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第3章
70 葬儀
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「ニナは、ここにいるのか?」とお兄様に聞いているのは、私の夫です。
お兄様はレインを邸に入れた。
「お久しぶりです」と私はお辞儀をした。
私に着る物がなくても、リリーの洋服があるので、着替えに困ったことはない。
「家出か、何も言わずに、何処をほっつき歩いているんだ?」
「今日はリリーを埋葬するのです。静かにお別れさせてください」
リリーが死んだ事を、どうやら忘れていたようです。
「リリーを嫌っていたではないか?」
「私はリリーに助けてもらっていたことに気づいて、リリーともお兄様とも和解をしておりました。一緒にいたのに、忘れてしまったのですね」
「そう、言われれば、そんなこともあったな」
「とにかく、今日はリリーを埋葬してあげたいので、私はもどりません」
「それなら、俺も一緒にいよう。着替えてくる」と言って、宮殿に戻って行かれました。
本当は隣にいなくても、いいのですけれど。
私はリリーと一緒に埋葬してあげたい物を作っています。
シェフもリリーの好物だった、ケーキを作っています。お弁当も入れてあげたいので、サンドイッチもシェフと作っております。
サーシャとレアルタが興味深そうに見ているので、二人に一欠片ずつ渡しました。
「食べてもいいの?」とレアルタが聞いています。
「どうぞ、これはリリーの好物だったのよ」
パクリと食べて「美味しい」と言っている。
「僕も好物になったよ」
「今度はレアルタのために作ってあげますね」
「ありがとうございます。ニナお姉様」
サーシャは少しずつ食べています。
「もう、食べることができないのですね」と言って、涙を流しています。
「そうよ」と言ったら、涙を拭いながら、食べています。
今日は両親が戻ってきます。
来なくてもいいと伝えておいたそうですが、行きますと返事が来たという。
「また罵詈雑言を言ったら、その時点で追い返すとお兄様が言っていたので、私は落ち着いていられるのです。
リリーの黒い喪服は、辺境区に私の生死を確かめるために着てきた物です。あの時の骨壺は、机に置かれていて、キャンディーが入れられていました。
ねえ、リリー、どうして一人でこんな危険なことをしていたの?
リリーは刑務官ではなかったわよね?
騎士団にも入ってなかったのよ?
私はリリーの机に座って、一緒に持って行ける物を探している。
正義の味方は死なないはずなのに、どうして死んでしまったの?
机の上に、写真立てがありました。
笑顔のリリーの隣には、笑顔の女の子がいました。
学校の制服を着ている。入学したてのようです。
制服の胸に入学を祝う赤い花が飾られています。
クラスメイトかしら?
リリーが死んでしまったことを教えてあげた方がいいかしら?
私は写真立てを手に取りました。
その写真立ては、ずいぶん分厚くて、私は留め金を緩めて、中に隠している物を出しました。
「これは」
私は目を疑いました。
リリーの手紙が入っていました。
読んでいくと、リリーの秘密が書かれていました。
リリーと友達、エミリさんは盗賊に捕まり、レイプされたそうです。
地図が書かれています。中央通りより奥まった商業地区ではなく、工業地区の一つに○が書かれています。
絶対に許さないと、何度も書かれています。
入学式の真新しい制服は破かれ、エミリさんは、ショックで自殺をしてしまったそうです。
襲われたのはリリーも同じでしたけれど、エミリさんの葬式に行くと、エミリさんの両親は、リリーと友達だったから、事件に遭い、エミリさんが死んだと言われ、最後のお別れもできなかったと、悲しみに暮れた文字が書かれていました。
エミリの代わりに生きて、エミリの敵を取ると書かれていました。
そんな昔から、調査をしていたなんて知りませんでした。
手紙には、幾つも悔しい、苦しい、寂しい、悲しいと言った文字が書かれていました。
リリーが悪いわけでもないのに、責め立てられて、責任を取れと言われて辛かったと、書いてあった。
リリーが入学式の日のことを思い出す。
確かに制服が破れていた。
でも、リリーは笑っていた。
辛いことを笑みに替えて、戦おうと決心した日であったに違いない。
私はそんなリリーの笑みを見て、嫉妬をしていた。情けない姉だ。
リリーごめんね。
「どうだ?」とお兄様が部屋に入ってきました。
「お兄様、リリーの手紙です」と、私はお兄様に見せてしまったけれど、見せてよかったのでしょうか?
私は引き出しの中も見ていきます。
クレーンゲームのオモチャのような物が出てきました。エミリさんと写した写真もありました。
この引き出しの中は、リリーとエミリさんの聖地のようです。
リリーはずっと幼い頃から戦士だったのです。
私はお兄様と相談して、リリーとエミリさんの聖地をそのままにしました。
まだ、リリーの敵討ちは終わっていません。
敵を取ってから、エミリさんの両親に会って、リリーに謝罪してもらいます。
お昼頃、レインが来て、その直後に両親がやって来ました。
「どうして、リリーが死んでしまったの?」とお母様が泣いておられる。
お兄様が、リリーの事件のあらましを両親に話しています。
「盗賊を何故、捕まえないのだ」と両親はレインに詰め寄る。
レインは「すみません」と謝罪をしていた。
レインは、来たことを後悔しているように見えた。
でも、レインは指導者でしょう?国民の悲しみを見るべきだわ。
リリーを棺に入れて、お花で飾って、お弁当やお菓子を入れてあげる。
骨壺に入っていたキャンディーも全部食べてね。
両親は、今日は騒いだりしなかった。
教会で牧師が、リリーに語っているけれど、リリーのことだから、欠伸をしているかもしれないわね。
でも、リリーが死んで、悲しんでいる人は多くいるのよ。
リリーから勝手にバトンを受け継ぐわ。
弱虫の私に何処までできるか分からないけれど、犯人を捕まえるわ。
墓守が、リリーの棺を埋めていく。
リリーの葬儀が終わったら、お兄様は両親に帰ってくれと、邸に入れることもせずに追い返した。
「ニナ、そろそろ戻って来い」
「まだすることがあるの。でも、ちょっとだけ話をしましょう」
私はレインをリリーの部屋に上げた。
「私、変装をして、リリーを殺した盗賊と会うことができたの。頭は誰だと思う?」
「そんな危険な事を」
「危険な事をしないと捕まえられないのよ。昨日は13才の女の子が売られるところを見たわ。競売って、人権はないわ」
私の隣にお兄様が座った。
「昨日は俺も見てきた。レイン、頭はクローネだ。二番頭はハルマだ。ひょっとしたら、ビストリも頭になっているかもしれない」
「そんな?」
「俺は妹を殺されたのだ。妹は学校に入った日に、おそらくハルマ達にレイプを受けた」とお兄様は、リリーの手紙を見せた。
レインはその手紙を読んでいる。
レインは近衛騎士の一人を呼んだ。
「エイドリックを連れてきてくれ」と言った。
「リリーとハルマは顔見知りだったのだな?」
「おそらく」
「中央都市に戻る途中に、俺達と別れたのは、リリーが脅迫した可能性がある。リリーは妊娠していた。6ヶ月になる男の子だった。白銀にブルーアイを持っていた。相手は、ブルーリングス王国の血筋の可能性が高い」
「相手は誰だ?」
「おそらくクローネの可能性が高い」
「リリーは身体を売っても、敵を取りたいと思っていたのよ。私は見た目だけで、不潔な女だと思っていた事を恥じているの。敵陣に入らなくては、得られない情報があるんだわ。私は、ほんの少し、敵陣に入っただけで、とても苦しいのに、リリーは13才から重い荷物を一人で背負ってきたのよ」
その後、直ぐにエイドリック王子がやって来た。
そうして、私が見てきた物の全てを話した。
…………………………*…………………………
読んでいただき感謝します。
運営さんのお陰で、続きを書くことができました。
ありがとうございます。
続きも楽しんで頂けますように。
カクヨムさんもありがとうございます。
https://kakuyomu.jp/works/16817330668946663122
お兄様はレインを邸に入れた。
「お久しぶりです」と私はお辞儀をした。
私に着る物がなくても、リリーの洋服があるので、着替えに困ったことはない。
「家出か、何も言わずに、何処をほっつき歩いているんだ?」
「今日はリリーを埋葬するのです。静かにお別れさせてください」
リリーが死んだ事を、どうやら忘れていたようです。
「リリーを嫌っていたではないか?」
「私はリリーに助けてもらっていたことに気づいて、リリーともお兄様とも和解をしておりました。一緒にいたのに、忘れてしまったのですね」
「そう、言われれば、そんなこともあったな」
「とにかく、今日はリリーを埋葬してあげたいので、私はもどりません」
「それなら、俺も一緒にいよう。着替えてくる」と言って、宮殿に戻って行かれました。
本当は隣にいなくても、いいのですけれど。
私はリリーと一緒に埋葬してあげたい物を作っています。
シェフもリリーの好物だった、ケーキを作っています。お弁当も入れてあげたいので、サンドイッチもシェフと作っております。
サーシャとレアルタが興味深そうに見ているので、二人に一欠片ずつ渡しました。
「食べてもいいの?」とレアルタが聞いています。
「どうぞ、これはリリーの好物だったのよ」
パクリと食べて「美味しい」と言っている。
「僕も好物になったよ」
「今度はレアルタのために作ってあげますね」
「ありがとうございます。ニナお姉様」
サーシャは少しずつ食べています。
「もう、食べることができないのですね」と言って、涙を流しています。
「そうよ」と言ったら、涙を拭いながら、食べています。
今日は両親が戻ってきます。
来なくてもいいと伝えておいたそうですが、行きますと返事が来たという。
「また罵詈雑言を言ったら、その時点で追い返すとお兄様が言っていたので、私は落ち着いていられるのです。
リリーの黒い喪服は、辺境区に私の生死を確かめるために着てきた物です。あの時の骨壺は、机に置かれていて、キャンディーが入れられていました。
ねえ、リリー、どうして一人でこんな危険なことをしていたの?
リリーは刑務官ではなかったわよね?
騎士団にも入ってなかったのよ?
私はリリーの机に座って、一緒に持って行ける物を探している。
正義の味方は死なないはずなのに、どうして死んでしまったの?
机の上に、写真立てがありました。
笑顔のリリーの隣には、笑顔の女の子がいました。
学校の制服を着ている。入学したてのようです。
制服の胸に入学を祝う赤い花が飾られています。
クラスメイトかしら?
リリーが死んでしまったことを教えてあげた方がいいかしら?
私は写真立てを手に取りました。
その写真立ては、ずいぶん分厚くて、私は留め金を緩めて、中に隠している物を出しました。
「これは」
私は目を疑いました。
リリーの手紙が入っていました。
読んでいくと、リリーの秘密が書かれていました。
リリーと友達、エミリさんは盗賊に捕まり、レイプされたそうです。
地図が書かれています。中央通りより奥まった商業地区ではなく、工業地区の一つに○が書かれています。
絶対に許さないと、何度も書かれています。
入学式の真新しい制服は破かれ、エミリさんは、ショックで自殺をしてしまったそうです。
襲われたのはリリーも同じでしたけれど、エミリさんの葬式に行くと、エミリさんの両親は、リリーと友達だったから、事件に遭い、エミリさんが死んだと言われ、最後のお別れもできなかったと、悲しみに暮れた文字が書かれていました。
エミリの代わりに生きて、エミリの敵を取ると書かれていました。
そんな昔から、調査をしていたなんて知りませんでした。
手紙には、幾つも悔しい、苦しい、寂しい、悲しいと言った文字が書かれていました。
リリーが悪いわけでもないのに、責め立てられて、責任を取れと言われて辛かったと、書いてあった。
リリーが入学式の日のことを思い出す。
確かに制服が破れていた。
でも、リリーは笑っていた。
辛いことを笑みに替えて、戦おうと決心した日であったに違いない。
私はそんなリリーの笑みを見て、嫉妬をしていた。情けない姉だ。
リリーごめんね。
「どうだ?」とお兄様が部屋に入ってきました。
「お兄様、リリーの手紙です」と、私はお兄様に見せてしまったけれど、見せてよかったのでしょうか?
私は引き出しの中も見ていきます。
クレーンゲームのオモチャのような物が出てきました。エミリさんと写した写真もありました。
この引き出しの中は、リリーとエミリさんの聖地のようです。
リリーはずっと幼い頃から戦士だったのです。
私はお兄様と相談して、リリーとエミリさんの聖地をそのままにしました。
まだ、リリーの敵討ちは終わっていません。
敵を取ってから、エミリさんの両親に会って、リリーに謝罪してもらいます。
お昼頃、レインが来て、その直後に両親がやって来ました。
「どうして、リリーが死んでしまったの?」とお母様が泣いておられる。
お兄様が、リリーの事件のあらましを両親に話しています。
「盗賊を何故、捕まえないのだ」と両親はレインに詰め寄る。
レインは「すみません」と謝罪をしていた。
レインは、来たことを後悔しているように見えた。
でも、レインは指導者でしょう?国民の悲しみを見るべきだわ。
リリーを棺に入れて、お花で飾って、お弁当やお菓子を入れてあげる。
骨壺に入っていたキャンディーも全部食べてね。
両親は、今日は騒いだりしなかった。
教会で牧師が、リリーに語っているけれど、リリーのことだから、欠伸をしているかもしれないわね。
でも、リリーが死んで、悲しんでいる人は多くいるのよ。
リリーから勝手にバトンを受け継ぐわ。
弱虫の私に何処までできるか分からないけれど、犯人を捕まえるわ。
墓守が、リリーの棺を埋めていく。
リリーの葬儀が終わったら、お兄様は両親に帰ってくれと、邸に入れることもせずに追い返した。
「ニナ、そろそろ戻って来い」
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私はレインをリリーの部屋に上げた。
「私、変装をして、リリーを殺した盗賊と会うことができたの。頭は誰だと思う?」
「そんな危険な事を」
「危険な事をしないと捕まえられないのよ。昨日は13才の女の子が売られるところを見たわ。競売って、人権はないわ」
私の隣にお兄様が座った。
「昨日は俺も見てきた。レイン、頭はクローネだ。二番頭はハルマだ。ひょっとしたら、ビストリも頭になっているかもしれない」
「そんな?」
「俺は妹を殺されたのだ。妹は学校に入った日に、おそらくハルマ達にレイプを受けた」とお兄様は、リリーの手紙を見せた。
レインはその手紙を読んでいる。
レインは近衛騎士の一人を呼んだ。
「エイドリックを連れてきてくれ」と言った。
「リリーとハルマは顔見知りだったのだな?」
「おそらく」
「中央都市に戻る途中に、俺達と別れたのは、リリーが脅迫した可能性がある。リリーは妊娠していた。6ヶ月になる男の子だった。白銀にブルーアイを持っていた。相手は、ブルーリングス王国の血筋の可能性が高い」
「相手は誰だ?」
「おそらくクローネの可能性が高い」
「リリーは身体を売っても、敵を取りたいと思っていたのよ。私は見た目だけで、不潔な女だと思っていた事を恥じているの。敵陣に入らなくては、得られない情報があるんだわ。私は、ほんの少し、敵陣に入っただけで、とても苦しいのに、リリーは13才から重い荷物を一人で背負ってきたのよ」
その後、直ぐにエイドリック王子がやって来た。
そうして、私が見てきた物の全てを話した。
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