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第4章

75 エミリの両親

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 お兄様は学校を訪ね、エミリという生徒のことを探しに行ってくれた。

 6年前の話ですが、学校には名簿が残されていますので、エミリという生徒の名前も家柄もすぐに判明いたしました。

 エミリ・カルサート伯爵家の長女だと直ぐに分かったそうですが、カルサート伯爵の邸を訪ねると、邸には当主様も奥方様も留守にしておいででした。

 執事がおりましたので、当主様、奥方様の行方を尋ねると、執事は困ったお顔をされ、口を噤むが、お兄様が再度、お願いすると、覚悟を決めたようなお顔をされた執事は、お話してくださいました。

 エミリ様が亡くなられて一年ほど後から、競売に通うようになり、子供を買ってくるようになられたそうです。

 女の子を買い、可愛らしく着飾りますが、一年ほどで、孤児院に預けてしまわれることが続いておりましたと、言いづらそうに教えてくれました。


「当主も奥方様も、亡くなられたエミリお嬢様を捜し求めているようでした。幾ら子供を買ってきても、どの子もエミリお嬢様ではありませんので仕方がありません」と小さく呟かれたそうです。


 当主も奥方様も今回の一斉取り締まりで、捕らえられたそうです。

 なんだかとても切ないお話です。

 亡くなった子の代わりは、何処にもいません。

 エミリさんの代わりに、違う子として養女をもらうのは罪にはなりませんが、競売で買うのは、どうでしょうか?

 お兄様はエイドリック王子と話をして、エミリさんの両親に会わせてもらったけれど、二人とも目を伏せ、言葉もなく、屍のように見えたので、リリーのことを話す事はできなかったと言いました。

 両親は代わりを探し続け、リリーは犯人を捜し続けていたのです。

 どちらも不幸で、私はお兄様に、リリーの無実を話して欲しいと言えませんでした。

 エミリさんの両親は、誰かの責任にしなければ、気が狂ってしまいそうで、子供を買い続けたのでしょう。

 でも、買われて捨てられた子の責任を取らなければなりません。

 おそらく5人前後になるでしょうか?

 はたして、ご両親にその経済力が残るのか?

 きっと、残らないでしょう。

 自分達が生きて行くことで精一杯だと思います。

 エイドリック王子の話では、爵位を持った者は一律に、爵位を剥奪されるそうです。

 一応、エイドリック王子に、エミリの話をしたそうですが、国王陛下は、今回の盗賊、誘拐、競売、博打については、根絶を目指しておいでで、厳しい罰を与えると、会議でも話されているとか。

 おそらく例外はないであろうと言っていた。

 エミリの両親は、子を殺された被害者であるけれど、競売に通い続け、女の子を買い続けていた無責任な養育の放棄であろうと、エイドリック王子は言っていた。

 お兄様は、おそらく減刑をお願いしに行ったのだと思うけれど、話を聞いてそれもできなくなった。

 国王陛下の考えはおそらく曲げられないだろう。

 当然だが、アイドリース伯爵から、エミリの両親に援助はしない。

 リリーが苦しめられたことを話さない代わりに、リリーが苦しんだ分を苦しめばいいとお兄様は言った。

 そうして、エミリの両親は国外に出て行かず、毒を飲み二人とも並んで死んでいる姿を、邸の者に発見された。

 エイドリック王子は、邸を壊し平地にした。金になる物は全て売り、勤めていた者に、その月の給料と退職金を払い、残ったお金を預けられた賭博で落札した女の子達の資産にした。

 まだ幼い子供なので、資産は王家が預かり、時が来たらわたすように銀行に預けた。

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