がいなさすぎる。
「名を名乗れ」とエイドリック王子は命令した。
「クローネの妻、エミュと申します。子はおりません。この者達はクローネの双子の弟、クローニとクローニの愛妾ビオニスです」
クローネの奥様は、美しい夫人だった。年齢はおそらく30代だと思う。
エミュさんは、家族を紹介をした。
愛妾という聞き慣れない言葉が出たが、クローニとビオニスは同性愛者なのだろう。
クローニは髪が白銀で、瞳は薄いブラウンだが、ビオニスは完璧なブルーリングス王国の色を持っていた。髪は男性なのに長い。その長い髪を結んではいない。小柄な身体なので、よく見なければ女性に見える。年齢は不詳だ。
「使用人はいないのか?」
「クローネと共に処罰されて、この家の者は私達だけです」
「畑に生えているのは、大麻草だと思うが、これをどうするつもりだ?」
「クローネの部下が刈りに来て、少しずつ売りに行っていたようです。こんな草にどんな価値があるのか?結婚する前からクローネは、畑に草を植えていたね。食費は、毎月、クローネから送られてきたから、困ってはいなかった。私は表面上、妻となっているが、クローニの世話をするための家政婦ですよ。元々、貴族でもありませんし、閨を供にしたこともありません」
「それでは、草を刈りに来ていた者に会いたいが、名前は分かりますか?」
「何も知りません。クローネが死んだなら、金はもらえなくなるのか?クローニの世話もしなくていいのでしょうか?」
エミュさんは、眉間に皺を寄せて、これから自分はどうしたらいいのか分からないようだった。
「エミュ、出て行くなよ。ご飯はエミュが作ってくれると兄ちゃんが言っていたぞ」とクローニが口をとがらす。
身体は大人のようだが、口調は子供のようだった。
「父上、如何なさいますか?」
「エミュ殿、今言った事に間違いはないか?」
「ありません。クローネが死んだのなら、金は送られてこない。それなら、私はここから出て行きたい」
「縄を解いてもよかろう」と国王陛下は、おっしゃった。
「領民はどうした?」
「私は何もしてないね。だから知らない」
「外の草は、有害な草であるから、燃やしてもいいだろうか?」
「私はいりませんので、どうぞ燃やしてください。持ち主のクローネもいなくなったなら、文句を言う者もいないでしょう」
「では、有害な草は、騎士の手で処分する。エミュ殿が出て行かれたら、クローニは二人で生活できるだろうか?」
「クローニは、見て分かるように、知恵が遅れている。クローニの世話を見るために、ビオニスを連れてきたと聞いた。私がこの邸に来たときからいたので、詳しいことは知らない」
どうやら、エミュさんは嘘をついている感じはしない。
「では、クローニとビオニスは、教会で見てもらおう。エミュ殿は、いつ出て行く?出て行くときに、保護に来よう」
「それなら明日、この邸から出て行くよ。二人のことは、国が世話を見てくれるなら、助かる」
「了承した。エミュ殿は明日出て行くといい。昼頃、二人を保護に来る」
「それなら、私も昼頃までいるよ」
「すまないね」と国王陛下がエミュさんに言った。
「エイドリック、今日は戻ろう」
「了解しました」
騎士達は邸から出て行った。
どうやら、大きな問題はなさそうだ。
結局、クローネに妻はいなかった。
翌日は、私は留守番していた。
一日で旅支度をしたエミュさんは、中央都市で仕事と住処を探すと言っていた。
クローニとビオニスの着替えや持ち物も纏めておいてくれたので、それを馬車に載せて、教会が運営している修道院に連れて行ったと聞いた。
そこは、病気などで自立できない者を保護する施設です。
貴族の寄付で運営されています。
今までのように自由ではないかもしれませんが、食事も出ます。
男性と女性に別れて、できる作業や簡単な仕事をさせているようです。
枯れた大麻草は、騎士が、畑の周りの雑草を刈って、飛び火がないように気をつけて、燃やしたそうです。
クローネは侯爵家の嫡男でしたが、領民から税金も取ってなかったようで、よい領主様だと、言われていたようです。
補填していたお金は、麻薬や人身売買などから手に入れたお金だったので、決してよい領主ではないが、領民からは好かれていたようでした。
これで中央都市の麻薬事件は、落ち着きを取り戻したようです。
私はあっという間に9ヶ月になりました。
お腹がはち切れそうに大きくなってきました。
月日が、王女の心を癒やしたのか、ナターシャ王女とエリーゼ王女が、ローズ王女を誘って、王妃様とお茶会を始めました。
今度は私も仲間に入れてもらえるようになりました。
王妃様が私の武勇伝を面白おかしく話すので、頬が熱くなります。
ヴィオレ王女は、エイドリック王子と温室でお茶を飲んだり、庭園を散歩したりできるようになってきたそうです。
心に受けた傷は消えないけれど、少しずつ時間が癒やしてくれます。
少しずつ、自分を受け入れて、考え、解決策を探っていくのです。
エイドリック王子の猛烈なプロポーズも助けになったと思います。
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