【完結】もう我慢できません、貴方とは離縁いたします。その夫は、貴方に差し上げます。その代わり二度と私に関わらないでちょうだい。

綾月百花   

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第4章

82 チョコレート

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 サンシャインが起こした一連の事件のあらましは、辺境区にいるレインに届けられる。

 私の手紙も一緒に届けてくれると言うので、写真館に行き、今の私の写真を撮ってもらった。

 その写真の後ろに『愛している』と書いた。


『妊娠8ヶ月になりました。赤ちゃんも正常に大きくなっています。
 お腹が大きくなってきて、足下が見えづらくなってきました。
 レインに手を引かれたいです』と手紙を書いた。



 写真入りの手紙を国王陛下に預けると、騎士が辺境区へと向かって行った。

 三週間の馬車の旅で到着する辺境区は、中央都市から馬で7日ほどで到着するそうです。

 心配なのでレインの側に行きたいけれど、旅の途中で何かあれば、赤ちゃんを亡くしてしまうので、私は子を産むまで中央都市に滞在することになりました。

 一連の事件で動きすぎて、安静を言い渡されてしまったので、仕方がありません。

 でも、赤ちゃんに異常があるわけではありません。

 放っておいたら、直ぐにどこかに出かけてしまう私に、安静と言えば、おとなしくしているだろうと医師達が相談をしている所を偶然耳にして、私は知っております。

 妊娠8ヶ月になったので、実際、おとなしくしていた方がいいのは知っています。

 妊娠後期ですので、できるだけ赤ちゃんをお腹の中で育てなければなりません。

 うっかり転んでしまわないように、気をつけております。

 国王陛下は、今回の事件のお礼と謝罪もあるので、王宮でゆっくり過ごして欲しいと頭を下げられた。それなのでお兄様の邸から王宮に引っ越しをしました。

 医師も近くにいるので、安心だからと王妃様に説得されてしまいました。

 王妃様は、あの事件からご自身でゴードン王子に母乳を与えているそうです。

 私のマッサージが素晴らしかったと、国王陛下におっしゃって、私をこの王宮でもてなしたいとおっしゃったのです。 

 お兄様に預けた薬包が何か病院の研究所から連絡が来た。思った通り、麻薬でした。

 麻薬は薬物依存があり、飲み続けると精神が犯される。

 病気で末期の患者に麻薬を与えて、治療することもあるから、全てが悪いわけではないが、医師が処方する麻薬以外は有害だ。

 国王陛下とエイドリック王子は、麻薬の根絶をすると決められ、酒場を調査しています。

 一番頭のサンシャインがもう死んだので、これ以上酷いことは起きないと思いたいが、悪い事を考える者は、次から次に現れる。

 騎士達は一軒ずつ店を調べていく。

 まだビアに麻薬を入れて飲む客がいるようで、麻薬を飲む人も捕らえ、病院に強制的に送って治療をさせる。

 麻薬が見付かった店は、店自体を閉店させている。店主は逮捕して、関わった店員も聞き取り調査を行われる。

 あれほど、首が落とされたのに、未だに麻薬を扱う業者はあるらしい。

 どこから仕入れているかと尋問するが、店に届けられると答えるらしい。

 初めて麻薬を手に入れた時は、クローネが持ってきたと言っていたという。

 私は辺境区に付いたときにクローネのことを紹介されたときのことを思い出す。

 クローネは確か結婚して8年も中央都市に戻っていないと言っていた。

 麻薬は少なくとも8年前から中央都市を汚染させていたのです。

 クローネが処刑され、奥様はどうしているだろうかと気になった。

 エイドリック王子は寝込まれているヴィオレ王女のお側にいらっしゃるので、国王陛下の元に出かけました。


「ニナ妃、どうかしたのか?」


 国王陛下の執務室を覗こうかと思ったら、背後から声を掛けられた。


「国王陛下、ごきげんよう」


 私はお辞儀をした。


「安静にしていなさいと医師に言われたであろう」

「ええ、でも、ちょっと気になったことがありましたので、お邪魔しても宜しいでしょうか」

「ああ、いいよ」


 国王陛下は執務室に入り、ソファーに座った。国王陛下は、手で、ソファーにどうぞと現している。


「お邪魔いたします」


 私はソファーに座って、私が気になっているクローネの奥様と邸の話をした。


「すぐ調べさせよう」

「私も一緒に行っても宜しいでしょうか?」

「行きたいのか?」

「はい」

「王宮はそんなに退屈か?」

「はい、適度な運動は必要ですので」


 国王陛下は、声を上げて笑った。


「では、私も一緒に出かけよう」

「国王陛下は、暇なのですか?」

「適度な息抜きは必要なのでな」と切り替えられた。


 まるで遊びに行きたいよと駄々を捏ねているようで、ちょっと恥ずかしくなった。


「まず、何処に邸があるのか調べさせる。暫く待っていてくれ。明日か明後日には行けるようにする」

「ありがとうございます」


 思わず満面の笑みになる私に、国王陛下は「それまでは休んでいなさい」とチョコレートの箱を手渡した。

 久しぶりの甘味に、益々笑顔になる。


「部屋でゆっくり茶を飲んできなさい」

「はい、お邪魔しました」


 私は立ち上がると、お辞儀をして部屋を出た。


 チョコレート、チョコレート♡

 部屋に戻ったら、お茶を淹れよう。
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