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第2章

60 ゴードン王子

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「見られました?あの品のないドレス」

「キラキラしていましたわ」

「金色にキラキラしているのは、王冠と同じよね?」


 あら?

 もう手遅れですわ。

 王妃様を囲んで、お茶会を開いておりました。

 王妃様は、国王陛下がゴードン王子を抱きながら、サロンに下りてきておりました。


「ドレスをどのようにピカピカにしてきたのでしょう?まさかと思いますけれど、電球でも付けてきたのでしょうか?」

「さすがに、そこまでしていたら、馬鹿だと思うわ」とナターシャ第一王女。

「でも、考えられたわ。目映く見える真っ黄色の生地に、金糸で刺繍をしてあったように見えました」と第二王女のエリーゼ様。

「目が眩しすぎて、痛かったわ」とローズ王女が、手でマスクを作って見せております。

「まあ、どうしてしまったのでしょう?エミリアはおとなしく、王妃教育も難なくこなしてきたというのに」

「前のエミリア様とは別人に見えましたわ」とナターシャ王女が言って、私はレインの顔を見上げた。


 今、私はレインとサロンに来たのですが、先客がいたので、慌てて廊下に出たのです。

 このまま聞かなかったフリをして、お部屋に戻った方がいいような気がします。

 エイドリック王子と待ち合わせをしておりましたが、もう少しギリギリに来た方がいいかしら?


「レイン、ニナ妃、覗いていないで入っておいで」と国王陛下の声が聞こえました。

「では、お邪魔をします」とレインは私の手を繋いで、サロンに入って行った。

「ご家族で寛ぎ中に、申し訳ないと思っておりました」とレインが言葉を選んで、話しております。


 私は国王陛下の腕に抱かれたゴードン王子を見て、胸がキュンとしてしまいました。


「可愛い」

 ブルーアイを開き、私を見ていました。


「愛らしい。綺麗なブルーアイをしています」

 レインもゴードン王子を見て、優しく微笑んでいる。


「早く、我々のところにも子が生まれるといいのですけれど」

「何を言っておる、ゴードンが生まれるまで30年かかった。子は6人だ。レインも真似をして子を作れ」

「謹んでご教授承けたまります」


 ニコッと笑うゴードン王子は、まるで我に従えと言っているような、貫禄があります。


「ニナ妃抱いてみますか?」と王妃様がおっしゃいました。

「いいのですか?」

「勿論よ、さあ、ソファーに座りなさい」

「失礼いたします」


 私とレインがソファーに座ると、国王陛下が子を抱かせてくれた。

 甘いミルクの匂いがする。フワフワに柔らかい身体をしている。


「可愛い、おめめも綺麗ね」

 隣からレインが覗き込んでいる。


「レインも抱いてみるか?」

「是非」

 赤ちゃんが国王陛下の元に戻って行った。

 今度は、レインが抱いている。

 空っぽになった腕の中が寂しい。

 赤ちゃんが欲しい。

 私と同じブルーアイを持った子を抱っこしたい。

 でも、あの子は王妃様の赤ちゃんだから、欲しがったら駄目よと、自分に言い聞かす。

 ゴードン王子は、国王陛下が抱っこして私の隣に座った。

 可愛い、赤ちゃん。いつか私のところにも来て欲しい。


「レイン、エミリアはどんな感じでしたか?」

「自分ばかりを目立たせるために、目映いドレスを身につけ、挨拶もできない。ニナを火傷させても、謝罪もできない。申し訳ないですが、今のエミリアは王妃に相応しく感じません」


 そこまで言うの?

 大丈夫なの?

 私はレインをじっと見た。


「それでは面談しなくてはなりませんね」

「その方が今後、王家が非難を受けることはないと思います」

 レインは王の顔をしていた。

 だから、私は何も言わなかった。

「火傷はどなたがしたのです」

「俺の宝のニナが、太股にお茶をかけられた」

「まあ」の嵐ですわ。

「大事ではなかったですか?」

「軽度と言われましたが、肌が真っ赤になっておりました。医師に治るまで診てもらいます」

「それがいい」と言うと、国王陛下は立ちゴードン王子をベビーベッドに寝かせた。


 いつの間に眠っていた。

 エリーゼ王女とローズ王女が、ベッドにへばりついた。

 二人の王女は、国王陛下に頭を撫でられ、唇の上に人差し指を立てられた。

 静かにの合図だけれど、その光景が優しく感じる。


「これから、着替えて、最初からやり直そうと提案しました。そろそろ王宮に来られるでしょう。応接室に通すように言っておきます」

「サロンなら、もう空くよ。王妃は眠るし、王女達は勉強の時間だ。俺も仕事に戻る」

「そうですか、では我々は、ここで待ちます」

「エイドリックが迷惑をかけてすまない。王妃は最後の最後まで誰になるか分からない」と国王陛下は言った。


 他国からの結婚話もあったので、どちらがこの国の為になるか?

 エイドリック王子は第二夫人を娶るのか?

 子沢山の国王陛下でさえ、第二夫人がいる。

 子は一人だけだが。

 レインは私だけだと言っていたが、王家の子を増やすためには、子はたくさんいた方がいいに決まっている。

 私は第二夫人を娶ると言われたときに、心が壊れてしまいそうで怖い。


「レイン、私、たくさん、子を産むわ」

「どうした、ニナ?」

「私を嫌わないでね」

「部屋に戻るぞ」と国王陛下一行が、サロンから出て行く。


 メイドが、ベビーベッドを押している。

 丁寧に運ばれていく様子に、大切な王子様だと思った。

 二人きりになると、レインは私を抱きしめてくれた。
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