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第3章

69 賭博場

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「まあ、凄い人だわ」

「こら、静かにしろ」

「はーい」


 私は破廉恥なドレスを着て、髪を二つ結びにしてお団子を二つ頭の上に載せています。

 朝、遅めに起きた私をサーシャとレアルタが見ていました。


「おはようございます」と、サーシャとレアルタが言った。

「おはようございます」と起きたばかりの私が返事をした。

 二人の子供は、会うたびにお行儀がよくなっております。

「お姉様、リリーお姉様と一緒に眠ったのですか?」

「そうよ。リリーは私の大切な妹でしたのよ。死んでしまって、とっても悲しいのです」

 すると、サーシャは私を抱きしめてくれた。


「私がリリーお姉様の代わりになりますわ」と、優しいことを言ってくれました。

「ありがとう、サーシャ」


 私がサーシャを抱きしめていると、レアルタも私に抱きついてきた。

「僕も」と言ってくれたのです。

 私は実家が嫌いでしたけれど、今の実家は大好きです。

 お兄様も優しくて、リリーも優しくなったのに。どうして、ここにリリーがいないのでしょう。

 子供達を抱きしめたまま泣いていると、お兄様が濡れた布巾を持ってきてくださいました。

「お兄様、ありがとうございます。サーシャ、レアルタもありがとうね」

「食事を食べて、お風呂に入るか?」

「お借りします」


 私はゆっくりお風呂に入った。

 水風呂だ。

 今日は暑い。

 リリーを埋葬してあげないと、リリーが腐ってしまう。

 夏の葬儀は、ゆっくりお別れもできない。


 リリーの子を見せてもらった。

 白い髪に、ブルーアイを持っていた。

 相手はブルーリングス王国の血筋を持つ者です。


 レインに話そうかと思いましたが、王宮に戻ると、外に出してもらえなくなります。

 なので、今日という大切な日の任務を全うします。


 髪洗いの専属のメイドに髪を洗ってもらって、無邪気な子供の様に髪を結ってもらいました。

 私はリリと言う子を演じています。

 お兄様は、護衛を連れて、見学に来るそうです。

 危険なので止めたのですが、リリーを殺した相手を見たいと言っておりました。

 サーシャとレアルタは、お兄様の言葉を守るので、護衛を付けて邸におります。


「これより競売を始めます。最初の商品は、昨日、商品になったばかりの乙女です。年齢は13才です。奴隷にしても、性道具にしてもお好きな使い道でどうぞ。5000フランから開始致します」


 司会者が商品を紹介すると、舞台に電気が点りました。

 舞台の上には、少女が裸で動物が入れられる檻に入れられています。

 少女は「助けて、助けて」と救いを求めていますが、その願いを叶えてくれる方は、多分いないでしょう。


「商品は間違いなく、処女ですので、お値段は高めに付けられております。ドールとして、お側に置いても可愛らしいでしょう」

 少女には人権はないようです。

 ニクス王国で、人身売買が行われていることが、苦しかった。

 国王陛下、ちゃんと助けてあげて、エイドリック王子、貴方が受け継ぐ国は、これほど荒れているのです。見てあげて。レイン、ブルーリングス王国の血筋の者がしているのよ?このまま放置でいいの?


 私は苦しかった。

 気分も悪い。

 少女は老人の貴族が高値で買った。

 アグロス子爵まで売られていた。値段は安かった。

 人身売買が主にされていた。

 その次に、珍しい宝石が出されていた。

 安い宝石も売っていた。

 身ぐるみ剥がされて、全てを金に換えられるのだろう。

 買うのはニクス王国の貴族達だ。

 お兄様は、口出ししなかった。

 ただ見ている。

 私は一人になると、吐いた。

 吐くものがなくなるまで、吐いた。
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